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"ソニックのキャラ崩壊がひどい"は本当なのか? ~ソニック・ザ・ヘッジホッグ30年の歴史~

※この記事は2021年12月にpixivに投稿した文章を移植してきたものです。

・はじめに

ソニック界隈の人も、そうでない人も、できるだけ多くの人に読んで、拡散して欲しい。
偏った歴史認識から一部のソニックシリーズや関わるスタッフが馬鹿にされる空気を少しでも払拭したい。
そういう文章です。

ソニックに興味を持ったり、そうでなくてもある程度日本ネット上のゲーマーコミュニティを見ていると、以下のようなことを嘆いているソニックファンを目にしたことがある人は少なくないと思います。
曰く、

「ソニックはもうずっとまともなゲームが出ていない」
「クソ脚本家によってキャラクターが壊されてしまった」
「『ソニックアドベンチャー』シリーズ時代のクールだった彼を返して欲しい」
「純日本産ソニック以外はキャラ崩壊が激しくて一切期待できない」

この記事は、これらの認識の多くが無知からくる偏ったものであるということを少しでも知ってもらうためのものです。
はじめに断っておきますが、「嫌いなものを、無理に好きになる必要はありません」。ただし、「批判するなら、正しくしてください」がこの記事の趣旨となります。

『そうは言っても実際にカラーズ以降のゲーム全然キャラ違うじゃねぇか』
と思った人にこそ、この文章を向けて書いています。どうかそのまま読み進めてください。

結論を要約すれば、
「ソニックのキャラクターは、"アドベンチャー"で初めて固まったものではない」
「そもそもソニック・ザ・ヘッジホッグは、ゲーム以外も含めたメディアミックス展開で世界的人気を築き上げたキャラクターである」
「日本で公式展開されたものは、彼の広く深い歴史の内のほんの極一部でしかない」
「今の日本ソニックファンダムの空気は、ネット黎明期から正しい新陳代謝が起こらずに引きずられている旧いものである」
「日本製ソニックだけが"本物"、公式はソニックを"わかってない"という態度は、明確に間違ったものである」

と言った所でしょうか。

・90年代の展開

ここからは、歴史のお勉強です。

ソニック・ザ・ヘッジホッグの誕生は1991年。任天堂のマリオに対抗すべくセガの命運を背負って生み出された彼ですが、そもそもなぜ任天堂に対抗する必要があったのか?
それは言うまでもなく、特に日本国内で任天堂のゲーム機が圧倒的なシェアを誇っていたからですね。
セガは1988年にすでにメガドライブを発売していましたが、そこに割り込むことができていませんでした。なぜか?

これはネット歴の長いゲームオタクなら知っている人も多い話ですが、
セガはキラーソフトの一つとして、既にアーケードで人気を博していた『テトリス』の移植版を1989年にメガドライブとして発売する予定でした。
ところが版権に関するセガ側の不手際があり、そちらは発売中止。代わりに任天堂がゲームボーイで出したテトリスが爆発的ヒットを起こします。
詳細は『任天堂 セガ テトリス』あたりでググってもらえばすぐ出てくるので省きますが、
見方によっては横から美味しいところだけを掻っ攫われてしまったとも言えるこの件は、
任天堂・セガ・ソニーによる長いゲームハード三つ巴時代、特に任天堂とセガの間に深い溝を感じさせるきっかけになっていました(実際2000年頃まで、セガハードを好むオタク側にも任天堂に対してよくない感情を持っている人は多かった)。

ともあれ、そうしてメガドライブの看板を背負って生まれたソニックは、しかし国内では既に任天堂ソフト以外もDQ・FFといった国民的ブランドを抱えていたスーパーファミコンには敵わず。
ただし海外の方ではスマッシュヒットを生み、名実ともに歴史に残る存在となったのは、多くの人がうっすら知っていることと思います。
ちなみに今は当たり前のように"ソニックバースデー"として扱われている6/23という日付も、国内ではなく海外版発売日。
日本でのメガドライブ版発売は約一ヶ月遅れ、その後のセガ・マスターシステム版なんかも含め、ソニックシリーズは海外先導の展開が当たり前になっていきます。

