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心理的側面からエクスプロイトする

はじめに

こんにちは、博士です。
仰々しいタイトルですが、今回の記事にあたっては明確な根拠はなく、みなさなんにとって本当に役立つかどうかもわかりませんが、少なくとも自分はこういうことを考えながらポーカーをするほうが楽しいと思い、記事を作成しました。エンタメ的noteです。
皆さんも読み物として楽しんでもらえるとよいと思います。

THE RING

自分は最近マサキングチャンネルで行われているTHE RINGというライブ配信を観戦するのにハマっています。THE RINGは6人のリングゲーム形式でチップを取り合うという数時間かけて行う配信を計12回行い、その総収支で本当にポーカーが強いプレイヤーを格付けしようじゃないかという企画で、これまでのポーカーの配信ではなかった形です。ポーカーの強さを証明するにはどうしてもハンド数が必要で時間と手間がかかってしまうため、このような形式は今までありませんでした。それでも実力が少しでも反映されるように配慮されたことを感じるこの企画はとても好印象でした。参加者のポーカーのスキルが高いのはもちろんのこと、参加者自身がすごく熱が入ってプレイしているのを映像から伝わるのがとても印象的です。現在は全12節のうち、9節まで終了し、残る対戦はあと3回と佳境に突入していることもあり、普段では見れないような大喜びしている様子や落胆している様子などを見るとこちらも感情移入してしまうくらいにはとても楽しんで観てしまいます。

なぜそこまでTHE RINGに参加しているプレイヤーは熱が入っているのか?

それはほかの参加者に負けたくないという強い競争心とプライドから来ていると考えています。そして、

「最下位にはなりたくない」

と、全員が思っているのは間違いないでしょう。ましてやポーカーが強いということを売りにしている3MPCのメンバーは一層強く考えていると思います。だからこそ真剣に向き合っているプレイヤーの様子やそこから生まれるドラマがあることがポーカーのコンテンツとして魅力があると感じているのだと思っています。

スーパーヒーローコールの一面
マサキングさんのTwitterから拝借しました

日本人鉄強プレイヤーのある逸話

今回の題材となるシーンは10/11に行われたTHE RINGの1ハンドなのですが、その前にこの動画を作成するきっかけとなった鉄強プレイヤーのある逸話をさせてください。
それはオーノ塾で10/06にアップされた下記動画で何人か説明しているうちの日本人鉄強ポーカープレイヤーについてです。下記の動画を含めてこの対談シリーズで話されるエピソードは面白いので、ぜひ見てみてください。

「あの人は嗅覚が凄い。誰々が最初にいくらで入って、今はいくら負けているのかなどを具体的な数値で覚えている。僕らはそのような灼けてる指数みたいなものはぼんやりとしか把握していない。僕らより人がギャンブルをしているときの心理状況がどうなっているかという把握度がクリア」

【ポーカープロ対談】メディアに残らない日本のポーカーレジェンド達を語る

ライブポーカーならではのような話でとても興味深かったです。相手の心理状態をよく観察して具体的な戦略に落とし込み、そのような相手に対してエクスプロイトしてチップをたくさん取っていたのではなないでしょうか。自分にはあまりなかった視点でとても新鮮でした。
また、この話はライブキャッシュだけではなく、ライブトーナメントにも通じるのかもしれないと思いました。同卓している人が何バイインしているのか、どのようなプレイをしてチップを増やしている/減らしているのか、バッドビートを食らっているのか、それともラッキーしているのかなど相手の心理状態が現在はどうなっているかをよく観察し、そこから相手がどういうプレイをしてきたら、自分はどうアクションするのが期待値として最大なのかという心理的な要素を考えるのも面白いと感じるようになりました。

ハンドを心理的側面から検証する

表題のシチュエーション

ここから今回の検証するハンドについて説明します。このハンドは10/11 THE RING第9節の1ハンドで、今回フォーカスするプレイはリバーのsouzirouさんの最後のアクションです。

