「コーヒーと恋愛」読んだよ!

獅子文六著の「コーヒーと恋愛」を読みました。
二、三年前に呼んだものの再読です。

主人公である坂井モエ子はテレビ女優として活躍しています。
とある劇団の舞台装置を担当している塔ノ本勉と結婚していて(実は事実婚)、モエ子さんが年上の八歳差の夫婦です。
モエ子さんはコーヒー好きで、右に出るものはいないほどコーヒーを美味しく入れます。
コーヒー好きが高じ、可否会という小規模な集まりに所属しています。

同居しているモエ子と勉ですが、勉が劇団の少女(アンナ、19歳)からアタックを受けていることが話題に上がります。
モエ子から「私に飽きたの?」と聞かれたのに対し、勉は「それもある…」と答えます。
「それもある…」って何やねん??!!!?
と、心のなかで盛大なツッコミをかましてしまいました。
いや、いくら歳が離れていたとしてもそんな態度なくないですか?
この会話の前、勉は「僕とアンナの仲を疑うのも無理はない」「僕はここらで自分の生活を一新させたい」「アンナは外からの声なんだ」みたいな、浮気宣言とも言えることを明言していました。
今だったら考えられない態度だと思うのですが、昔では割りと容認されていたのでしょうか。
それにしても、住むところも生活費も家事も何もかもモエ子頼りのほぼヒモの癖に何やねん…と思わざるを得ませんでした。

モエ子の仕事の調子は上々で、ドラマの主役やCMの話などが舞い込んできます。
そのうち、CMの仕事の一環で、モエ子が洋行(欧州旅行)する案が浮上します。
外国に行ったことのないモエ子にとっては嬉しい話でした。
一応モエ子は売れっ子女優の設定なのですが、フラ~っと欧州に旅行するくらい出来ないものなのでしょうか。
芸能人って割りと旅行しているイメージなので…。

そんなこんなで年が明け、モエ子の主役ドラマの撮影が始まろうかという時、勉は突然家を出ていきモエ子の前から姿を消します。
"生活革命"とやらを実行し、アンナと同居するようになりました。
モエ子は随分気を落としますが、可否会の会長である菅さんとの縁談が徐々に浮上してきます。
菅さんは奥様を亡くされて長く、同居している妹や可否会のメンバーに進言され、再婚を考えるようになりました。
加えて、彼は茶道に倣った"可否道"の確立を目論んでいました。
自分が可否道の長になるのは良いとして、希代のコーヒー名手(?)のモエ子にアシスタントをお願いしたいという下心もあったのです。

モエ子は菅から遠回しに「結婚したいと考えている」旨の話を受けますが、彼の言動からはモエ子自身というよりはモエ子のコーヒーを淹れる腕前が欲しいといった本心が透けてしまっていました。
私ではなくコーヒーを愛しているのかしら…と、モエ子はこの縁談に乗り気ではなくなってしまいます。
更に、"生活革命"とやらで家を出た勉が、風呂を貸して欲しいとかでしばしば家を訪ねてくるようになります。
ある日、勉はモエ子にコーヒーを淹れるのを頼み、それを味わって飲んで言うのでした。
「こんなにコーヒーを美味しく淹れる人はこの世にはいない」「風呂を借りたいというのは口実で、実はこのコーヒーが飲みたかった」「君が菅くんと結婚するのは構わないが、コーヒーだけは毎日飲ませて欲しい」「コーヒーが飲めるのなら、もう一度結婚してもいい」
そこで、モエ子は「どいつもこいつもコーヒーばかり言って!」と堪忍袋の緒が切れるのでした。

あ~、タイトルの「コーヒーと恋愛」はこういう意味だったのか~と最後に分かりました。
モエ子はコーヒーの腕の良さを憎み、金輪際インスタントしか淹れないという決心さえしてしまいました。
少し気の毒な感じもしますね…。
勉を追い払ってから、モエ子は菅さんの縁談も断ります。
そして、私費で洋行へと向かうのでした。
恋愛コメディという感じで、昭和の作品ではありますが現代の我々でも楽しめる内容だったと思います。

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