人気のまま、翌1992年には続けて『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』が発売。おなじみのテイルスが登場し、海外人気は高まり続けます。
その勢いのまま、ゲーム3作目1993年5月にはイギリスのFleetway社、7月にはアメリカのArchie社によりそれぞれ漫画シリーズが出版され始めます。
特に後者のArchieソニックはゲームとは全然違う世界観ながらも大きな人気を博し、「世界で最も長く続いたゲーム原作のコミックシリーズ」としてギネスブックにも載っています。
更にそのわずか2ヶ月後、1993年9月にはそのArchieソニックを下敷きにしたTVアニメシリーズが二本同時に放送され始めます。
月曜~金曜までの夕方放送のコミカルなテイストの作品『Adventures of sonic the hedgehog(通称aosth)』、土曜朝の漫画版キャラクター等を継承し、シリアスな冒険譚を描いた『Sonic the Hedgehog(通称satam)』を合わせて
当時のアメリカの子供は週6/7テレビでソニックを目にしていたと聞いたら、その存在がいかに国民的であったか、嫌でもわかると思います。
ゲームの方でも『ソニックCD』『ソニックスピンボール』『Drロボトニックのミーンビーンマシーン("ぷよぷよ"のキャラクターがアニメ版ソニックに置き換えられたもの)』等次々に新作が発売され、
1993年時点で既にアメリカはじめ英語圏でのソニックは、日本で例えられるキャラクターがちょっと思いつかないぐらいには『誰でも知っている』『どこでも見かける』存在でした。(比喩でもなんでもなく、その人気はドラえもんやディズニーに匹敵・凌駕すると言ってもいいレベルです)

つい先日(2021年11月末)に話題になった、アメリカでのMacy's Parade.
こちらへのソニックの初登場も、アニメ放送開始と同時期の1993年9月です。
ソニックの生みの親である中裕司さんも当時招待されたことに触れたり(https://twitter.com/nakayuji/status/1464065091515469826?s=20)、
ソニックの楽曲を作ったドリカムの中村正人さんも「メイシーズのバルーンパレードに出ると言う事は最高の名誉」であると述べています(https://twitter.com/DCT_MASATO/status/1464066199503847432?s=20)

そこから半年弱、1994年2月にはソニック3のプロモーションを兼ね、マクドナルドのハッピーセット(現地での呼称はHappy Meal)のおもちゃとしても登場します。
こちらは一年以上遅れて日本でも展開されました。(安全性の問題があったテイルスが居なかったり、ゲーム版準拠のデザインになったりして)
当時親にせがんでこれのソニックとナックルズもらいにいったので、個人的にもよく覚えています。

一方、ここからはざっくりと日本国内でのソニックの歴史です。
ゲームの展開こそ日本未発売のシリーズはそう多くありませんが、前述の様々なメディアミックスは(インターネットも普及していない)当時の日本から触れるのは容易ではなく。
アニメや漫画が世界中で人気を博していることなどほぼ知られないまま、日本のソニックファンはメガドライブからセガサターンの時代に移って『次世代機』でのソニックが出るのを心待ちにしていたわけです。
(OVAや各種アーケードゲーム等、国内のみのソニックの展開もあるにはありましたが、英語圏ほど大人気キャラクターとはならなかったのは周知の通り)

