見出し画像

水原一平氏の報道を見て思うこと

水原一平氏の詐欺事件は、その莫大な金額や違法賭博とか、一般人の生活からはかけ離れていて、私にとっては世間を騒がすスキャンダルに過ぎないけれども、ソロモン王の「箴言」(旧約聖書の20番目の書)の訓戒が思い浮かぶ出来事でもあります。箴言は、賢者といわれたソロモン王が、息子のために書いたもので、人のあるべき姿は、善良、正義、高潔を目指しすことだと述べています。「思慮はあなたを守り、英知はあなたを保つ。それらはあなたを悪の道から、ねじれごとを語る者たちから救い出す」と。

見落としがちなとことは、罪の誘惑は「これは誘惑ですよ~」という顔をしてはやって来ないということ。「ちょっとした気晴らしはいかがですか?」「みんなやっているから大丈夫ですよ~」そんな顔をして、そして偶然の出会いを装って、ひとりの人の前に現れるのだと思う。誰もが実は、ねじれごとを語る者たに狙われている、とソロモンは語っています。

でも、狙われにくい人もいる、と彼はいいます、それは、今よりもっと善良に、高潔に、思いやり深く、正しいことを求めようとしている人。善良で賢明な人の訓戒に耳を傾け、そういう人の叱咤や叱責も受け入れる人。だから、心の向くの方向の正しさが、自分を守るために絶対に必要だ、とソロモン王は述べています。「誘惑」が近づいてきたら、あれこれ考えずに、さっさと逃げなさいとも言っています。逃げるが勝ちということです。

水原氏は学歴詐称の疑いもあるといいます。嘘を重ねてキャリアをつかんだのなら、彼にとって嘘は悪ではなく、人生を前に進める秘策だったかもしれません。成功体験は人の価値観や世界観に大きな影響を与えます。大きな成功、他人は気にも留めないささやかな成功。どちらの成功かは無関係です。どういう方法で成功したか。それがその人を「ねじれごとを語る人」の仲間にしてしまうかもしれない。その現実を忘れてはいけないと思うのです。

また、目標を失うと誘惑を招きやすくなるのではないでしょうか。水原氏は日本のプロ野球の日本ハムファイターズの通訳として働く中で大谷翔平選手と知り合い、大谷選手がアメリカのメジャーリーグで活躍することを共に目指す間柄になったと報道で知りました。スターを目指そうと不断の頑張りを続ける人と、その夢を実現させるために粉骨砕身支援する人。ふたりの関係は麗しく特別なものだったでしょう。そして、ふたりは夢をかなえたのです。

けれども、その後はどうだったでしょう。大谷選手には、樹立すべき様々な記録という新たな目標があり、彼は挑戦者であり続けます。一方、水原氏の仕事は、今までどおり、気心に知れた人の通訳や練習・日常生活のサポートであり、そこに新しい挑戦があったかどうかは、甚だ疑問です。

もし、メジャーリーグを目指す人の支援なら誰にも負けない人になる、という目標を持っていたらどうでしょう。それなら彼は、大谷選手と同じように挑戦者であり続けることができました。そして、その目標を達成すべく、円満に大谷選手のもとを去り、新しい人と再出発していたかもしれません。

サポート役を職業にするのは、それが向いている人には良い選択です。けれども、サポートはサポートとして挑戦者でなければいけない。ひとりの成功者のもとに安住しているなら、その人は挑戦者ではないし、人として前進しているとは言えないと思います。

目標に焦点を合わせて全力を尽くし、一歩一歩前進している人を違法なことに誘惑するのは難しかったはずです。一方、目標を見失った人、焦点の定まらない人は、「ねじれごとを語る人たち」の恰好の獲物になりうるでしょう。その点において、私たちも注意する必要があると思います。何歳になっても人生の目標を持つことは大切です。仕事や趣味だけでなく、こうなりたいと思う自分を思い描いて追い求める、そういう挑戦者であり続けたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?