杉山茂樹

特にサッカーに詳しい、人と同じことはあまり言いたくない派のスポーツライター。試合を俯瞰…

杉山茂樹

特にサッカーに詳しい、人と同じことはあまり言いたくない派のスポーツライター。試合を俯瞰で眺める上から目線を大切に、サッカーらしさ、サッカー的なノリにこだわる。好みは攻撃的サッカー。地域ではポルトガル、バスク、フランス。取材で訪れた国の数は70弱。コーヒー、紅茶、カレーにうるさい。

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技術委員長の権威低下を招いた田嶋会長時代の8年間

 サッカー協会の会長に宮本恒靖氏が就任した。47歳での就任は戦後では最年少とのこと。学年や年齢に基づく年功序列、先輩後輩の関係が色濃く残る日本式スポーツ社会において、若さは障害にならないか。  サッカー協会の業績と何より関係深いものは、W杯における代表チームの成績である。宮本会長には自分より8歳年上の森保一代表監督に、解任を迫る時が訪れるかもしれないのだ。日本的な上下関係のコンセプトが、そこで障害にならないだろうか。監督としての実績で大きく上回るのも森保監督だ。「W杯で最高

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    • 久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ」に見えるという現実

       チャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)を軸とする欧州サッカーを眺めていると、ウイングの時代を迎えていることを実感する。サイドアタッカーがウイングバックのみの、5バックになりやすい3バックが占める割合は全体の3割弱。サイドアタッカーを両サイドに各2人、置いて戦うチームは7割強を占める。その中で目に止まるのは、サイドバック(SB)ではないサイドアタッカーが、サイドハーフと言うよりウイング然と構えるケースだ。  日本のメディアは4-2-3-1の3の両サイドをサイ

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      • 森保、池田、鬼木……日本人指導者が取り憑かれる5バックなら守り切れるという幻想

        「前からプレスを掛けに行けば後ろにスペースは生まれるわけですから……」。「理に適った現実的な作戦だと思います」と、テレビ解説者は、5バックで守りを固める戦法を否定するどころかむしろ肯定する。森保一監督の表現を借りれば「臨機応変」、「賢く、したたかな戦い方」となるが、日本人の指導者の間ではどうやらこの森保的な思考法がスタンダードとして浸透しているようである。  たとえば、つい2〜3シーズン前まで1試合3点を目標に掲げていた川崎フロンターレの鬼木達監督である。昨季あたりから5バ

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        • 男子サッカーはメジャー競技なのに女子サッカーはマイナー競技。当たり前であってはいけない話が起きる理由

           北朝鮮を2-1で下し、パリ五輪出場を決めたなでしこジャパン。もしこの一戦に敗れ、五輪の出場権を逃していたら、女子サッカーへの関心は低下する。女子サッカー界の今後のためにも絶対に負けられない試合。関係者だけでなく、選手自身がそう口にしていた。  試合後、テレビのインタビュアーに5バックで戦った件に付いて問われた池田太監督は「前線から圧力をかけていきたかったから」と、伝わりにくい答えを返した。触れられたくない点にいきなり話を振られ、動揺を抑えながらそっけなく雑に返したという印

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          いま改めて痛感する伊東純也の希少性。右利きの右ウイング。代わりがいない選手であるゆえん

           アジアカップ期間中にチームを離脱した伊東純也は、次の代表戦(北朝鮮戦)に復帰することができるだろうか。軽々なことは言えないが、日本サッカー界にとって重要な問題であることは確かである。  ベスト8に終わったアジアカップ。その決勝トーナメントで伊東という選択肢があれば、違った結果になっていた可能性は高い。日本に必要不可欠な、代わりのいない貴重な選手。筆者の目に伊東はそう映る。  他の右ウイング候補は現状、堂安律と、森保監督が1トップ下で使いたがる久保建英を含めた2人だ。いず

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          森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多くの日本人指導者が見過ごす問題点にあり(その2)

           香川がマンチェスター・ユナイテッドで満足な活躍できなかった理由について、ファーガソンの後任にあたるモイーズ監督との、相性の悪さを口にする人が多い。しかし、香川がポジションをカバーする概念を持ち合わせていないことは入団当初から明白だった。サイドを離れ、気がつけば内寄りで構えるその癖は、高い位置でボールを奪おうとする欧州サッカーに入ると、好ましくないものとして際立って映ったものだ。  テレビ解説者には、逆に「ポジションは試合が始まってしまえば、あってないようなもの」と、反対の

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          森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多く…

          森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多くの日本人指導者が見過ごす問題点にあり(その1)

           アジアカップでベスト8に沈んだ森保ジャパン。森保監督は解任した方がいいと考える。協会によりよい新監督を探す力があるか、そこもまた心配される点だが、それはともかく、監督を変えた方がいいと考える一番の理由はそのイラク戦の采配にある。  南野拓実を左ウイングとして先発させたことだ。  浅野拓磨、久保建英、伊東純也、そして南野。スタメン表に名を連ねたアタッカー4人の顔ぶれを見たとき、筆者はてっきり1トップ=浅野、1トップ下=南野、左=久保、右=伊東の並びだと思った。久保と伊東は

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          想定外の不振に苦しむ日本代表。ポスト森保。探す人もいなければ、新監督候補もいない?