(2012/12/11追記:学年誌ソニックについて)
 国内でのメディアミックスは、当時からあるにはありました。
アメコミより早く1992年から、雑誌「小学○年生」及びコロコロ系列で小説や漫画と雑誌ごとに異なる形態で連載したもの。
こちらは主人公はソニック本人ですらない(ソニックを、いわゆる『変身ヒーローの変身後の姿』のように扱う)という独自の世界観ですが、
エミー等一部のキャラクターはこちらが初出でゲームに逆輸入されたものです。
掲載誌や形態・作者までバラバラで色々難しかったのか現在まで単行本化はされておらず、連載自体も約1年半で終わってしまいました。
ちょうどアメコミの連載が始まった時期とも重なり、セガとしてもそちらでの展開を海外メインにする判断があったのでしょう。
復刊ドットコムでこちらの書籍化を望む署名を見つけたので、興味ある方はぜひ→[[jumpuri:https://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=69323 > https://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=69323]]
(-追記終わり)

余談ですが、当時のセガサターンは決して"負けハード"ではありませんでした。
まだまだ家庭用ゲーム機の性能は低く、ゲームセンターのものには到底匹敵しない中、
ゲーセンで人気を博し、文字通り社会現象を巻き起こしていた『ストリートファイター』『キングオブファイターズ』そして『バーチャファイター』等の格闘ゲームがほぼ完璧に移植されたサターンは、ゲーマー層にとって特に評価が高い存在でした。
特にマルチプラットフォームタイトルが多かったプレイステーションには、映像・音質共に明確にサターンの方がまともなタイトルが多かったため、「ちゃんとゲームしたいならこっち」みたいな空気が強かったです。

そんな中、ペパルーチョに首を傾げたり、NiGHTSを楽しんだりしながら、1996年末(セガサターンが発売して、既に3年目)に発売した通称『クリスマスナイツ』。
本編は通常の『NiGHTS』のごく一部ステージが遊べるだけの体験版のようなソフトですが、
その中のおまけモードが3Dポリゴンソニックのゲームデビュー作となります。
3D空間を軽快に駆け回るツンツンしたソニックの姿(と、跳ね回るエッグマン)。所詮おまけ程度のボリュームでも、当時のソニックファンからしたらこれは感涙モノでした。
そして、このソニックが主人公の正に次世代なソニックのゲームがサターンで出るに違いない、という期待を膨らませていたのは決して筆者だけではないでしょう。
……この時期、実は裏では海外でメガドライブ向けに『ソニック3Dブラスト』が発売されていたりします。

(2021/12/10追記:ファイターズメガミックスについて)
 当時、実はソニックファンが肩透かしを食らったゲームが一つありました。
その名は96年12月発売の『ファイターズメガミックス』。
当時ゲームセンターで大人気だったセガの『バーチャファイター(VF)』『ファイティングバイパーズ(FV)』という二大3D格闘ゲームのクロスオーバーという結構なビッグタイトルでした。
(特に『バーチャファイター』は当時本当に社会現象レベルで流行っていたゲームです)
96年9月にカプコンの『X-MEN VS ストリートファイター』というこちらは2Dのクロスオーバー格闘ゲーム
がゲームセンターで稼働し、大きな話題になっていた時期でもあります。
このファイターズメガミックスは前述の2タイトルのメインキャラクターの他、いろんなセガキャラクターが隠しキャラとして登場していたんです。実は定期的に出ているセガオールスターゲーの走りとも言えます。
特にレースゲーム『デイトナUSA』の車が直立して戦うという絵面の強烈さは語り草で、ネットで画像を見かけたことがある人もいるかも知れません。
で、そんな参戦タイトルの内の一つにこれまたアーケードで稼働していた『ソニック・ザ・ファイターズ』があったわけです。
最近の機種でも配信されてたり『ロストジャッジメント』内に収録されてたりでこのタイトル自体はソニックファンなら割と知っていると思いますが、ともあれ。
スマブラと同様各タイトルからの参戦キャラは基本的に主人公格や代表キャラクターだったのですが、
同作からの参戦キャラはバーク・ザ・ポーラーベアーとビーン・ザ・ダイナマイト。
決して二人が悪いわけではないのですが、ソニックやテイルスを差し置いて、なぜ???というチョイスでした。
というか、この二人が出てきたときはソニック達もいるに違いない!とワクワクしたんですよ。
ところがゲームを進めてキャラクターセレクト画面が埋まっても、低頭身キャラはこの二人と『バーチャファイターキッズ』のアキラとサラのみ……
バークとビーンはファイターズが初登場だったので、その顔見せという意味があったのかなあとも思いますが……ソニックが出ていれば、格ゲー勢にも印象深かっただろうになあ…と今でも思ってしまいます。
(-追記終わり)

