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なぜ僕らは新しいルールを強制するのか

おはようございます。

Hamee株式会社でEMをしております正訓(まさくに)です。Hameeは握りやすいスマホケースiFaceなどの販売、多店舗を一括で管理できるECプラットフォーム、ネクストエンジンなどの開発をおこなっている小田原の会社です。

そしてこの本記事は「Engineering Manager Advent Calendar 2020」18日目の記事です。流入元が異なるであろうために、自分のnoteで16日ぶり2回目の自己紹介をしています。前回は自社のアドベントカレンダーでした。

さて、今回はEMとしてチーム、部署の運営に携わっていくにあたり、ある程度メンバーに対して強制力をもった制度、ルールを施行するときに考えていることを書きたいと思います。

 

本当のところ何も強制したくないし、自然といい感じになればいいなって思ってる

実際のところ、EMというロールの働き方、働きかけに携わっている人、あるいはEMを志している人でメンバーに独裁的に何かを強いたい人なんて皆無だと思うんです。

EMのアドベントカレンダーをご覧になったことがありますか? 傾聴、コーチング、メンタリングというキーワードに溢れ、世界で一番人の話を聞き、心の優しい人々が集っているのではないかとさえ思います。

ただマネージャーという肩書でもあるため、自分やチームのやりたいこと、成し遂げたいことを目指す以上、独裁的にでないにせよ、「これをやります」とか「やっていこうよ」とか表明しながら、新しい制度やツールやワークフローを導入しなければならない立場でもあるのではないでしょうか。

自分のところで言いますと、11月の段階でEMを拝命いたしまして、その少し前から他のEMとともに、リーダーの構成、メンバーのチーム編成や会議体を抜本的に再考することが求められました。

全くの実力不足のため11月は嵐の中にいるかのようだったのですが(そしてその嵐の中にいまだ仲間を巻き込んでしまって申し訳ないのですが)、仲間の優しさと理解のおかげでなんとか形成期を抜けられそう、というところまできたことを感じています。

ただその中で、どうしてもスタートの一歩目を踏み出すために、自分の考えを伝え、何かのルールや制度を持ちかけなければならないことが多々ありました。

本心で何も強制したくない。自然といい感じになればいいなって思ってはいる。本当に本当は何も強制したくないけど、まずは自分が思う「いい感じ」を表明して、そこにチームを乗せることを考えなければなりません。

そう考えてみると、こういうのはもちろん強制ではなく、いわゆる守破離でいうところの守の一種なんだろうなぁと考えるに至りました。

 

スクラムで逆輸入的に知った守破離について

守破離は数年前からスクラムの文脈でよく見かける言葉で、もはや皆さんご存じ、僕もかなり好きな言葉です。もともと合気道の言葉みたいですね。Scrum.orgの守破離についての文章を引用します。

“It is known that, when we learn or train in something, we pass through the stages of Shu, Ha, and Ri. These stages are explained as follows. In Shu, we repeat the forms and discipline ourselves so that our bodies absorb the forms that our forebears created. We remain faithful to these forms with no deviation. Next, in the stage of Ha, once we have disciplined ourselves to acquire the forms and movements, we make innovations. In this process, the forms may be broken and discarded. Finally, in Ri, we completely depart from the forms, open the door to creative technique, and arrive in a place where we act following what our heart/mind desires, unhindered while not overstepping laws.”

Shu-Ha-Ri of Professional Coaching

要約すると、訓練のプロセスのなかには守破離の三段階があって、「守」は基本の型を忠実に守って体に覚えさせる段階、「破」は自分たちで考えはじめ、型を壊していく段階、「離」はその型から離れて、自分たちで自由に考えて実践する創造的な境地、とのことです。

漢字の意味が伝わらないと、ぱっと見で理解するのは難しいと思うのですが、「守破離」がそのままの発音を保っているのが面白いですね。あえて英語で言うならなんて言うんでしょう。Follow-Break-Leaveとかなんでしょうか……。

