「吉本R&Cを通さずにDVDを販売した」話

2014年4月に「西野亮博独演会」のニューヨーク公演があったんです。
ニューヨーク公演ってどうやって行われたかって言う話なんですけど、
昨日今日やろうって突発的に実行した話じゃないんです。
ずっと前から、スタッフと相談してあの手この手で考えて、すごーい長い計画で実行されたんですけど。
まず、ニューヨーク公演やるのには"200万円"かかるって言われたんです。
じゃあこの200万円をどっかから引っ張って来なきゃいけないんです。どこで黒字を出すみたいな話になって、
その時ちょうど「しずる」と言うお笑いコンビの村上君が相談して来たんです。
『西野さん、僕ら単独ライブしてるんですけど、吉本がいつもDVDを出さしてくれないんですよ。どうしたらいいですかね?』って相談を受けたんです。
可愛い後輩の頼みやから俺どうにかしてあげたいと思って、色々調べてみたんです。
「吉本R&C」って言う所のDVD出す部署があるんです。そこに『何でしずるのDVD出せないんですか?』って聞いたら、
DVDって言うのは、黒字が出るまで、要は元を取るまで、"3000枚"売らなきゃいけないんだと。
だから、3000枚売れる見込みが無いとDVDを出す事は出来ないんだと、R&Cの方から聞いたんです。
あ、そうなんやって思って。
ほんで、しずるはね、毎年夏に何百人動員の凄い人気のライブをやってるんです。
でも、"3000"って言うのはなかなか厳しいラインだと。
で、しずるのファンが「DVD出さしてくれ」って署名運動とかしてるんですけど、結局吉本のGOが出なかったんです。
それは結局、ラインとしてDVDを"3000枚"売らなきゃいけないですから、GOを出せなかった。
あぁ、そうかぁ。3000枚かぁと思って。ちょっと計算してみたんです。
3000枚って事は、[1枚:3000円]で売ったとしたら、[3000枚:900万円]です。
DVDを作るのに、900万円もかかんのかなぁ?と疑問に思って、DVDの工場に直接電話してみたんですよ。
西野『DVDを3000枚刷って、外側のプラスチックパッケージを作るのとか含めて、いくらぐらいかかるんですか?』って工場のおっちゃんに聞いたら、
工場『あー、あのー"27万円"です。』って。
27万円!? え? 900万円じゃないの?
ちょっと待ってちょっと待ってお兄さん、900万円ちゃいますのん。ですよ。ねぇ、27万円なんです。
じゃあ、後の873万円は何に使われてるんだ?って調べると、結局ねこれ、「流通」に持って行かれてるんですよ。
要は、DVDを出して→R&Cから出す→Amazonに販売をお願いするとか。
販売を委託するから、間に入ってる人達にちょっとずつちょっとずつお金が抜かれて行って「873万円が抜かれる」と言う状態になってるらしいです。
でも、ちょっと待って。
DVD作るのに"27万円"ですよ。じゃあ、3000円のDVDを[90枚売ればペイ]なんです。90枚売るんだったら、流通に乗せなくていいじゃないですか。
ライブ終わりで、90枚手売りすりゃええやん。90枚くらい本気出したら売れるよ。流通なんか乗せる必要ないんですよ。


ここや!と思って。

流通に乗せないDVDを出して、流通に持ってかれるはずだったお金を「独演会のニューヨーク公演」の費用に充てたらいいんだと思ったんですよ。ピカーンですよ。
こうなったら、R&Cなんか通さんでいいんですよ。こうなったら、しずる村上のお願いなんて俺はどうだっていい!知らん!このアイデア俺が頂く!


さぁ、西野のライブで需要が高いの何だってなった時に、やっぱり「日比谷公会堂の独演会ライブ」だなと。絶対これをDVDにしようと決めた。
でもさ、吉本にはR&Cと言うDVDを出す部署があるんです。で、こっから出さなきゃいけないんです絶対に。そういう吉本のきまりだから。
じゃあ、どうやったらR&Cの縫い目をかいくぐって行けるんだって色々考えて、私が打った手はですね。
これチケット2000枚売る前ですよ。まず、R&Cの所行きます。
『すいません、今度、日比谷公会堂で独演会って言う1人のライブをするんですけど、そのDVDをR&Cさんの方で出させてもらえないですかねぇ?
でも、正直僕あんま人気がないから、2000人埋める自信がないんですけど、DVD出したいんですよねぇ。』みたいな事言った。ね、ちょっとこう、旗色悪いみたいな感じを出した。
そしたらR&Cの人が、
『あぁ、2000人が埋まらないんだったら、ちょっと厳しいかもしれないですねぇ。西野さん、今回は申し訳ございません。』と。
良しですね。良し来た。断られた。
『はい、分かりました。残念です。』って答えて、このやり取りで、私振られたと言う事例を作りましたね?
はい、こっからチケット2000枚売ります。2000枚完売しました。
で、R&Cさんが言って来る前に、知り合いの番組のスタッフさんにカメラとか編集スタジオとか押さえて貰いました。
ってなった状態で、R&Cの人が来て、
R&C『すいません。西野さん、チケット完売おめでとうございます。もし良かったら今度の日比谷公会堂の独演会のDVD、うちから出さないですか?』って来たんです。
西野『いやぁ、でも、断られてしまって、振られてしまったので、もうアカンねやぁと思って、こっちでカメラとか全部押さえちゃったんですよね。
で、編集スタジオも全部押さえちゃったんですよ。出すのは、全部R&Cさんの方でやって頂いても構わないんですけど、
やるんだとしたら、カメラとか編集スタジオのキャンセル料だとかを、余分に何十万とか、ヘタすりゃ100万とか払って頂く事になるんですけど、それは大丈夫ですかねぇ?』って言うたら。
そら、R&Cからしたら、そんなもん大丈夫じゃないからさ、『ちょっとそれは厳しいですね』みたいな返答が来て。
西野『あぁ、じゃあそれは断ると言う事ですよね?』って言う事で、
見事、R&Cから出さないDVDを出せたんですよ今回ね。
ありがとうございます。凄いよね。この辺はもう頭が良いからさ、スルスルと行く訳よ。
俺その次の手も考えてたんですよ。
R&Cの人がちょっと頭キレる人がいた時対策で、
『いや、とは言え、吉本興業所属の芸人が映像モノでお金を取っちゃうとマズいですねぇ。』って言うて来た時の手は、
原価10円くらいのピンバッジを2000円で売っちゃって、特典としてDVDを付けるって言う、DVDはタダですよって言う屁理屈。
客アホですねぇ。10円のバッジ2000円で買いやがりましたよって言う、そう言う、次の手、次の手を用意してたんですよ。
あの、交渉を上手くやる時の秘訣として1番良いのは、
「コイツとやりあったら、面倒くさいな」って思わすのが1番良い。で、スルスルっと行ったんですよ。

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