その半年後の1997年6月、サターンで待望の据え置きソニック新作『ソニックジャム』が発売されました。
メインモードこそメガドライブで発売された過去シリーズのコレクションですが、
こちらでもおまけとして3D空間をソニックで歩き回るモードがあったり(3Dテイルスもお目見えしました)、その中で様々な国内外のソニックに関する画像・映像が収録されたミュージアムがあったりと、
これはこれでファンとしては非常に嬉しいものでした。筆者はマジでこれを一生遊んでました。
様々なゲームの紹介の他、ソニックCDのオープニング・前述のMacy's Paradeの様子なんかも収録されていた記憶があり、
こちらは今となっても非常に貴重な資料だと思われます。

ですが、ここでまた余談として、ハード争いの顛末を。
少しさかのぼって1997年1月に発売された『ファイナルファンタジー7』。
既に国民的JRPGタイトルであったFFの新作が他とは一線を画する映像美を携えて登場したのが大きな契機となり、
世間の"ゲーム機と言えば"はどんどんPSに染まっていきます。
セガは『グランディア』など名作RPGを生みますが、それでもPSとSSの差は決定的なものになりました。
これは当時を生きていた人ならみんな肌で感じていたことだと思います。

ともあれ、それでも確かに登場したソニックジャム。
に続いて、12月には『ソニックR』が発売します。
本編アクションではなく、まさかのレースゲームタイトル。
当時既にこれまた国民的タイトルであった『マリオカート』を意識したのもきっとあったのでしょう。
ただし『ソニックドリフト』とは違い自分の足で走るという"ソニックらしさ"を意識したこのゲームは、これはこれで確実に悪いものではありませんでした。
ソニックテイルス以外の多くのキャラも正式に3D化され(特に旧デザインのエミーのモデルが登場した希少なタイトルでもある)、アクション新作への期待はますます高まるばかり。

・『アドベンチャー』時代へ

……だったのですが、セガサターンの時代はここで終わってしまいます。
サターン用ソニックは開発されてはいたのが諸々の事情で開発中止になったという話で。
1998年上半期、ドリームキャストの発表。11月に発売したものの、本体の深刻な供給不足。
一ヶ月後に発売された待望のソニック新作『ソニックアドベンチャー』も、評価こそ高いものの、ぶっちゃけ相当気合の入ったゲーマーしか持っていないハードとソフトでした。
サターンと同様格闘ゲームの高い移植度に加えてそのネット対戦まで実現した同ハードは特に"オタク"層の高い支持を得、
またオンラインをメインに据えたPSO等のタイトルなんかもあり、間違いなくいいハードではあったのですが、
当時まだ一般的ではなかったDVD再生機器としての機能を兼ねたPS2の訴求力はとんでもなく、もはやその差は歴然。

『マリオパーティ』意識だろう2000年発売『ソニックシャッフル』を経て、
今なお人気の高い『ソニックアドベンチャー2』が2001年6月に発売します。
二日間限定発売のバースデーパックなんかも発売され、気合の入ったソフトだったのは間違いありません。

……が、これが直接きっかけで日本でのソニック人気が爆発したかといえば、それは単純に肯定できるものではありません。
むしろ同作は、わずか半年後にゲームキューブに『ソニックアドベンチャー2バトル』として登場します。
これの意味する所は非常に大きく、