守破離は順番が大切で、「守」が徹底できていないにも関わらず「破」をやろうとしても、うまくいかない、とよく言われます。既に確立された流儀があるにも関わらず、それをやろうとするのはただの我流で、無駄が多いということですね。

 

例えば小さなところで朝会の守破離から見て

2020年は弊社でもかなり早い段階からリモートワークが原則となったり、推奨になったりして、この大波に飲み込まれまいと必死です。(そもそも僕が転職した時点で完全リモートワークだったため、コミュニケーションの構築にかなり手こずりました)

その中で新体制を作っていくということが発表され、大波どころかこれ嵐じゃーんという状態になり、とにかく何はなくともコミュニケーションの再設計をどうしようかと考えることが多くありました。

例えば朝会の是非です。

リアルで顔を合わすことがなくなったため、朝会は何のためにやるか、あるいはやっていたのかを再考せざるをえなくなった企業、チームも多いのではないでしょうか。教えて下さい。どうされましたか?

デイリースクラムで言えば、その日の作業や困っていることの伝達に使われるわけですし、それってリモートワークならむしろSlackに書いた方が意義ありませんか? そもそも「全社」、あるいは「部」というくくりで、自分の作業に関係ない人と朝会して何の意味があるんでしたっけ?

――というような「そもそも」的な話し合いが世界のいたるところでおこなわれたのではないかと思っています。そしてZoomなどでの朝会さえなくす、という判断がなされ、むしろ上手くいっているというチームも多い気がします。それ自体が「破」、「離」であるもと言えます。

しかし、もともと作業報告ではなく、全体共有事項と個人のニュースを伝えるコミュニケーション第一義だった弊社の朝会は、その是非が新体制以後、真っ二つに割れました。

僕としては、単純に作業報告や困っていることの相談であれば、現在のところ対話での朝会は不要だと考えています。Slackの方が書くの楽だし考えも整理できるし、後で見返すのも便利だなぁと思います。

ただ、そもそもの朝会の意義を考えたときに、もっと本能的な欲求(=コミュニケーションをしたい、自己や真意を伝えたい)を満たすための「型」の一つだったのでは、と考えるようになりました。

今まで当たり前のように僕らはこの朝会という型に取り組んできたため、意味や意義を失い、自然と「破」や「離」の状態(よく訓練された状態といえる)を選択できるようになっていたのではないでしょうか。

もしコロナもなく、新体制ももっと緩やかな変更であれば、僕は朝会を離れていいた可能性があります。しかし組織の形成期にはコミュニケーションの数が大切とも言われるなかで、朝会は現在のところ「守」に回り、開催することをお願いしました。Hameeでは朝会はカルチャーの要素も強かったためです。

当然多くの話し合いの末の結論なのですが、見方によっては、結果的に僕は朝会を強制した、といえるかもしれません。だからこそ、時期が来たらこの型を破ること、離れることは常に選択肢の中に入れておかなければならないと考えています。

他の「見方によっては強制したこと」も、僕にせよ、他のEMの方々にせよ、様々な意図があって、この「守」にチャレンジしたかった、ということが多いのではないでしょうか。

守破離の上では「守る」とは書きますが、僕らが新しい制度やルールを思案して、施行するのは、新しい型を導入するための、もちろん攻めだと言えるのだと思います。

 

最後に現状維持バイアスについて

しかしながら「守」は失敗すると現状維持バイアスの中に転がるリスクを孕んでいるでしょう。前述の朝会も現状維持したかったのではないかと言われると完全に否定はできません。

チームにどの状態が必要か、恒常的な内省と観察が必要だと思われます。守は長い時間がかかるかもしれませんが、変化を恐れるようになることは守破離の本意ではないでしょう。

そのためには、きっかけはEMであったとしても、メンバーそれぞれに「こういういい感じにしていきたいんだよね、どう思う?」と意思のやりとりを繰り返して自浄作用を強めるのがいいのかな、と思っています。

まだまだやるべきこと、できてないことが多いんですけれども、手を尽くして、自然といい感じにしたいです。

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