見出し画像

のの奥様ストーリー【2】

2:
「そうだよぉ! たまには付き合えよ、な? 好きだろ?」
「嫁さん、うるさいんで」
「俺だって奥さんいるもん。同罪、同罪」
「巻き込まんでくださいよ」
 窓の外で流れる街灯を見ながら、苦笑いする。もう何度もしたやりとりで、今のところは逃げ切っている。
 潔癖というわけでもないが、40を過ぎると色々面倒になるもので、ご無沙汰だとしても予約だけで億劫になるものだ。嫁さんとレスというわけでもない。
「よーしよし、俺はもう今日はだめだが、代わりに予約してやろう」
「いやいや、酔ってるから無理でしょうよ」
「確かにな。よし。自分でやれよ、ほら、この人とかどうだ」
「そういう意味じゃなくて……は? 人妻?」
 差し出されたスマホの画面には、ずらりと並ぶ”奥様”たちの写真。
「最近、嫁さんとじゃ味気ないんすよ~なんて言ってたのは誰だ? いつまで腑抜けてんだ? よその”奥様”はいいぞ、ん?」
「う……」
 過去の発言を拾われ、不覚にも唸る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?