まず、『セガは当時既に自社ハードだけでの展開に限界を感じていた』という証左であること。
ソニアド2発売が6/23、そこから同作の反応をフィードバック・分析するのに数ヶ月かかったとして、
そこからGCへの移植の企画が立ち、任天堂との交渉と開発を済ませるなんていうスケジュールはとても現実的ではないでしょう。
……当時のセガがそういう無茶を絶対やらないとは言い切れないのですが、ソニアド2バトルと同日発売の『ソニックアドバンス』の存在を考えても、
ソニアド2発売時には既に他社ハードへのソニックの展開を計画していたと見て間違いないと思います。(note移植時追記:ソニックアドベンチャー2発売前にすでにセガのハード事業撤退と任天堂ハードへのソニックシリーズ展開が公式にアナウンスされていたことを確認しました。)

そしてそれが、『任天堂ハードへのソニックの登場』という歴史的な事実であったということ。
前述のテトリスの件があって任天堂とセガは特に反目し合う中だと見られていた中、
看板キャラクターであるソニックのメインタイトルが任天堂ハードで出る(それも2機・2タイトル同時に!)というのは、本当に衝撃的なニュースでした。
また、当時既にスマブラ等数多くの自社タイトルで特に若年層に人気だった任天堂ハードで発売したことは、
間違いなくソニックの国内知名度と人気を飛躍的に高めました。
それまでは『ゲーム好きであれば名前だけは知っている』という存在だったソニックが、『割と友達の誰かしらが持ってる』ゲームになったのは、"DCでのソニアド発売ではなく"間違いなくここです。
当時子供だった人なら、その空気の変化を感じた人は多いはずです。
同時にコロコロコミックでのコミカライズがスタートしたことも、特に国内若年層に向けたアピールであることが伺えるでしょう。

ドリームキャスト時代から、セガは公式サイトやユーザー同士の交流・今で言うDLCなど、DCのネットワーク機能を活かしたサービスを展開していました。
GCはデフォルトでネット対応ではなかったため直接のアクセスはできませんでしたが、
ユーザー同士のコミュニティはPCからアクセスすることができ、非常に活気がありました。
当時はまだまだ『どこの家庭でもインターネットに接続できる』という状況ではなかったですが、それでも公式ソニックコミュニティの年齢層が一気に下がったというのは、当時の住民からよく聞いた話です。
それぐらい、任天堂ハードへの展開とコロコロコミックでの連載開始は、それまでのソニックファンとは違う層へ向けたものだったということです。
そしてその層こそが今に続く日本ソニックファンのボリューム層であることも疑いようのない事実でしょう。

『エキスパートBBS』ではスコアアタックやタイムアタックを競っていたり、
『チャオBBS』では自作二次創作小説を投稿する『週刊チャオ』という企画が存在したり……
SNSどころか個人サイトすら持つのが容易ではなかった時代から、セガとソニックファンには、ネット上でのコミュニティが存在したわけです。

続けて2002年には『ソニックメガコレクション』で再びメガドライブ時代のソニックにふれる機会を作ったり、同日発売の『ソニックアドバンス2』で新作2Dソニックの制作も続けたり。おそらくこれは一定以上の成果を上げていました。
そしてその半年後、2003年4月には『ソニックX』が放映開始されます。
国内での本格的なメディアミックス展開はこれがほぼ初と言っていいでしょう。
評価は悪くなかったと思いますが(アニメ名義のグッズなんかの展開も色々ありました)、
ソニックファンなら知っての通り、国内放映は一期のみ。二期は海外のみでの放送でした。
また、ゲームの展開こそ色々と続いていても『ソニックヒーローズ』の時期に再び海外マクドナルドのハッピーセットに登場したおまけは、
(LCDゲームが6種類というとんでもない気合の入りようだったのにも関わらず、)終ぞ日本には輸入されることもありませんでした。
国内でソニックが目に見えて盛り上がった時期ですら、です。
これもまた、日本と世界での温度差を物語る事実です。

