サピエンス全史_本_

サピエンス全史から妄想あれこれ(4)

ハラリ氏のまとめるチカラは勉強になる・・・でも

 サピエンス全史の前半では、ホモ・サピエンスだけに起こった認知革命(7万年前から3万年前に見られた新しい思考と意思疎通の方法の登場)が、その後の急激な勢力拡大になったことが一大テーマとなっている。
 認知革命によって、ホモ・サピエンスは全世界に進出し、他の人類種を駆逐した可能性が高く、ともかくも、認知革命により唯一生き残った人類種となったところが重要であると。
 ハラリ氏は、何故ホモ・サピエンスだけに認知革命が起こったかはさほど重要ではないと言う。(遺伝子の突然変異が起こり脳内の配線が変わり・・・と、もっとも広く支持されている説を紹介している。(何故、ネアンデルタール人のDNAではなく、ホモ・サピエンスのDNAに起こったのか、それは、全くの偶然であると)

 そして、それ以前の先史についてはかなりバッサリと切った構成となっている。(とはいえ、本の冒頭に歴史年表として多数説による進化の過程がまとめて書かれているので、末尾記載した。)

 しかし、ちょっと待てよ。
 同じ祖先(旧人)から進化し、脳容積も大きく社会性や共感能力を持ち合わせ、ヨーロッパや中東で繁栄していたネアンデルタール人には認知革命が起きず、逆に、東アフリカにとどまって独自の進化を遂げたホモ・サピエンスの方に認知革命が起きたというのだ。その新しい思考方法でネアンデルタール人を駆逐していったというのだから、これは大変なことだ。(ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより脳容積は大きかったらしい。)

 今後の人類の行く末を考える上で、今後もそういうことがあるのかと考えてしまう。今もどこかで別の認知革命が起こっていないのかなどと考えてしまう。

 そもそも進化に枝分かれは常にあった。

 600万年前700万年前はチンパンジーと人類の共通祖先がいて、それが枝分かれして、一方は、二足歩行し、サバンナに進出し、独自の社会性や頭脳を発達させ、旧人、ホモ・サピエンスへと進化した。それ以外にも、この本には記載されていないが、森に残ったサルたちの枝分かれはもっとすごい。また、途中で絶滅した猿人、旧人たちの種も数多い。

(ハラリ氏は先史のこのような興味深い話を割愛することで、自分の言いたいことに早くだどりついている。まさにまとめるチカラだ。)

 今後も人類にこういう枝分かれがあっても不思議ではない。

 昭和40年代、上方の桂枝雀(当時は桂小米)という噺家が、よく枕で使ったネタがあった。

話の筋はこうだ。
「チンパンジーと人間は共通祖先がいた。しかし、ある時から、どういう訳か、多くがチンパンジー路線を歩んでいる中で、ある者が人間路線を歩み始めた。そして600万年後、片方が片方を檻に入れて見るぐらいの関係になった。最初の頃は、少数派の人間路線を歩んでいる者をを『あいつはちょっと変わっている』とか言ってたぐらいかも知れないが、気が付いたら大変な違いを産んでいた。

 これが本当だとすると、今いる人間だって、すでに新・人間路線を歩んでいる人間がいるかも知れない。だから、「あいつは変わっている」という人の中にひょっとしたら新人間がいるかもしれない。そして、将来、私たちを檻に入れる立場になるかもしれない。だから、そういう変わっている奴ものけ者にせず仲良くしなければならい。・・・・」という感じの話だったと記憶している。

(「サピエンス全史」第1章唯一生き延びた人類種 より)
「じつは約200万年前から1万年前ごろまで、この世界にはいくつの人類種が同時に存在していたのだ。これは格別驚くべきことではない。今日でも、キツネ、クマ、ブタには多くの種がある。10万年前の地球には、少なくとも6つの異なる種が暮らしていた。」

さらに、広がった妄想を次回以後書いてみよう。

(末尾)サピエンス全史 冒頭の歴史年表(抜粋)

600万年前
   チンパンジーと人類の共通祖先 
250万年前
   アフリカでホモ(ヒト)属が進化する。最初の石器
200万年前
   人類がアフリカ大陸からユーラシア大陸へ拡がる。異なる人類種が進化する。
50万年前
   ヨーロッパと中東でネアンデルタール人が進化する。
30万年前
   火が日常的に使われるようになる。
20万年前
   東アフリカでホモ・サピエンスが進化する。
7万年前
   認知革命が起こる。虚構の言語が出現する。
   歴史的現象の始まり。ホモ・サピエンスがアフリカ大陸の外へと拡が    る。
4万5000年前
   ホモ・サピエンスがオーストラリア大陸に住みつく
   オーストラリア大陸の大型動物相が絶滅する。
3万年前
   ネアンデルタール人が絶滅する。
1万6000年前
   ホモ・サピエンスがアメリカ大陸にすみつく。
   アメリカ大陸の大型動物相が絶滅する。
1万3000年前
   ホモ・フローレシエンスが絶滅する。
   ホモ・サピエンスが唯一生き残っている人類種となる。
1万2000年前
   農業革命が起こる。植物の栽培化と動物の家畜化。永続的な定住

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?