3バックって何?大宮サポが考える今シーズンのシステム論~3-4-3編~

1.はじめに


前回、アルディージャサポーターが長く慣れ親しんだ4-4-2について論じ、そのシステムの特徴として①攻撃は主にサイド②MF-DFラインの8枚でブロックを築く③4-4ブロックからカウンターに転じやすいことを挙げたうえで、4-4-2システムをうまく機能させるための選手やチームの狙いとして①個人で局面を打開できるような2トップ②ドリブル能力やスピード、クロスの精度の高いSBとSH③強固な4−4ブロック④2トップ脇のスペースへの対応の4点があると結論付けました。

今回も前回の記事と同様に、3-4-3というシステムがどのような特徴を持っていて、どのような選手、チームの狙いに適しているかを考えてみたいと思います。
とは言っても、正直私も3-4-3についてはあまり知らないのが現状。説明不足、勘違いが多々あることと思いますので、容赦なくご指摘ください。

2.3-4-3の概要


前回の記事にて「4-4-2はバランスに優れたシステム」と説明しましたが、それに比べて3-4-3はより攻撃に重心を置いたシステムということができるでしょう。その表記を見れば分かる通り、4-4-2のDFライン1枚を減らしてFWラインを1枚増やすのが3-4-3です。当然、前線の枚数を増やせばより攻撃的になります。また、両サイドを担当する選手が1枚になっている代わりに、中央が厚くなっていることも挙げられるでしょう。このことで、攻撃には幅を与え、守備では5バックとなりよりゴール前を厚く守ります。
そして、詳しくは後述しますが3-4-3は可変(同一ラインもしくはライン間でスライドすることによって、4-1-5や5-4-1にシステムを変えること)することが容易であることもその特徴として挙げられます。

【3-4-3システムの特徴】
・4-4-2と比べて攻撃的
・4-4-2と比べて中央が厚い
・可変が容易


3.3-4-3の一般的な攻撃手法


さて、次に3-4-3ではどのような攻撃が展開されるでしょうか。具体的な動きに入る前に1点触れておきたいのですが、攻撃時に共通する動きとして挙げられるのは両WBが幅をとるということです。前回の記事のうち4-4-2の守備手法で「4-4ブロックが縦横コンパクトになればなるほど守備強度が上がる」という主旨の内容がありました。サッカーの攻撃面での原則(システムの如何に関わらず)として「幅と深さをとる」というものがあります。これを言い換えれば、「相手が守備をしなければならないエリアを広げる」ということです。このうち、幅をとるということは、相手の守備ブロックを横に引き伸ばすということになります。4-4-2で幅取り役になるのは主にSBですが、両SBで幅をとろうとすれば、DFラインに残るのはCB2枚です。これに比べて、WBが幅をとってもDFラインにCBが3枚残っているため、攻撃から守備への切り替え時(ネガティブトランジション)の守備がより安定します。この意味で3-4-3は4-4-2より、より守備を安定させつつ幅をとれるシステムだと言えます。

では、具体的にどのような動きからゴールを狙っていくのでしょうか。通常のパターンとしてはサイドで菱形や三角形などを形成してWBとしたボール回しから、サイド裏を狙うのがひとつ。もうひとつが、CFのポストからSTがバイタルエリアやPA内で前向きにボールを受ける動きです。

上記のふたつの図を見てもわかる通り、攻撃の始まり(起点)となるのはCBで、決定的な局面に関わるのはST(シャドー)です。この2つのポジションの選手が、自身が前向き、あるいは他の選手が前向きになれるようなボール供給をできることが大切であるとともに、チーム全体としてはCBとSTがプレーしやすいように縦パスやサイドチェンジを駆使したボール回しをしたり、WBやCFがパスコースを創出するような動きやポジショニングをすることが求められます。

また、より攻撃的な形にシフトするとなれば両WBをFWラインまで上げて3-2-5や4-1-5を形成します。このふたつの可変システムの何が違うかといえば、残されたMF-DFラインの選手配置が異なります。このためビルドアップ(FWラインにボールを運ぶためのDF-MFラインでのボール回し)とネガティブトランジションにおいて違いが生まれます。
ビルドアップでは、3-2-5であれば中央での早いテンポでのボール回しに、4-1-5ではDFラインの幅を生かしたボール回しになるでしょう。前者であればSTに、後者であればWBへのボール供給が容易になります。
ネガティブトランジションでは3-2-5は中央を固めているため、素早いボール奪取が期待できるでしょう。4-1-5では両WBが空けたスペースを埋めることができるのでサイド攻撃を防ぐのに有効です。
両可変システムの使い分けについては、両チームのシステム上の特徴、選手の能力やチームの狙いを比べつつ柔軟に駆使することが求められます。このため、ビルドアップでは4-1-5にしても、ネガティブトランジションでは3-2-5にするということもありうるわけです。

