なぜスギの日本占領は終わらないのか?

いや逆に。

スギはいつ僕らにトドメを刺してくれるのか。

逆に。いっそ逆に聞きたいんだが、ここまでスギ花粉が猛威を奮っていて、日本国民を黄色い絶望の渦に巻き込んでおいて、毎年手を緩めずバイオテロが続くのはなぜなのか。強い憎しみすら感じる。いつになったらこの猛襲は終わりを迎えるのか。

毎年毎年「今年は何か去年よりヤバイ」というのを聞くし、何か今年は本当にヤバイ気がする。「今年花粉症の軍門に下った」という知人が何人かいる。ヤバイ。そんな毎年ヤバイ物質はスギ花粉か、ボジョレー・ヌーボーくらいしか知らない。

この間、黒い車を買った。ふと気づいてみたら、軽くヒョウ柄になっていた。関西のおばちゃんを買った覚えはない。マジかよ。花粉である。触っていいかどうかも分からない。見ているだけで目が痒くなった。愛車が「コロして……コロ……し……」と言っているようにも思えて、僕は激しく心を痛めた。

いやマジで逆に。

こんなに。

こんなにどっちゃり花粉がですよ。

雄花から毎日お届けされるのに。

雌花、何してんの?

考えてみても欲しい。スギだって別に、日本政府が林業のためにスギを大量に植えたとか、まぁそんな話はあるのかもしれないけど、日本の歴史で共生してきたはずで、生命活動としてそんな私怨は無縁で、ヒトと共演果たして大団円のはずじゃないですかYO。

だとすればどうだ、こんだけ、日本をスギ花粉で沈没せしめんとするくらい毎日花粉ばらまいて、どうしてスギが日本を征服してしまわないのか? なぜ所狭しとスギが日本領土を埋めてしまわないのか? だって花粉って受粉のためでしょう?

ちょっと考えれば分かる。逆に。こんだけ花粉ばらまいているってことは、同量、花粉を受け取る方がいるはずで、こんだけ花粉受け取ったら、そりゃもう日本はスギだらけになっていることは疑いない。アイ・アム・レジェンドの世界観があっておかしくない。そうだろウィル・スミスYO!

どうなってんだお前、スギ、お前だ。ちょっと来い。悩み聞いてやる。お前おかしいぞ。こんなにありったけ花粉ばらまいてなんで今この程度で俺たちが春に苦しむ程度なんだ?

お前の本当の力、俺は知ってるぞ。本当は文明社会を飲み込むほどに巨大なはずだ。いったい何をチマチマやってんだ? そうか、分かった。金か! 金が欲しいんだろ? いくら欲しいんだ? 言ってみろ。ハッハッハ、なんせこの花粉症による経済損失も相当なモンだろ。いくらでも——。

ぶぇっくしょい!

スギ、スマン。お前、ちょっと少しだけ離れてくれ。呼んどいてなんだが俺に近づくな。ヤベーんだ。お前、ヤベーんだよ。そろそろお前、お前のせいで俺の目と鼻がネリケシみたいにグチャグチャに混ざりそうなんだ。

なぁ、スギ、何とか言ってくれ。自律神経乗っ取りに来るのやめてくれ。何かアレか。俺たちが……何かしたのか……だから俺たちが憎いのか? そうなのか? ならば謝る、すまん、やっぱアレか、日本政府の施策の一つなのか。だとしたら——。

ぶぇっくしょい!

許して……もう許してください。俺たちが悪かったなら謝る。だから許して……。それともお前アレなのか。想い人が海外にいるとか何とかなのか。だから花粉を広く、大量に飛ばしていたりするんだろ。そうか、きっとそうなんだな? それは俺が何とかしてやる! きっとだ! だから——

「俺達ハ——」

「お、おぉ!? なんだ、スギ何でも言ってみろ。お前の望みはいったいなんなんだ? なぜこれほどまでに人を苦しめる?」

「俺達ハ、雌雄同株ダ——」

「なん……だ……と……」

雌雄同株。雄花モ、雌花モ、一本ノ木二出来ル、ノダ」

「で、では……」

「望メバ、一本ノ木カラ、 ”くろーん” ヲ自分デ作ルコトダッテ、デキルンダ。知能ガアルダケデ、脆弱デ愚カナ、人間トハ違ウ、ノダ」

「何だと?」

「スギッ! スギスギスギスギィ!」

「お、おい、スギ、何笑ってんだよ……」

「スギスギスギスギィ!」

「スギ……」

ブワァッ!

「ぎゃああああ! ま、まさか!」

「お前の狙いは……初めから……」

「オ、オレ……」

--- 暗転/BGM:世にも奇妙な物語のテーマ ---

さて。

花粉症による経済的損失について、国会への質問状の中で、なかなか興味をそそられるものがありました。

 花粉症の経済的損失について、第一生命経済研究所は、外出を控えるために個人消費が約七千五百億円減少すると試算している。また、二千年八月に当時の科学技術庁が発表した調査によれば、医療費や労働効率の低下による経済的損失は約二千八百六十億円となる。現在、二千年当時よりも患者が増えていることを鑑みれば、三千億円を超えていることは想像に難くない。

- 第190回国会への質問「花粉症対策に関する質問主意書」より抜粋
- 第一生命研究所経済調査部調べ「花粉の大量飛散が日本経済に及ぼす影響

これが真実であれば、花粉症の経済的損失は一兆を超えるということになります。これは平成二十八年度の国会で答弁され、国は「国民生活に花粉症が多大な影響を与えていることを認識し、スギ花粉の飛散防止に施策を講じる」と答えています。そこから二年が経ち、まだまだ人類の思い通りには、進んでいないようですが……。

もしかしたら、人間が勝手にコントロールできていると思っているものたちの中には、何かの目的のために虎視眈々と我々を陥れる準備を進めているものがいるのかも、しれませんね。

その時が来た時、果たして我々は——。

「コロして……」

「コロ……し……」

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

16
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。