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大雨の日産スタジアムで、法務として新たなキックオフしたあの日のこと。

みなさん、こんにちは。
このnoteもまた1年ぶりの投稿となってしまいました。
この投稿は、裏法務系アドベントカレンダー(#裏legalAC)2022の記事です。昨日のYuichiro MORIさんからバトンを受けまして、本日はもう折り返し地点を過ぎた14日目の投稿となります!

誰がこの記事を書いているのか?

まず、簡単に自己紹介させてください!
元メーカーの(一人)法務で、現在は契約書管理クラウドサービス「Hubbleでカスタマーサクセスチームのマネージャーと法務向けメディアの「Legal Ops Lab」(略してLOL)の編集長を兼務している、山下俊といいます。

正直なところ、自分が法務として培ってきたノウハウは、Legal Ops Labの中にかなり移植されつつあるので、こちらの裏legalACでノウハウとして書けることは殆ど残っていません笑。

そこで今回は、せっかく4年に一度のワールドカップがあった年でもあることから、自分が法務だった頃、サッカーと関わった思い出話をしたいと思います。

急に舞い込んだ、スポンサーの話

清水エスパルスとのご縁

2017年7月29日(土)、大雨の日産スタジアムの一席に座り、私は法務として少し今までとは違った達成感を得ました。私が当時所属していた企業が、Jリーグのクラブチーム、清水エスパルスのスポンサーとなったことが、その試合でお披露目になったのです。

少し時を戻して2017年の初夏(だったと思います)、約3年の業務経験を積んで、一人法務としてある程度仕事をこなせるようになっていた私のもとに、清水エスパルスへのスポンサーになるかを検討する、という趣旨の案件が舞い込みました。

BtoBメーカーであったこと、そして(少なくともその時点までは)そこまで目立つ広宣活動に関わる機会も少なかったことから、私自身は少し驚きを持ってこの案件を受け止めました。とはいえ、私はあくまで法務なので、通常通り契約書をレビューして終わりかなと思っていました

法務なのに、プロジェクトの中心に

実際にはその読みは少し甘かったことを、すぐに知ります。
こうした案件は、一般的にも経営側の意思も強く反映された特命プロジェクトとなることが多いのではないかと思いますが、特に当時は、こうした案件について子細を詰める実務の受け皿となるチームや担当者もはっきりとは定まっていませんでした。

このため、経営企画畑の上司のもと、契約内容も把握できて比較的この案件に「近い人」として、自分が広報と連携しつつ実務上の話も進めることになりました。自分の法務の職責を考えると、やるべきなのかという点に疑問がなくもなかったですが、結果的に自分にとっては前向きに臨んだことがよかったと思っています。

スポンサー契約とは

企業にとっては広告媒体、クラブチームにとっては収入の柱

選手個人やクラブチームと締結するスポンサー契約は、ご存知の通り、企業からお金を提供する代わりに、ユニフォームや競技場内の掲示などに、企業や製品のロゴを掲載する広告宣伝の権利を買うというのが主な内容です。企業からすると認知度向上といった広告効果を狙ったり、特にJリーグなどの地域密着型のスポーツの場合には、地元の人材採用強化の手段として実施することがあります。

一方で、クラブチームからすると、このスポンサー収入が、チケット、グッズ、放映権と並んで超重要な収入源となっています。

ここだけを見ると、要は広告出稿の契約なので、契約の構成自体はそこまで複雑ではないです(実際に中身も難解な点はほとんどなくすぐにレビューできたと記憶しています)。

企業戦略と紐づくスポンサーとしての権利

その一方で、スポンサー契約書には、具体的広告施策がそのままスポンサー企業の権利として契約書に記載されるという意味で、個別の広告施策との結びつきが強いという特徴があると感じられました。しかも、スポンサーの権利としてクラブチームが用意した施策のメニューから、どの施策が自社にとって活用余地があるのか、逆にどれが使いづらいのかを、会社全体の視点から考える必要があり、会社のビジネスの全体像を知らないと対応が難しいのです。