ちなみに先日のプレシーズンマッチの先制点の場面ではSTがWBからのボールを受けに行くことで生まれたスペースをCFが利用してカウンターに転じていました。このような形は自陣だけでなく、敵陣でも有効でしょう。これはあくまでも一例に過ぎないですが、いずれの形で攻撃するにしてもWBやST、CFが攻略したいエリアの認識を共有することが重要です。


4.3-4-3の一般的な守備手法


次に3-4-3の守備手法を見ていきましょう。守備の局面においては5-2-3あるいは5-4-1に可変します。簡単に区分すれば、敵陣でボールを奪いに行く場面では5-2-3、自陣では5-4-1となります。つまり、ボールが自ゴールに近づくにつれてSTの位置がサイドの低い位置へ落ちるということです。
5-2-3については、のちほど詳しく説明するのでここでは5-4-1に絞って説明したいと思います。この形は4-4-2に比べると、FWライン1枚が減る代わりに、DFラインが1枚増えます。このため、ゴール前での守備が固くなる一方で、カウンターに転じ辛くなります。前回での記事でも触れたように、カウンターの起点となるFWラインが1枚になるとボールを奪われてしまいやすいからです。また、4-4-2に比べブロックが強固になりますが、その点については4-4ブロックが5-4ブロックになる、と書けば明白でしょう。

また、弱点というほどでもないかもしれませんが、5-4-1では1トップ周辺に大きなスペースが生まれるため、相手はこのスペースをビルドアップの起点とします。それを防ぐためにはSTやCFが連動しつつ、適切に相手にプレッシャーを与えることが必要です。

なお、カウンターを狙いたいチームであれば、ボールサイドのWBがMFラインに上がりつつCBがSBの位置へスライドする一方で、逆サイドのWBとSTが一列後ろのラインに落ちつことで4-4-2にシフトします。

余談ですが、この可変の場合、スライドする選手の枚数が多くなるため高度な戦術的な落とし込み(トレーニング)が必要となります。海外のトップレベルのチームで採用されている可変システムではありますが、安易に導入すれば痛い目を見ます。スライドが多ければ守備の隙はより多く生まれます。その点で4-4-2はスライドの必要性が少ないシステムといえます。W杯では4-4-2で守備をするチームが多かったのも、スライドを必要としない=少ない期間での落とし込みが可能、という発想の結果かもしれません。


5.3-4-3でのプレスについて


2.において「3-4-3は4-4-2と比べて攻撃的」と書きましたが、それはボール保持時だけではありません。同一ライン間、ライン間のスライドが容易ということはプレスもかけやすいということです。そして、前述のとおり3-4-3の場合、両WBが低い位置に戻り5-2-3の形からプレスに入ります。

ここで、4-4-2と3-5-2のチームへのプレス方法を見てみましょう。いずれの図も分かりづらく申し訳ないのですが、共通するポイントとして、DH-ST-CFで形成する五角形にボールが入らないようにしつつ、サイドへ追い込むということです。特にSTとCFにおいては背後の選手へのパスコースを消しつつアプローチ(カバーシャドウ)することが重要になります。
CFが追い込むサイドを決めて、STは中への縦パスのコースを消しつつ、じわりとサイドへのプレッシャーをかけていくという形が理想です。

なお、プレシーズンマッチのある場面では、ハーフウェイライン付近でのプレス開始時にSTが対面するCBをフリーにしてしまった上に、STへの縦パスを警戒することもなくWBへのコースを制限するわけでもない極めて中途半端なポジションをとっていました。このため、CFはCB2枚でのパスを追い回すことしかできず、簡単に中央のDHを使われ、システム上スペースが生まれやすいDH脇を利用されてピンチを迎えていました。
このような不具合を起こさないためには、普段のトレーニングで、どのような合図でプレスを開始するか、チームとしてどのコースやエリアへのパスを制限するか、どのエリアに追い込んでボールを奪うかなどをチーム全体であらかじめ共有しておくとともに、実際にプレスをする際には、プレスが適切に行える陣形になっているかについて配慮する必要があります。

5-2-3でのプレス時においては、こうして前の五角形の中央などを使いつつ、DH脇やWBの裏を狙われることが考えられます。敵DHなどにボールが入った際にはCBがDH脇のスペースを警戒しつつ、場合によってはWB裏のスペースをカバーすることが求められます。