(2021/12/10追記:スマブラについて)
 ソニックは、ゲームキューブのスマブラDX時点で世界中から参戦を望まれていたキャラクターだと明かされています。
ただ任天堂とセガの交渉が間に合わず、実際の参戦はXになったという話。
これは国内でも任天堂ハード進出からイケイケムードだったから頷ける……と一見思いますが、
実はスマブラDXの発売はソニックアドベンチャー2バトルより前。
任天堂ハードで本人のゲームが出てすらいない時代から、世界ではそれだけ"マリオに並び立つキャラクター"だという認識が強かったという話。
日本国内で当時こんなことを言う人は、本当にごく一部の酔狂な人間だけだったと思われます。
またソニックの参戦発表時の衝撃も、それはそれは歴史に残るものでした。
当時仲良かった友達がたまたまMGSのファンだったのもあって、二人して発狂しそうなほど盛り上がったのをよく覚えています。
(-追記終わり)

・Wii以降


その後はWii時代にスマブラへの出演やマリオとのW看板によるオリンピックシリーズの始動等を含め、
キャラクターとしての知名度は間違いなく高まり続ける中、
素直なハイスピードアクションが出ず、本編ゲームの評判が芳しくない時期が続きます。
ソニアド~絵本シリーズ(1998~2009年頃まで)の約10年間は、その中で濃くなり続けた日本ファンが持ち上げるソニックのキャラクター描写があった時期です。

2010年頃からはゲームとしてのメインシリーズのリリース間隔も大きくなり、
「そもそもゲームが出ない」「出てもソニックのキャラクターが改悪されている」「ゲームの出来自体も良くない」というファンの不満の声がどんどん大きくなっていきます。(テニスやレースなど、セガオールスターシリーズが国内で全然出なかったのも大きい)
(2021/12/11追記:2010年にはDS版ソニックジャムとも言える、『Sonic Classics Collection』というタイトルが海外で出ていたりします。メガドラ時代のソニックに気軽に触れやすく、またそれに需要があると判断されていたという点は国内外の空気の大きな違いと言えるでしょう)
それはちょうどネットユーザーのコミュニティがオープンになっていく時期とも重なり、
前述の通り早くから存在したソニックファンのつながりはそのままSNSへと持ち込まれ、
Twitterがまだまだ一般的でないころからソニクラ(ソニッククラスタ)という概念がありました。
(当時を知る一人としていいますが、明らかに他ジャンルより"我々はひとつのグループに属する仲間である"という意識が強い集団でした。そしてそれは今にも引き継がれています)
今のTwitterはかなり開けた場であり、個人サイトやブログ・匿名掲示板時代とは個人の発言の影響力も違っています。
そして、今のソニック界隈は少なからず後者の空気を引きずってしまっている部分があります。

以前見かけたネット上のソニックコミュニティを分析した記事には『どこもかしこもアンチスレ化している』という記述があり、
筆者はそれに大きく膝を打ちました。
アド2を始めとするごく一部のシリーズが神格化され、他のシリーズはいくらでもこけにしていいという空気。
例えばヒーローズ等、それ以外のシリーズに肯定的な発言をすればすぐに『あんなもんのどこがいいんだよw』という体で噛み付く人が当たり前に存在し、それが特に窘められもしない界隈(実際複数目にした事例です)
それが2021年ソニック界隈の現状です。
30周年記念に行われた配信でも『ソニックカラーズ』のリマスター発表やインタビュー内の『ヒーロー』という単語に脊髄反射で噛み付いたり、それらがバズって「このお通夜ムードが懐かしいわw」なんて発言が見られたり。
とにかく公式の発言は揚げ足を取って、ボロクソに否定してなんぼだという捻くれた態度が国内ソニックファンダムのメインストリームになっています。
前述の通りソニック界隈はTwitter黎明期からいる人も多いので、それらの人に限って特に多くのフォロワーを抱えていたりします。
アンチスレ的な空気がネット中を支配していて、そこに馴染めない意見を持つ人は極少数の身内との交流で完結するしか無い界隈。

