無資格法務

 こちら、今話題の非弁に関するエントリではございませんので悪しからず。

 先日も有資格/無資格という切り口による、企業法務の将来に関してのツイートがありました。私自身、法曹の無資格者であることからこの辺りの議論(事実)を無視するわけにはいかず、考えを整理しようと思いました。

企業内弁護士(インハウス)数の推移

 組織内弁護士協会の調べによると、以下のようなグラフになります。本年6月の日経新聞の記事によると、2017年末時点では2,000人を超えた(2,051人)とのことでした。

 他方で登録弁護士数との比較で見ると、下記のように、ダメなエクセルの典型のようになります(笑)。弁護士登録者は、2017年時点で4万人近くおり、当たり前ですが、まだまだ弁護士全体から見れば少数派です。

 一般的に企業内弁護士を雇う、又はそれを予定する企業は、コンプライアンスへの対応を強く求められる上場企業が多いものと思われます。

 21日時点で、いわゆる上場会社は、3,639社(JPXより)あり、まだ数字上も「一社に一人」という状況までは至っていません。

 今でこそ給与体系などが未整備な会社が多く、有資格者が組織に属するメリットを給与面から説明することが困難な場合が多いように思われます。
 しかし、現在のペースでも毎年200〜300人が企業内弁護士として入社していることから、向こう数年には給与体系も整い、今以上のペースで企業内弁護士が増加するのではないでしょうか。

 こうした中で、無資格法務は、どのように生きていく道があるのでしょうか。

普通に考えたら、資格はあった方がいい

 当たり前ですね。同じ法務として仕事をするのに、資格は+αの部分ですが、基礎的学力の証明、基礎的リーガルマインドの証明、努力してきたことの証明という点では、資格を持っていて損することは殆どないはずです(無論、無資格者の方が押し並べてこれらの素養が無いという訳ではありませんが)。
 従って、今、少なくとも司法試験の受験資格をお持ちの方は、可能性のある限り受け続けた方が良いのだと思います。

骨を埋める覚悟が出来ていれば、逃げ切るのもアリか

 資格の有無でシビアに比較されるタイミングとして、転職があります。
 この転職市場に出なければ、無資格者として、ある程度の地位を維持しつつ、安定して働き続けることは可能かもしれません。

 実際のところ、弁護士の母数が現状4万人ですから、ここから今のペースで司法試験合格者が増えたとしても、社内の法務担当者が全て有資格者で形成されるということは、一部の会社を除けば、向こう15年で見ても考えにくいです。

 従って、逃げ切るという選択肢もまだ残っていると言えるかと思います。

でも、キャリアアップしたい

 はい、これ私です(笑)。
 現時点なら、法務担当者の募集要件として「弁護士」を必須としていない会社は沢山あります(というか必須としてしまうと、人材確保に苦労しそう)。
 従って、とっとと転職して新たな専門領域を身につける、というのがオーソドックスかつ手堅い道であるのでしょう。

 しかし、私は先日のエントリでも申し上げた通り、法務担当者(学習者)は、ビジネスマンとして一流になる高度の素養を有していると考えています。

 特に若手から中堅の方は、まだまだ可能性がある以上、「法務に拘らない」という道も十分考えて良いのではないでしょうか

 一つには、今いる会社のコーポレート(管理部門)のジョブローテに組み込まれて、採用、会計、税務…と一通り経験してみることがあります。
 私は、これまで、こういった日本らしい管理系ビジネスマンの生成は、専門性を損なうものと考え、懐疑的に捉えていましたが、他部門を有機的につなぐコーディネーターの役割は、組織が複雑化する現代の企業には確かに必要で、個人的には結構価値があると考えています。
 そしてこういった役割は、リスク意識を持ちながら行動できる元法務が担うことが一つの解なのではないかと考えています。

 もう一つは、ありがちですが、コンサルへの転職です。門戸が広い訳ではないですが、論理的に問題解決を図るという点で法務と親和性があります。魅力的な転向先ではないかと思います。
 (私もコンサルの方と1年近く一緒に仕事をした経験に基づいて書いているのですが、実際にコンサルになったことは無いので、「いや、そんなことはない」というご意見があれば、是非ご教示下さい。)

もちろん相互のリスペクトは忘れずに

 以上、私のキャリア相談的エントリでした(笑)。
 今回はテーマとしても「有資格>無資格」といったイメージで書いたように見えたかもしれません。
しかし、少なくとも企業で法務として務める上では、どちらの方でもミッションを達成するために一つの方向へ進まなくてはいけないことは変わりません。相互にリスペクトしながら、時には批判しながら(?)、進歩的に取り組めるのが最良であることは言うまでもありません。

私もこれからのキャリアを精一杯考えようと思います。

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