6.大宮アルディージャと3-4-3

これまで見てきたとおり、3-4-3については可変をすることで様々な局面への対応が可能です。このため、4-4-2に比べて各選手には多様な能力が求められます。このシステムが適切かどうかは正直なところ未知数。多種多様な戦い方が可能なので、どういった狙いでサッカーを展開するのかシーズンが始まってみないと分からないためです。とりあえず、選手を鑑みつつ、各ポジションに求められるものを見ていきましょう。

①CB
 ・攻撃の起点になるような縦パス(特に両脇のCB)
 ・広い範囲へ対応できるカバーリング
一番適性があるのは河面でしょう。彼には縦パスやカバーリング以外にも、タイミングの良い攻撃参加を期待できます。中央は菊地が担うでしょうから、右CBが畑尾と河本のどちらかになるはずです。ボランチ脇での迎撃、WB裏へのカバーリングを磨きつつ、縦パスを付ける能力がどれだけ上がるかが鍵となります。高山や山越の成長も長いシーズンを戦っていくうえで必須です。

②WB
 ・豊富な運動量
 ・サイド裏を突破できるスピード
候補は酒井、渡部、奥井、中村、佐相あたりでしょうか。基本的には酒井、渡部、奥井が求められているような能力をもった選手ですが、中村や佐相が自分の武器をうまく出せればバリエーションも出せるはずです。

③DH
 ・豊富な運動量
 ・プレス時のインターセプト
 ・一発でサイド裏を狙えるロングパス
戦力が豊富。プレシーズンマッチを見る限り、石川は怪我でもない限りレギュラーでしょう。相棒としてはソリッドに行くなら三門、バランスをとるなら大山、攻撃的に行くなら小島といった感じでしょうか。金澤や小野は厚い選手層の中どうゲームに関われるか。

④ST
 ・カバーシャドウの動き
 ・他の選手にスペースを作れるポジショニング
 ・チャンスが創出できるようなパス
 ・ミドルシュートやワンタッチでのシュート
このポジションを誰にするかによって、攻撃がガラリと変わると思います。レギュラーは恐らく大前と茨田。後者がカバーシャドウができるのに対し、前者はカバーシャドウもできなければプレスに上手く関われていない。それでも補って余りある得点能力と限られたエリアでもボールを受けられる技術は大宮にとって希少です。この2人の場合であれば、CFにより近い位置でプレーしつつ、WBへのスルーパスやポストからのフィニッシュを狙うでしょう。
正直なところ、嶋田やバブンスキーのようなドリブラータイプの選手がどのように活きるかは未知数。奥抜はスピードにも優れ、守備も怠らず、これからの成長も期待できる。いずれにしてもこの3選手はアタッカータイプなので、サイドに流れつつ、ドリブル突破を狙っていくような攻撃が繰り出せるでしょう。
あまり考えられませんが、あえてSTにシモビッチを置き、縦パスを受けて起点になりつつ、逆サイドからのクロスに頭で合わせるというパターンも無きにしも非ず。この場合、やや守備に不安が残ります。

⑤CF
 ・当たり負けしない身体
 ・ヘディングでの決定力
 ・STやWBへ落とすことのできるポスト
最後にCFですがファーストチョイスは間違いなくファンマでしょう。上記の能力を持ちつつ、守備ではプレスバックまでできる献身性があります。これに対して、やや劣るように見える富山に関してはポスト技術や裏への抜け出しなど技術面での違いを見せることが求められます。シモビッチについても能力は確実にあるはずですが、昨シーズンはいまいちチームにはまらず。今シーズンは守備やポスト技術の向上をしつつ、課題の守備を改善できるかがポイントかと思います。

概ね各ポジションにおいて必要な能力を持った選手がそろっていると思いますが、攻撃面ではCBがどれだけ縦パスを入れられるか、STがそれを上手く受けることができるかがやや不安です。プレシーズンマッチでは河面が左CBに入り、大前が左STでしたが、今は連携があまり上手く行っていないものの、今後の向上に期待したいところ。とりあえず、ファンマと大前の連携がしっかりできて、ふたりに良い形でボールを供給できるようになれば、安定した得点源を確保できるはずです。
守備面では如何にプレスを前から連動できるかがポイントです。この点に関しては、高木監督の腕の見せ所です。昨シーズンは前線からのプレスをしても前からの制限が甘く、後ろの連動もイマイチでした。チーム全体が連動し、ショートカウンターに繋げられるようになれればよりシステムの長所を生かせるでしょう。

【3-4-3まとめ】
・攻守両面において攻撃的な展開が可能
・可変することで様々な局面への対応が可能
・ビルドアップで駆使したいCB-STルート
・アタッキングサードではCFとSTが連携するとGood

以上、またまた分量が多くなってしまい3-5-2についてまで書けませんでした。おそらくその記事を書く前に甲府戦が来るでしょう・・・・。3-5-2を使うようになったら、記事にでもしようかと思います。


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