マガジンのカバー画像

そのサッカーを疑え!

スポーツライター杉山茂樹が月4回程度発行する有料記事
¥540 / 月 初月無料
運営しているクリエイター

#日本代表

久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ」に見えるという現実

久保建英。トップ下より右ウイングの方が「ファンタジスタ」に見えるという現実

 チャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)を軸とする欧州サッカーを眺めていると、ウイングの時代を迎えていることを実感する。サイドアタッカーがウイングバックのみの、5バックになりやすい3バックが占める割合は全体の3割弱。サイドアタッカーを両サイドに各2人、置いて戦うチームは7割強を占める。その中で目に止まるのは、サイドバック(SB)ではないサイドアタッカーが、サイドハーフと言うよりウイ

もっとみる
森保、池田、鬼木……日本人指導者が取り憑かれる5バックなら守り切れるという幻想

森保、池田、鬼木……日本人指導者が取り憑かれる5バックなら守り切れるという幻想

「前からプレスを掛けに行けば後ろにスペースは生まれるわけですから……」。「理に適った現実的な作戦だと思います」と、テレビ解説者は、5バックで守りを固める戦法を否定するどころかむしろ肯定する。森保一監督の表現を借りれば「臨機応変」、「賢く、したたかな戦い方」となるが、日本人の指導者の間ではどうやらこの森保的な思考法がスタンダードとして浸透しているようである。

 たとえば、つい2〜3シーズン前まで1

もっとみる
森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多くの日本人指導者が見過ごす問題点にあり(その2)

森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多くの日本人指導者が見過ごす問題点にあり(その2)

 香川がマンチェスター・ユナイテッドで満足な活躍できなかった理由について、ファーガソンの後任にあたるモイーズ監督との、相性の悪さを口にする人が多い。しかし、香川がポジションをカバーする概念を持ち合わせていないことは入団当初から明白だった。サイドを離れ、気がつけば内寄りで構えるその癖は、高い位置でボールを奪おうとする欧州サッカーに入ると、好ましくないものとして際立って映ったものだ。

 テレビ解説者

もっとみる
森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多くの日本人指導者が見過ごす問題点にあり(その1)

森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多くの日本人指導者が見過ごす問題点にあり(その1)

 アジアカップでベスト8に沈んだ森保ジャパン。森保監督は解任した方がいいと考える。協会によりよい新監督を探す力があるか、そこもまた心配される点だが、それはともかく、監督を変えた方がいいと考える一番の理由はそのイラク戦の采配にある。

 南野拓実を左ウイングとして先発させたことだ。

 浅野拓磨、久保建英、伊東純也、そして南野。スタメン表に名を連ねたアタッカー4人の顔ぶれを見たとき、筆者はてっきり1

もっとみる
想定外の不振に苦しむ日本代表。ポスト森保。探す人もいなければ、新監督候補もいない?

想定外の不振に苦しむ日本代表。ポスト森保。探す人もいなければ、新監督候補もいない?

 日本がアジアカップのグループリーグで敗れたのは、初めて本大会に出場した1988年以来、36年ぶりの出来事だ。1-2でイラクに敗れた第2戦はまさしく事件に相当した。

 4-2で勝利した1戦目のベトナム戦、3-1で勝利した3戦目のインドネシア戦ともに相手の健闘を讃える必要はあるが、日本のデキは3戦連続して低調だった。重要なのはバランスで「アジアは甘くない」と言って、苦戦を外的要因に求めすぎるのはよ

もっとみる
出ない杭は打たれない?森保監督解任論が出ない日本サッカーを取り巻く構造

出ない杭は打たれない?森保監督解任論が出ない日本サッカーを取り巻く構造

 イラク戦。その1-2の敗戦には、様々な要素が絡んでいることは言うまでもない。目立つのは、あの選手がもう少しこうしていれば失点は防げた等々、敗因を失点シーンに絡んだ選手個々に求めようとする声だ。サッカーの本質から外れた、言うならば今日的な反応だなと思う。

 サッカーは流れのスポーツだ。失点の原因を探ろうとしたとき、遡るべきは1プレー前なのか、2プレー前なのか、さらにその前になるのか。糸を慎重にた

もっとみる
日本代表、アジアカップ初戦で再認識したカタールW杯以降の成長点

日本代表、アジアカップ初戦で再認識したカタールW杯以降の成長点

 アジアカップ初戦、対ベトナム戦の日本は、いいのか悪いのか評価の難しいサッカーをした。多数派はその4-2の勝利を苦戦とする声だ。トルシエ・マジックに原因ありと、現ベトナム監督=元日本代表監督を持ち上げた。しかしベトナムのサッカーは本当によかったのか。