Blind 5-10-10(BB ante)
BTN(Tell 6s 3s) raise 3bb
BB(souzirou Ad 7c) call

Flop Tc5c5s (75)
BB(souzirou) check/call
BTN(Tell) bet 25

Turn Jc (125)
BB(souzirou) check
BTN(Tell) check

River 3c (125)
BB(souzirou) bet 50 / fold
BTN(Tell) raise 650

リバーで特大チェックレイズを仕掛けるTellさん

souzirouさんのRiverまでのプレイはGTO的な観点で言えば、とても自然なプレイラインで特に問題な部分はありません。リバーでValueとして打った40%betに対して、13xのレイズサイズが返ってくるとさすがにコールできないことをsouzirouさんが想定する相手の戦略と自分のとるべき戦略を解説してくれていました。

ですが、その時に見ていた自分の考えは少し違いました。この時、この瞬間に限って言えばそれなりにコールする頻度を作ってもいいんじゃないかと。
オーノ塾で話されていたあの日本人鉄強プレイヤーはこの場面に立ったらコールを考えるんじゃないだろうかと。

理由はシンプルでTellさんがこの瞬間に限っては灼けていて(熱くなっていて)通常よりもアグレッシブなプレイラインを取っているかもしれないことが想像できるからです。

このハンドに至るまでの経緯

さて、このように推測する理由をこれまでの収支状況とこのハンドに至るまでの経緯を振り返ってみましょう。

第9節の開始前の収支状況

このハンドが行われる第9節の配信開始時点ではTellさんは6人中最下位であり、ほかの5人と異なって一度も総収支で+になっていません。一人だけ下振れがずっと続いているような状態です。そして、直近数回の成績も芳しくなく、残りの対戦も少なくなってきている、という状態でスタートします。
この時点から精神的に雲行きがよろしくないことがうかがえます。

配信がスタートし、Tellさんは200bbでバイインしました。
開始後わずか9分でsouzirouさんとビッグポットを争います。
このハンドはTellさんがレイズしたところにBTNのsouzirouさんとがコールし、Tellさんがストレート、souzirouさんが2ペアを作ってTellさんがビッグポットを獲得するかと思いきや、ターンでまくられリバーでバリューベットするもsouzirouさんからAllinが返ってきて降ろされてしまい、約100bbのチップを失います。

初っ端から100bbを失うTellさん

その後、300bbアドオンしてチップを追加し、またしてもsouzirouさんとバチバチに当たります。
プリフロップでsouzirouさんのレイズにTellさんがコールし、FlopでTellさんがチェックレイズした後、ターンでTellさんがストレートを完成させ、トリップスを持っているsouzirouさんからチップを取り返す展開と思いきやまたもリバーで引き返され、逆に降ろされてしまうというバッドビートを連続で同じ相手から食らってしまいます。

ブラフチェックレイズしてストレートが完成させるTellさん
リバーでまたしても厳しい状況に立たされるTellさん

そしてさらにその20分後、別の対戦相手のりゅうたろうさんにフロップでセットを作って大きなバリューが取れるかとと思いきやここでもリバーでまくられ、ポットを落としてしまいます。
何とここまでわずか1時間も経たないうちの出来事です。自分なら完全に頭に来てしまいます。

またしてもリバーでまくられ、悩むTellさん

このあとでTellさんは細かいポットを取ったり落としたり、りゅうたろうさんにはフルハウスを作って大きなポットを取り返したりと奮闘します。

そのようないきさつを経て、あのハンドでの対戦に行きつくというわけです。2回目のバッドビートをsouzirouさんにくらわされた後、この検証ハンドまでsouzirouさんとは一度も当たっていません

相手の心理的状況を加味して最適なアクションを検討する

このような背景を考慮して、改めて検証ハンドのリバーでsouzirouさんの立場に立ってもう一度整理してみましょう。

リバーまでの状況整理
リバーまでの状況整理

今まで緑の戦略的側面の部分で検討していたものに加えて、青の心理的側面の情報も加えると最適な判断としては自分はこれらの心理的状況から以下のようにつながるのではと考えました。

