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霊温冷交代浴

※この文章は「サウナイキタイ」に投稿するつもりが文字数制限を大幅に越えてしまった結果投稿されたものです

稲川淳二の怪談ナイト30年連続公演


人は背筋を凍らせた後、サウナに入るとどうなるのか?
温冷交代浴に「霊」の要素を加える。
せっかくの夏なので、そんな試みをしてみた。

結論、この夏に是非おススメしたいサウナ体験だ。

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14時怪演(開演)

1000名を収容するホールが暗転する。
会場が静まり返ったところに和服姿の女性が登場。おどろおどろしい前説。怪談ムードが一気に高まる。

「…来た」再度暗転して稲川先生が登場。
が、なぜか満面の笑顔。ちぎれんばかりに客席に手を振る。ひとりひとりと目を合わせるようにして丁寧に。一生懸命に手を振る。

「あぁこれが30年怪談を続けている人のアティテュードか」
今年は41都市50公演をこなす。
プロの凄みを目の当たりにした。

8月に75歳を迎える稲川先生

「私も来月で遂に後期高齢者です。いや、私の場合後期"交霊者"ですけどね」

ドッ…。会場の空気が更に和む。
あの前説の仰々しさはなんだったのか?
そんな風に油断していたのも束の間。

稲川先生は手元の湯呑みをズズッとすすり、突然怪談が始まった。

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稲川先生のオノマトペ

ネタバレをする訳にはいかないので、キーワードだけ。


・中古マンション
・芸人A
・スーパームーン
・七不思議
・心霊写真


稲川先生持ち前のオノマトペを駆使して、会場全体の背筋をこれでもかと凍らせる。

「カリカリカリカリ…!」
「ト…トトトトトッ!」
「トントン!トントン!」

稲川先生のオノマトペは、半ば擬音ネタ化しているきらいもある。
私自身も稲川先生の音声付きLINEスタンプを日々カジュアルに使っている。

内心怖がれるか不安もあったが、完全に杞憂だった。

帰宅中、家族に連絡して玄関に塩を用意してもらった。
そのくらい怖かった。

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野天湯元・湯快爽快 ちがさき

怪談ナイトが公演されたホールから徒歩8分。
傘を差し、余韻に浸りながらサウナに向かう。

野天湯元・湯快爽快 ちがさき。
調べると1993年オープン。来年で30周年。
確かに年季が入っている。が、館内は清潔だ。

週末ではあるものの17時前と早めだったせいか目立った混雑はなかった。

身を清めた後、早速サウナ室へ

収容人数20名とあるが、30名は入るだろう。
都内のそれと異なり間隔が広い。
ゆったりと間をとっていることもあり空きスペースは3〜4席。

床面、座面、その上にもう一段。
奥行きのある部屋の手前と奥にそれぞれ熱源がある。
奥の座面に腰かけた時、数ヶ月ぶりのサ活だったことに気づく。

室温は86℃。6分、7分、8分の3セットで身体を慣らした。
水風呂は18℃。サ室に対しては少々狭いが、茅ヶ崎のゆったりとした雰囲気が自然と譲り合いを生む。

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霊をいかに生かすか。

今日のポイントは「霊温冷」の交代浴。

まず最初のサ室。
背筋が凍っていたせいか、とても気持ち良かった。人がたくさんいる安心感。物理的な温かさがいつにも増して身にしみる。

休憩は少し趣向を変えてみた。
休憩の度に稲川先生に想いを馳せてみた。

屋外にはベンチが2つ。
うたた寝の湯が6箇所。御影石に横たわると背中に湯の流れを感じる。お湯のお布団スタイルだ。

稲川先生との出会い

1セット目。まずはベンチで休憩する。
小雨が降る屋外は気温24℃。ちょうどいい。

稲川先生との出会いを回想する。

小学4年生の頃。
先輩の家にテレビゲーム目当てで入り浸っていた夏の日。
タッチを見たりゲームをしたりしていた時だろうか、稲川先生の「ぎゃああああ!!」という悲鳴にビクッとした記憶がある。

「長い死体」という話だっただろうか。
水難事故をテーマにした話が、海水浴シーズンにハマり過ぎており、怖くて眠れなかった気がする。

言霊を帯びている

2セット目。うたた寝の湯に横たわる。
稲川先生の満面の笑みを思い出す。
終演後、稲川先生は開演のそれと同じく腕を振りまくっていた。

「私の趣味は人間浴。海水浴や森林浴のように人前に立つと元気を貰えるんです。」
その言葉の背景には「50公演」「30年連続」という確固たる実績がある。

ステージから観客を見下ろすスタンスでは到底成し得ないだろう。
心の底から楽しみ、感謝している。
その言葉に偽りがない事が伝わってくる。

やり抜いた人の言葉には力がある。
言霊を帯びている。

「自分が75歳を目前にした時、あのようにいられるだろうか?」

ぼーっとしながらも熱い何かが込み上げてきた。
交代浴に「霊」を取り入れた手応えを感じた。

稲川先生のことは忘れていた

3セット目。ベンチ。
サ室で汗の出方に変化を感じた。
前半4分カラッカラ。後半で汗が噴き出してきた。
水風呂は運良くひとり独占。

ライトグレーに染まった空から、心地よい雨がポツリ、ポツリと降り注ぐ。
天高く大きめの鳥が飛んでいる。

目の前には思い思いのスタイルでリラックスするサウナー達。
なんていい時間なんだろう。
自然と口角が緩む。

この時、稲川先生のことは忘れていた。
ととのっていた、のだと思う。

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「霊」は作用したのか?

全身を拭きタオルを縦に絞る。
髪を乾かす自分に微笑みかける。

「霊」を取り入れたのが良かったのか、
「本物」に触れた感動のせいだったのか、
ただ単に良い1日だったのか、は分からない。

ただ、背筋を凍らせた後のサウナは異様にホッとした。興味のある方は是非チケットを手に入れていただきたい。

8/5-6@中野公演のチケットが若干数販売中のようだ。徒歩6分の所には高砂湯がある。

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おわりに

怪談のせいか、妙に寝付けず長くなりました。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
なにぶん素人故、たいしたオチも無くすみません。。

ただこの体験をここに記しておきたいと、そんな衝動に突き動かされました。

怪談ナイトに行けない方も是非、
「稲川淳二 長い死体」といった具合で検索してみてください。

霊温冷交代浴が体験できるかもしれません。

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