 日本とベトナムは、2019年アジアカップ準々決勝で1-0、2022年カタールW杯アジア最終予選では、アウェー戦1-0、ホーム戦1-1と過去3戦、

もっとみる
アジアカップ。グループリーグ突破のオッズは1.01倍。絶対的本命・日本に求められる優勝の飾り方

アジアカップ。グループリーグ突破のオッズは1.01倍。絶対的本命・日本に求められる優勝の飾り方

 昨日、アジアカップが開幕した。しかし本日行われる日本の初戦、対ベトナム戦はテレビ放送がない。3戦目のインドネシア戦、決勝トーナメント1回戦も同様。視聴環境はDAZNに限られる。

 ユーロ、コパ・アメリカ等と同格のれっきとした大陸王座決定戦だ。代表チームのイベントとしてはW杯に次ぐ格式を誇る大会である。驚くべき事態である。従来の概念に基づけば事件と言えるかもしれない。しかしベトナム戦、インドネシ

もっとみる
選手と監督、レベルが高いのは選手。監督版の「欧州組」が誕生しない日本サッカー界の悲劇

選手と監督、レベルが高いのは選手。監督版の「欧州組」が誕生しない日本サッカー界の悲劇

 森保監督が続投して約1年が経過。この間、より顕著になったのが欧州組の占める割合だ。カタールW杯に出場した26人中7人だったその数は、最近では9月(ドイツ、トルコ戦)=3人、10月(カナダ、チュニジア戦)=4人、11月(ミャンマー戦、シリア戦)=4人に減少。GKを除いたフィールドプレーヤー23人に限るならば、2人がスタンダードになっている。

 年々増加する欧州組の総数は有名ではない選手を含めると

もっとみる
森保式可変システム3-4-2-1⇔5-4-1への疑問。なぜ3-4-3にならないのか

森保式可変システム3-4-2-1⇔5-4-1への疑問。なぜ3-4-3にならないのか

 マイボール時と相手ボール時で並びが変わる、いわゆる可変式の布陣は、ここ何年かの間に少なくとも欧州において、監督采配の常套手段となった。サッカーの変化を語る時、外せない出来事になる。

 目に付くのは4バックから3バックへの移行だ。相手ボール時は4バック。マイボールに転じるや3バックに変化する。代表格は、昨季のチャンピオンズリーグ(CL)を制したグアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティだ。3

もっとみる
選手の多機能性追求の足枷になる日本の勝利至上主義。細谷真大は兼ウイングを目指せ

選手の多機能性追求の足枷になる日本の勝利至上主義。細谷真大は兼ウイングを目指せ

 先のミャンマー戦とシリア戦に1トップとしてスタメンを張った上田綺世。ミャンマー戦にはハットトリック。シリア戦でも2ゴールを挙げている。怪我で招集を辞退した古橋亨梧(セルティック)を尻目に株を上げた恰好だ。

 しかし、所属クラブ(フェイエノールト)では出番に恵まれていない。古橋が毎試合ほぼ先発を飾るのに対し、上田はもっぱら交代出場だ。

 先のチャンピオンズリーグ(CL)第5週、アトレティコとの

もっとみる
レベルダウン著しいJリーグとレベルアップ著しい日本代表。アンバランスに支配される日本の行く末

レベルダウン著しいJリーグとレベルアップ著しい日本代表。アンバランスに支配される日本の行く末

 J1リーグ。2位の横浜F・マリノスがアルビレックス新潟に引き分け、首位を行くヴィッセル神戸が名古屋グランパスに勝利したため、優勝の栄冠は最終節を待たずに神戸の頭上に輝いた。

 勝ち点差2で迎えた試合だった。両者が競いあうスリリングな展開になっていたことは確かである。しかし世の中の反応はいまひとつ鈍かった。その反応の強弱を何で判断するか。テレビ、新聞からネットに移行したいま、正確に捉えることは難

もっとみる
ベストメンバーの呪縛に取り憑かれる日本人代表監督

ベストメンバーの呪縛に取り憑かれる日本人代表監督

 1998年フランスW杯予選に臨む少し前だったと記憶する。時の代表監督、加茂周氏はメンバー選考の考え方についてこう話した。

「14人目までは順当に決まる。スタメンの11人と交代の出場の3人は実力で選んでいけばいい。だがそれ以降は実力だけで選ばない。試合に出ない可能性が高くなるので、ベンチを温め続けても大丈夫な選手か、チームにマイナスな行動を取らない選手であるかが選考の基準になる」

 だが、フラ

もっとみる
常識を疑え。3バック=5バックは本当に「守備固め」に相応しい作戦か。成功体験しかない森保Jを心配する

常識を疑え。3バック=5バックは本当に「守備固め」に相応しい作戦か。成功体験しかない森保Jを心配する

「4-3-3、4-2-3-1、3バックを相手や状況によって賢く使い分けていく」とは、最近の会見で森保一監督が述べたコメントだ。だがこの3つの布陣の関係は並列ではない。4-3-3と4-2-3-1は親戚関係にあるが、「3バック」はそうとは言いがたい。

 3バックも4バック同様、いくつか種類がある。攻撃的なものもあれば守備的なものもある。それを森保監督は十把一絡げに3バックと表現する。

 これは森保

もっとみる