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のの奥様ストーリー【3】

3
頭の中で言い訳が巡る、巡る。こんな歳だし。嫁さんも働いてて疲れてるし。俺も疲れてるし。そりゃ刺激が欲しい。でも一歩、足を踏み出すエネルギーすら……。
 と内心ぼやきつつも、目はしっかりと写真を見ている。なんなら好みっぽいのを見つけた。
 ああ、据え膳を喜ぶ、弱い己を呪う。ついついと指をスマホに伸ばし、第一印象で決めた。
「じゃ、この人で」
「おら、次で降りたら電話しろ。俺が聞いててやる」
「はいはい、わかりましたよ」
 言うまでもないが、これは酔っ払い同士の会話である。
 その夜、俺は足を外へと踏み出し、選んだ奥様――”のの”さんとの予約を無事とれたのだった。

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