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vol.2 桃の花の妖精

ある年の春のことでした。

しましまねこのクックは我慢できないお腹の痛みに襲われて倒れてしまいました。

その時に運ばれたのが、くろくま先生の病院だったのです。

くろくま先生はたいへんな名医と評判でした。なにより気さくで暖かく不思議なほど頼れる先生だったので患者はみんな先生の顔を見るとホッとして、この先生に任せておけば大丈夫という気持ちになるのでした。

さて、運びこまれたしましまねこのクックは、これは急いで手術をする必要があると診断され、あれよあれよという間に、色々なチューブや機械に繋がれて気が付いたらすっかりいつもの自分ではなくなってしまったような気がしました。

さすがのくろくま先生、みごとに手術は成功しました。でもクックは退院できるまでしばらくの間、病院で過ごさなくてはならなかったのでした。

お腹についた手術のあとの痛みも消えてきたころ、クックは窓から雲の流れる空を眺めていると、ぷかりぷかりと桃色の風船が飛んでくるのが見えました。そしてその桃色の風船も見えなくなってしまうと、すっかり自分は外の世界からずいぶんと遠くに離れてしまったと涙がこぼれてとまらなくなりました。

「梅まつりの風船よ。」

小さい可愛らしい声に、クックはびっくりして振り返ると

そこにはタレ耳の可愛い子猫が立っていました。

「梅まつり?」くっくが聞き返すとタレ耳の女の子は

「私は西の城下町からやってきたの。城下町は梅まつりでにぎやかよ。梅も桃も満開で、もうすぐ桜も咲きだすの。」タレ耳の女の子は、にっこりと微笑みました。

タレ耳の女の子は「モモ」と名乗りました。

女の子は今日から入院でしばらくお家の人たちと離れてすごさなくてはいけないのだと話してくれました。そう言われてみると女の子はずいぶん痩せていて弱々しく見えました。大きな瞳だけはキラキラと吸い込まれそうに美しく輝いて見えました。

それからほどなくして、クックは退院できることになったのです。タレ耳のモモとのお別れの日です。

モモはまた少し痩せて小さく見えました。

「私も退院して梅の里へ戻ったら梅まつりの招待状をクックに送るね。」

「くろくま先生は世界一の先生だから!招待状を待ってるよ!」そう言ってクックは元の港街へ帰って行きました。

さてそれから 何回目かの 春がやってきました 。しましまねこの猫のクックは 最近 窓ガラスの 埃が やけに 気になるなあ …そんなことを考えながら バケツに水を汲んで 雑巾を絞っていると 郵便屋さんが 手紙を 届けて くれました  。 そこに書いてあったのは

城下町の梅の里は 梅も桃も 満開です。 今年は 桜も速足ですって!大急ぎで遊びに 来てください。 桃の花 の妖精

「桃の花の妖精……」

クックは不思議そうに呟くと 窓ガラスの 掃除を 投げ出して 急いで 梅の里へと向かいました。

西 の 城下町の 梅の里は 大勢の 花見客で 賑わっていました 。 

甘い香りに包まれた しましま猫のクックは うっとりしながら歩いていると 頭にたくさんの お花が咲いた 綺麗な猫が クックに にっこりと 微笑みかけてきました。クックはハッとして 「あなたが 桃の 花 の 妖精ですか ?」と尋ねると、綺麗な猫は「いいえ違います 私は おだんご売りです。おだんご、おひとついかが ?」お団子を袋に包んでもらったクックは、さらに奥へ奥へと 歩いて行くと また頭に綺麗なお花を咲かせた 猫が クックを見て 微笑みました。「もしかして あなたが桃の花の妖精ですか ?」「いいえ 違います 私は 桃色の 風船売りですよ。おひとついかが?」 

ぷかぷか浮かぶ風船を見上げていたらクックは 次第に心細く なってきました 。

そしてなぜだかとても哀しくなってきたクックの 肩を 誰かが 後ろから とんとん と 叩きました。

 驚いたクックが 振り返ると そこには あの垂れ耳の モモが立っていました 。

そしてクックはやっと気がついたのです。モモは花の妖精になったのだと。毎年春には …いつだってモモに 会えるのだと クックはそう思いました。

今年の春祭りはまだ始まったばかりです。


おもちゃばこ

www2.plala.or.jp/omocyabako/

登場するお人形は

平成31年2月17日から3月24日のあいだ毎週日曜日に開催されます少女塾さま企画展「桃色朱鷺色桜色」にて展示販売いたします。🌸

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