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心に残った2人のやりとり/文学フリマ大阪 熱狂参戦記⑤

9月10日に開催された「文学フリマ大阪11」の賑わいについて書き連ねています。

人の人の触れ合いが、小さくスパークする瞬間

私は「ウミネコ制作委員会」が発行する「小雑誌ウミネコ」の寄稿者として、ウミネコブースを拠点に情報収集を続けていました(ブラブラしてただけ)。
「つるるとき子商店」と隣接する「ウミネコブース」は、noteの繋がりのある来訪者で込み合う時間帯がありました。
そうなると私はお隣ブースの邪魔にならないようにちょっとよけたりしていたのですが、そんなタイミングで向かいのブースから声をかけられました。

「すごい賑わってますね」

そんな感じの一言だったかと記憶しています。
声の主は、ブルー系のパステル色の服を着た女性。
TVで見る女性の気象予報士のような笑顔でこちらを見ていました。

「あ、そうですね。noteっていうSNSの仲間も集まるので。こちらはどんな本なんですか」
と店頭に引き込まれる私。

「メンエス、ってわかりますか?」
「…わか…ると答えていいものかどうか、今、迷いました」
「あはは、まあそうですよね」

人当たりのいいこの女性は現役のメンエスセラピスト・りなさん(わからない方はチャットGPTとかに聞いてください)。
りなさんは接客のプロとしてのマナーや戦略、日々の葛藤などをまとめた冊子を販売していたのです。note内でもその経験談などを、有料コンテンツとして配信していたようで、

「ウミネコさんは人気ですもんねー」とウミネコ制作委員会のことは、なんとなくご存じのようでした。

「おすすめはどの本ですか?」
「えーと、こちらが日頃のノウハウというか、仕事の上での戦略みたいなものをまとめていて、こちらは日頃のつぶやきみたいなことですね」
「…じゃあ、その2冊をください」

お金を払って商品を受け取っていると、りなさんは隣のブースに座る男性にちらりと目をやりました。
20代半ばくらいに見えたその男性は、テーブルの上に見本の商品をポンと置いたまま、絵を描くことに集中しているようでした。

「お友達ですか?」
「いえ、違うんですけど、ぜんぜん売る気ないからー。ほら、売ればいいのに」

優しい人だな、と思いました。
たまたま隣り合っただけの人のことを気にかけている。
男性は、少し照れた様子で小さく頭を下げました。
その時、私は気づきました。男性が描いている絵に見覚えがある。

「あ、文学フリマ札幌でお見かけしましたよ!なんでしたっけ、ダンボールの被り物とかかぶったり。あの中の人ですか?」
「あ、はい」
「へえー!私も札幌からきたんです」

男性は「ここは札幌アンダーグラウンド」というタイトルの冊子を販売していました。
マンガと雑記をミックスした日記のようなコンテンツ。
1冊300円というシリーズの冊子を3冊購入しました。
見守っていた隣のりなさんは、少し安心したように見えました。

隣り合ったブース 2人の本

それぞれの作品を家に帰ってから読んでみると、
りなさんの「メンエスセラピストの戦略」はSNSでの発信方法を自分なりに分析・研究して実践してきた成果などをまとめたもので、ノウハウ本ともいえる内容。そして「メンエスセラピストの物悲しさ」は、りなさんが仕事と向き合う中で「人間としてどう生きるか」を模索する切なさが綴られていました。

そして「札幌アンダーグラウンド」は、ご自身が「これは曼荼羅」と語る様に日々の出来事の中の刹那の思いを、マンガと哲学で切り取った作品。
いわば、死ぬ前に見る走馬灯を自分で準備しているかのような、不思議な味わいを感じました。

そんなお二人がたまたま隣り合った、2023年9月10日。
それぞれの人生が一瞬、交錯しただけのことなのでしょう。
でも、私にとってはその一瞬がすごく微笑ましく、得難い時間であるように感じました。

これ、私っぽいw ↓

こうした瞬間を積み重ねて、生きていこうと思うのです。


<文フリ大阪リポート、まだつづく>

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