心理的状況の推測

つまるところがTellさんのアグレッシブなプレイに拍車がかかりすぎて、最適なGTOの頻度よりもこの瞬間だけはブラフ過多になっているという推測から最適なアクションとしてはコールが有力ではないかと考えたのです。本来であれば、Tellさん側はブラフレイズとフォールドの混合を考えなければならないのですが、無意識のうちにこれらの心理的状況からある種の防衛本能のように、レイズを選択しやすくなるような状況に追い込まれていたのではないかと推測しました。自分で選択しているはずが、無意識のうちに選ばされているというような状態ですね。

このような心理的な要素を加味する、いわゆるメタ的な読み合いについては賛否両論あるところと思いますが、決定したアクションに対して心理的推測を説明すれば取り入れてもいいと思いますし、そういう心理的な読み合いも見てみたいと思うところではあります。過去のプレイや総合成績の状態などメンタルに様々な要因を与えうる状態でポーカーをしているというのはTHE RINGならではなのかなと思います。

最後に

ここまで書いておいてなんですが、実際のところは正解かどうかは誰にも分らないでしょうし、確かめようがありません。相手の心理的状況からポーカーの具体的な戦略まで落とし込めるのは至難の業だと思います。だからこそ、逸話のポーカープロたる所以ではありますが、このnoteを書くにあたり、そのすごさの片鱗に触れているような気がしました。勢いで書いてしまいましたが、自分では満足しています。
このnote読んでマサキングチャンネルのTHE RINGやオーノ塾の動画もそうですが、プレイする人のバックグラウンドに注目して見るとホーカーの違った面が見えて新しい面白さか見えてくるかもしれません。

ポーカーの配信でも実際のプレイでもそうですが、ポーカーという側面で見ると1ハンド1ハンド区切りがありますが、人間の精神的な側面で見るとそんなに器用に区切ることができません。過去を引きずってしまうのが人間です。言いたいことはポーカーの戦略はプリフロップ~リバーまでがつながっていますが、人間の精神はプリフロップ~リバーだけではなく、それ以前の勝負前からプレイの直前までつながっていることに注目するとポーカーを見るときやプレイするときの向き合い方が変わってくるかもしれません。

THE RINGは残り3回でTellさん含め、ほかのプレイヤーがどうプレイしていくのが非常に楽しみです。Tellさんはこのまま終わるような人ではないことは知っていますし、次回以降もバチバチやり合うシーンが目に浮かびます。こんなnoteを書きながらなんですが、特にTellさんは応援しているので、頑張ってほしいです!

おまけ

ところで来週の月曜日からいよいよハンターxハンターの連載が再開されます。長年の休載を経て、連載が再開されるのでとても楽しみですね。
なぜ急にそんな話をしているかというとハンターxハンターを見返しているときにある登場キャラクターの名言といわれているセリフが目に留まり、ポーカーの向き合い方として非常に合っていると感じたためです。
そのセリフとは主人公ゴン・フリークスの父親であるジン・フリークスのセリフで、

道草を楽しめ 大いにな
ほしいものより大切なものが きっとそっちに ころがってる

ハンターxハンターより

ジン・フリークスは目的を達成するまでの過程を楽しめ、と言っておりこれはハンターxハンターの物語全体のテーマでもあります。
この言葉がポーカーとの向き合い方としても非常に的を得ていて良い言葉だと感じました。チップを増やした/減ったというのは結果であり、実際にはそこに至るまでの過程で自分がどのように考えたのか、なぜそう考えたのかという思考過程に大切な部分があるというのは自分も感じていたことです。ポーカーの実力がどの程度強いかはハンドの思考過程を話せば、おおよそ把握できるといわれることがありますが、その通りだと思います。

また、ハンターxハンターは旅をするという点で描かれているため、道草というのは新しい人との出会いや未知の場所などいろんなものを幅広く含んでおり、それもポーカーと似ていますよね。
踏み入れたことのない場所、そこで出会う様々なバックグラウンドを持つ人々たちとポーカーをすること、書いていてもワクワクします。
皆さんにもぜひ色々な視点を持ってポーカーに触れることで新しい視点や面白さに気づいてくれると幸いです。
ハンターxハンターは言わずもがな、めちゃくちゃ面白いのでぜひ読んでください。ポーカーが好きなら好きだと思います。

長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
それでは、またどこかで。


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