3バックって何?大宮サポが考える今シーズンのシステム論~4-4-2おさらい編~

はじめまして、昨シーズンからTwitterで大宮の試合分析をしていたZdenkoと申します。今シーズンよりブログを立ち上げ、張り切って大宮アルディージャの試合分析をしていきたいと思います。

さて、初の投稿はタイトルの通りシステム論です。長らく4−4−2をベースとして戦ってきた大宮ですが、昨シーズン3バック相手にメッタメタにやられたのは深く記憶に残るところですね。。。

去る2月9日行われた対松本山雅では3-4-3が採用されましたが、監督のコメントからは3-5-2を匂わせる発言もあり、両システムを4-4-2(サッカーにおいては最もスタンダードなシステム)と比べつつ、現有戦力がどのような躍動を見せるか妄想するとともに、今後大宮の戦いを評価していくうえで、はたしてその結果がシステムの影響なのか、選手個人に問題があるのか、はたまたチーム全体がシステムを活かせてないのか等々を正しく判断していくための視点を提示できればと思います。

本論に入る前に、システム論について勘違いしてはならない点があります。それは「システムとは11人がチーム全体として攻守の狙いを具現化するための手段にすぎない」ということです。当然ながら、相手と同じシステムを採用したとしても、選手も違えば、攻守の狙いも異なりますし、昨今では攻守両面において同じシステムを採用するチームは減りつつあります。
また、監督はこのチームにはどんな選手がいるから、どういう狙いでサッカーをしていきたい。であれば、このシステムが適切であろう、と思考します。この点については多くの反論があると思いますが、チームのスタイルを優先した上で勝利を目指すのはとてつもなく困難です。このため、監督は上記のような思考プロセスを経るのが一般的ではないかと個人的には思っています。
若干、話がそれてしまいましたが、いずれにしてもチームにいる選手の能力を考慮しなければ必然的にシステムは機能不全を起こし、システムの特徴と合致しないチームとしての狙いはプレーの停滞を生みます。
繰り返しですが、システムとは選手を躍動させ、自チームの狙う攻撃あるいは守備を実行するための「手段」に過ぎません。よくシステムありきでサッカーを語る人がいますが、この点を考慮しないシステム論はまさに絵をかいた餅、食べても触っても期待した感覚を得ることはできません。選手の能力とチームの狙いという前提があってシステムは語られます。


【1.4-4-2システムの概要】
さて、いきなりお説教臭くなってしまいましたがここからが本論です。今回の記事では皆さんご存知の4-4-2システムからおさらいします。このシステムの特徴を一言でいえばバランスに優れていることです。DFライン、MFラインの2ラインに4枚を配置することで、攻守においてピッチの横幅を効率的にカバーできます。また昨今ではアトレティコ・マドリードやW杯でのウルグアイ、スウェーデンなどがこのシステムを採用しており、強固なゾーンディフェンスからカウンターを狙うチームが多いです。


【2.4-4-2システムの一般的な攻撃手法】
攻撃では主にサイドが使われます。その場合、SB-DH-SH-CHがひし形を形成、連携してサイドを突破します。
※ひし形を作ることで、菱形の底に位置した選手が3つのパスコースを確保できると同時に、パスを受けた他の3選手の次の出しどころも確保。また、守備側は常に視覚外に攻撃側の選手を置くことになります。

また、より攻撃的にする場合、両SBを高い位置をとり相手のDFラインを押し上げ、SHがインサイドに入りIHに変わり、DFラインの裏に侵入したり、ミドルシュートを狙います。


【3.4-4-2システムの一般的な守備手法】
一方で守備では、MF-DFラインをコンパクトにすることで4-4ブロックを形成しつつ、2トップが相手DFラインにプレッシャーを与えます。なお、このブロックが縦横コンパクトになればなるほどブロック内に侵入することが困難になります。
ゾーンディフェンスではこの侵入が難しいブロックをなるべくコンパクトに維持しつつ、敵をサイドへ追い込み、ボール奪取を試みます。大宮もよくゾーンディフェンスだといわれていましたが、ブロックを維持することがより容易なのが4-4-2システムだと考えます。