例えば、クラブチームとのスポンサー契約では、スポンサーのランクに応じた権利として、①無償または割引チケットの提供を受ける権利や②自社名や商品名を冠したいわゆる「冠試合」を実施する権利、③選手に販促活動を協力してもらう権利などが付帯していたりします。

もっともBtoBビジネスの場合、上記③は、選手が都度商談に同席するわけにもいかないですし、実施できても必ずしも効果がない可能性もあり得ます。この場合、この③の権利を放棄して、①や②を拡充するように提案したり、そもそも全く別の提案をしてみたり、と契約交渉の中に具体的施策の話が深く入り込んできます。当時、法務視点からのルーティン業務に慣れていた自分にとっては、契約交渉の中で具体的に施策と結びつけながらが検討を進めるところが刺激になりました。

当時、新規開発案件の契約書レビューはもちろんですが、取締役会など会議体事務局もやっていたことから、先行して各事業部門が先に見据えている商品企画なども大体知っていたのも効きました。これを踏まえてスポンサーとしての権利を会社全体でどう有効活用できるかを考えられたことは、今思うと法務に集まってきた情報を上手く還元できた良い実例だったのではないかと思います。

「結実感」が感じられた大雨の日産スタジアム

当日、お披露目の現場で

そんなこんなで、個別の広告施策の内容から、掲出するロゴのサイズ感や見栄えの調節など各所の調整、そして稟議の起案まで、ほぼ全行程に私は関わることになっていました。最終的にスポンサー契約を締結し、その旨が公表されたのが、冒頭に記載した、2017年の7月29日、Jリーグがちょうど後半戦に入る時期でした。

その日は、記念に試合にご招待頂いたのですが、試合開始の少し前から傘をさしても全身びしょ濡れになるくらいの尋常じゃない大雨でした。ただ、よっぽどではない限りサッカーの試合に中止はないので、予定通り開催され、自分も最後まで試合を見届けました。

大雨ではあったものの、実際に会社のロゴが入ったユニフォームのパンツを身につけた選手たちが躍動する姿を見て、日常の法務業務にはない「結実感」があったことを覚えています
(残念ながら上記のハイライト映像では、ほとんどロゴは写り込んでいませんでした…そのため、翌年には鎖骨部分にロゴを出すように契約を変更しています

本プロジェクトを通して感じたこと

そもそもこういった体験は、そう何度もできるようなものではないですし、法務としてはかなりイレギュラーな領域まで手を広げていて、色々な縁と運も重なっているので、この話自体に再現性は殆どないとは思います。

ただ、実際に一つの案件を最初からしっかりやり切って形になったこと、そして法務からの目線だけではなく、プロジェクトを推進する側に回ったことによって見えた世界は、従来とは少し違ったように感じました。これに加えて改めてこういった施策や企画の中で、法務(機能)に求められる動きとは何かを強く考えさせられました

その意味で、その後の自分の法務業務の視座を高めるキックオフ的な案件だったなと感謝の気持ちがありますし、しっかり取り組んでよかったなと今振り返って感じています。

最後に、こぼれ話

ちなみに、このスポンサー契約は2022年現在も続いているようで、私自身は退職するまでの約2年半、本件に関わらせて頂きました。

わずかな期間ではありましたが、色々印象的な瞬間はありました。衝撃度でいうと、2019年の冠試合で0-8で負けたことが最大かもしれません…笑(点差は、日本記録という噂です)

実はこのトピックを取り上げたもう一つの理由として、清水エスパルスがJ2に降格してしまったことがあります。来年の2023シーズンは、最短での昇格を目指す戦いになるのですが、陰ながら応援したいなと思います!

さて、ここまで自分語りの思い出話にお付き合い頂き、ありがとうございました!皆様におかれましては、良いお年をお迎えください🙇‍♂️

次は、毎年皆様お待ちかね、ahowotaさんです!
事前情報によると「ラブライブ!から得られる法務に生かせるノウハウを語る」…らしいです!お楽しみに!


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