           日本がアジアカップのグループリーグで敗れたのは、初めて本大会に出場した1988年以来、36年ぶりの出来事だ。1-2でイラクに敗れた第2戦はまさしく事件に相当した。  4-2で勝利した1戦目のベトナム戦、3-1で勝利した3戦目のインドネシア戦ともに相手の健闘を讃える必要はあるが、日本のデキは3戦連続して低調だった。重要なのはバランスで「アジアは甘くない」と言って、苦戦を外的要因に求めすぎるのはよくない。内に潜む要因により目を凝らしたい。  病状は重い。選手のパフォーマンス

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          出ない杭は打たれない?森保監督解任論が出ない日本サッカーを取り巻く構造

           イラク戦。その1-2の敗戦には、様々な要素が絡んでいることは言うまでもない。目立つのは、あの選手がもう少しこうしていれば失点は防げた等々、敗因を失点シーンに絡んだ選手個々に求めようとする声だ。サッカーの本質から外れた、言うならば今日的な反応だなと思う。  サッカーは流れのスポーツだ。失点の原因を探ろうとしたとき、遡るべきは1プレー前なのか、2プレー前なのか、さらにその前になるのか。糸を慎重にたぐっていく必要がある。  わかりやすいのは1プレー前、2プレー前だ。今日ダイジ

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          日本代表、アジアカップ初戦で再認識したカタールW杯以降の成長点

           アジアカップ初戦、対ベトナム戦の日本は、いいのか悪いのか評価の難しいサッカーをした。多数派はその4-2の勝利を苦戦とする声だ。トルシエ・マジックに原因ありと、現ベトナム監督=元日本代表監督を持ち上げた。しかしベトナムのサッカーは本当によかったのか。  日本とベトナムは、2019年アジアカップ準々決勝で1-0、2022年カタールW杯アジア最終予選では、アウェー戦1-0、ホーム戦1-1と過去3戦、スコア的に僅差の争いをしている。特に2022年3月に対戦した最後の試合は、消化試

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          アジアカップ。グループリーグ突破のオッズは1.01倍。絶対的本命・日本に求められる優勝の飾り方

           昨日、アジアカップが開幕した。しかし本日行われる日本の初戦、対ベトナム戦はテレビ放送がない。3戦目のインドネシア戦、決勝トーナメント1回戦も同様。視聴環境はDAZNに限られる。  ユーロ、コパ・アメリカ等と同格のれっきとした大陸王座決定戦だ。代表チームのイベントとしてはW杯に次ぐ格式を誇る大会である。驚くべき事態である。従来の概念に基づけば事件と言えるかもしれない。しかしベトナム戦、インドネシア戦に格式を抱けるかと言えばノーだ。負けるはずのない試合。引き分けでもセンセーシ

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          ハーラント、ウーデゴール。ノルウェー代表の2人に見る今日性。引退した小野伸二との接点は

           右利きなのか左利きなのか、どちらかわからない選手が増えている。一番わかりやすい例は、マンチェスター・シティの1トップ、アーリング・ハーラントだ。豪快さが何より目に止まるので、利き足まで関心が回りにくいことも確かだが、身体を斜めに傾け、格闘技で言うところの半身の体勢になる瞬間は実際に少ない。  したがってカバーするエリアに偏りはない。苦手なエリアがないのだ。右も左も苦にしない。右から作ったチャンスにも、左から作ったチャンスにも、スムーズに対応できる幅の広さがある。  言っ

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          選手と監督、レベルが高いのは選手。監督版の「欧州組」が誕生しない日本サッカー界の悲劇

           森保監督が続投して約1年が経過。この間、より顕著になったのが欧州組の占める割合だ。カタールW杯に出場した26人中7人だったその数は、最近では9月(ドイツ、トルコ戦)=3人、10月(カナダ、チュニジア戦)=4人、11月(ミャンマー戦、シリア戦)=4人に減少。GKを除いたフィールドプレーヤー23人に限るならば、2人がスタンダードになっている。  年々増加する欧州組の総数は有名ではない選手を含めると100人を超えるとされる。すべての欧州組が、その名の通りのブランド価値を備えてい

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          森保式可変システム3-4-2-1⇔5-4-1への疑問。なぜ3-4-3にならないのか

           マイボール時と相手ボール時で並びが変わる、いわゆる可変式の布陣は、ここ何年かの間に少なくとも欧州において、監督采配の常套手段となった。サッカーの変化を語る時、外せない出来事になる。  目に付くのは4バックから3バックへの移行だ。相手ボール時は4バック。マイボールに転じるや3バックに変化する。代表格は、昨季のチャンピオンズリーグ(CL)を制したグアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティだ。3バックと4バックの調整をセンターバック(CB)あるいは時に右サイドバック(SB)

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          人材流出著しいJリーグが目指すべき道は。サッカーはある条件が整えば低レベルでも面白い

           天皇杯決勝。今季のJ1リーグ9位チーム(川崎)対17位(柏)チームの対戦と聞けば、心はあまり踊らない。トーナメントの頂上決戦には好カードを期待する。理想は1位対2位。せいぜい5位以内同士の戦いであってほしいと考える。だが11月に行われたルヴァンカップ決勝も7位(福岡)と9位(川崎)の対戦となったように、それこそが国内のカップ戦“あるある”なのだ。  決勝進出を果たした下位チームのサポーターにとっては晴れ舞台となる。決勝が上位対決であってほしいと願う第3者とは裏腹に、国立競

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          人材流出著しいJリーグが目指すべき道は。サッカーはある…

          選手の多機能性追求の足枷になる日本の勝利至上主義。細谷真大は兼ウイングを目指せ

           先のミャンマー戦とシリア戦に1トップとしてスタメンを張った上田綺世。ミャンマー戦にはハットトリック。シリア戦でも2ゴールを挙げている。怪我で招集を辞退した古橋亨梧(セルティック)を尻目に株を上げた恰好だ。  しかし、所属クラブ(フェイエノールト)では出番に恵まれていない。古橋が毎試合ほぼ先発を飾るのに対し、上田はもっぱら交代出場だ。  先のチャンピオンズリーグ(CL)第5週、アトレティコとのホーム戦では後半の頭から出場したが、今季の国内リーグ、CL全18試合中、出場した

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