これに対して、相手は2トップの脇を起点にしつつ、中央に比べて守備強度の低いハーフスペースを利用したり、誰がマークするか曖昧になりがちなSB-SH間を使ってDFラインの裏へ侵入します。
※次回以降の記事で3-4-3を説明するに当たり使えるのでとりあえず相手を3-4-3にしていますが、相手のシステムに関わらず多くのチームが言及したエリアを利用します。

このように2トップ脇のスペースを使われないためにはSHを2トップと同じラインに上げることで対処するのが一般的です。
※ここでは相手側に前述した菱形が形成されていますが、ボール保持者がフリーにならないよう守備をしつつ、菱形を形成する他の3枚にボールが入らないよう(入っても対応できるよう)素早いスライドが必要です。逆に攻撃側は菱形の底に位置する選手がフリーになりつつ、他の3枚へのマークが間に合わないような状況を作り出すためにサイドチェンジや縦パスを織り交ぜたパス回しを展開します。


【4.4-4-2システムとカウンターの相性】
ところで冒頭に、このシステムを採用しているチームはカウンターを狙うチームが多いと書きましたが、それはなぜでしょう。
一般的に上記2.の図のように攻撃側はカウンターに備えて4〜5枚を後ろに残しつつ攻撃します。ここで試しに3-2ブロックの中に1トップを置いてみましょう。

正に四面楚歌、メッシやドログバ、ディエゴ・コスタでもない限り忽ちボールをロストするでしょう。

今度は2トップを置いてみます。

囲まれてはいますが、パスコースがひとつあるだけでも多少は時間が稼げそうです。この時間を使って、SHなどが追い越しをかける事でカウンターに繋げることができるわけです。

次回以降の記事にて詳しく触れますが、3トップのチームが自陣で守備する際にはSTないしはWGをMFラインまで下げるため1トップになりますので、カウンターを有効に繰り出したいチームは2トップを採用しやすく、5-3ブロックで守るより、より素早く攻撃に転じることができるのが4−4−2ということで、カウンター志向のチームがよく使っているということなのだと思います。


【5.4-4-2システムに適したチームとは】
最後に、これまで4-4-2システムの特徴や攻守での動き方を見てきました。このシステムにはカウンターが適していることが分かりましたが、その他にどんな特徴をもったチームが適しているのでしょうか。

主なポイントは4つあるかと思います。
①個人で局面を打開できるような2トップ
②ドリブル能力やスピード、クロスの精度の高いSBやSH
③強固な4−4ブロック
④2トップ脇のスペースへの対応

過去の大宮を振り返るとどうでしょうか。
ベルデニック時代の大宮はズラタン、ノヴァコビッチという強力な2トップに強固な4-4ブロック(特に金澤、青木、菊地、河本の4人は鉄壁だった)が合わさったカウンターを主体にしたチーム。
5位に輝いた2016年には家長、江坂やムルジャなど高い個人技を持ったFW陣に、泉澤のスピード、ハードワークできる守備が持ち味で、こちらもカウンターを幾度となく繰り返したシーズンだったと思います。

その一方で昨季はどうだったでしょうか。そもそも明らかにカウンター仕込まれていなかった上、3バック相手には特に工夫もなく4−4−2のまま守備していたため面白いように2トップ脇を利用され、強固な4−4ブロックが築けたとは言えず、SB-SH間のマークも終始曖昧。選手を見てみても、大前の能力は誰しもが認めるところですが、局面突破が可能なマテウスはチームにかみ合うことなく、カウンターではないポゼッションからの攻撃ではサイドで菱形を形成できず(形成する意図があったかすら怪しい)、サイド裏やライン間を利用できる手法を持てませんでした。以上のように、4-4-2システムの特徴を活かせるような戦力の確保しつつ、チームの狙いを設定できなかったことがJ1に昇格できなかった要因かと考えています。

今季こそJ1に昇格すべく高木監督を招聘し、少なくともシーズン序盤は3バックをメインに戦っていくであろう大宮アルディージャ。分量がとてつもなく長くなってしまったので、次回の記事にて3バックがどんなものか、果たしてそれは大宮に適切であるのかを考えていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?