音楽、好きじゃなかった話

物心つく前から、私の母はバンドでボーカルをしていました。
多分、ボーカル歴は十年じゃきかないくらい。何十年とか。
だいたい必ず週一回は平日夜にバンド練習があるから、その時は祖父母の家に預けられてました。
土日もそんな感じ。月に何回かはバンド練習があるから祖父母の家に預けられておりました。
普通に働きながらそんな感じだったので、今から思うと母元気だなぁと思います、自分の年齢が当時の母の年齢に近付いてくるとなおさら。

今から思うと、母は母なりに私のことを愛してくれていたと思います。
でも、その頃の私はそうは思えなかった。子どもだったし。
自分を置いていくのはバンド練習があるから、っていう印象がどうしても強くて、バンドも、音楽も、あんまり好きじゃなかった。特にバンドは、
最近までずっと好きじゃなかった。
けど、小学校の音楽の授業で歌うのは楽しかった。歌うのは楽しい、でも好きにはなれない。歌っているのは楽しいけど、なんとなくもやもやする。そういう葛藤みたいな、自分の中の矛盾みたいなものを消化しきれずにいました。
そういうなんとなく音楽を好きになれない感じもあって、学生時代に軽音楽部とかサークルに入ったりもしませんでした。
今思うと、入っとけばよかったかなぁ、なんて思ったりもします。

働きはじめて、母の伝手でバンドのボーカルをすることになって、ボーカルレッスンに通いはじめて。
通いはじめたときは、本当に軽い気持ちでした。外で歌うなら、一応やっとくか、みたいな。
でも、バンドでボーカルして一年くらい、かな?ちょっとしたきっかけもあり、水樹奈々をバンドで歌いたい!と思ったのでした。

そこから、メンバー変わりながらもハチで歌って、バンドで歌うのってこんなに楽しいものなんだ、とか、その時の母の気持ちがちょっとずつわかるようになって。
母との共通の話題として、音楽の話、バンドの話ができるようになって。
そうしていくうちに、自分の中のわだかまりみたいなものがだんだん薄れていって。
今では、音楽も、バンドも、好きだって思えるようになって。
バンドやりはじめて、本当によかったなぁと思います。

今日この話をしながら、平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』という本にあった一文を思い出しました。
『人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。』

おそらく当時の私は寂しかったんだろうな、と思うけれど、今の私が振り返って感じる感情はそれとは違っていて、自分的には前よりもいい感じです。
上手く言えないけど、いい感じいい感じ。

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