(カラーズがリマスター対象に選ばれたのは唯一現行機でプレイできないメインシリーズタイトルだったからですし、"HERO"という単語も滅私奉公自己犠牲の救世主というニュアンスで使われたものでは明らかにありませんでした)

(2021/12/11追記:公式のネットの使い方について)
 ここまで書いたように(実際のところそれ以前にも長い歴史があるのですが流石に割愛)、ソニック・及びセガの公式サイドはインターネットという文化をいち早く取り入れた存在でした。
そしてその姿勢は現代にも続くものであり、TwitterだけでなくInstagramや公式Tiktokもオープンし、
またそれぞれでいわゆるプロではないインフルエンサーとも積極的にコラボしたりしているのは、ファンであれば目にしていることと思います。
特に今年は大々的にVtuberの方々とのいろんな企画を行ったり、ソニックは時流への乗り方がかなり精力的なコンテンツです。
ソニック達の声優によるTwitter Takeoverという企画は今まではあくまで海外で行われていたものでしたが今回は国内でのアナウンスもあり、
またつい先日映画ソニックの海外公式がDiscordサーバーをオープンし、中にはコスプレ写真やファンアートを貼るチャンネルがあったりなど、公式側は各種SNSを活かしてどんどんファン層を広げようとしています。
極端な話、ファン側も(特に我々旧いオタクは)意識してネットの使い方をアップデートしないと公式に置いていかれるという危機感を持つべきではないか?と感じています。
(-追記終わり)

(2021/12/11追記:"クソゲー"いじりブーム・ゲームカタログについて)
 2000年代の初期ぐらいまでのネットでは、容量や技術等の問題もあり"テキスト系サイト"という存在が割とメジャーでした。
文字通り内容は様々ながら面白い文章で人を惹き付ける、ある意味今で言うアルファツイッタラーの先駆け的な存在ですが
その中の流行りの一つにクソゲーいじりブームという「いかにゲームを面白おかしくこき下ろして閲覧数を稼ぐか」という質の悪いものが存在しました。
どんなコンテンツにでもある話ですが、最初はセンスある人がやって人気を博した結果、とにかく悪い点を針小棒大に論ったり口汚く罵倒すればいいんだろうみたいな人がどんどん参入し…今見ればクソゲーという程ではないゲームも少なからずその標的になっていました。
 現在ソニックシリーズに限らずゲーム評価の指標のひとつとして挙げられがちな『ゲームカタログ』というwikiは、その前身の一つに『クソゲーまとめwiki』を持つ、モロにその文化を色濃く継承しているサイトです。
同サイトの記事は一見大人数による総意が集まっているような体をしていても、個々の記事は結局の所熱心に編集する個人が一人いればその主観に染まってしまいます。
逆に編集合戦が起こるような話題作は、結局多数決と匿名議論の上手さで内容が決まってしまうわけで、当然記載されている評価とは別の感想を持っている人もそれだけ多いということ。
また、そもそもわざわざそういうサイトを編集しようという原動力もネガティブな人のネガティブな感情であることが多いのはなんとなく想像できると思います。
なので、あのサイトの評価を絶対的なものだとは思わないほうがいいです。
使えるキャラクターやゲームモードの数など客観的なデータ以外は、"あくまでも記事編集者個人の意見である"という視点を忘れないでください。
特にある程度以上古くて評価の低いゲームを、カタログを真に受けてプレイもせずにクソなんだろうと断じるのは、とてもまともとは言い難い態度です。
反対にゲームカタログでの評価を「ここでもこんな評価されてるぞ」と振りかざす側の人達も、到底ろくなものではないです。
全く参考にならないわけではないですが、人の感想と自分の抱くものは違って当たり前だと、適度な距離感を保った上で読むことをおすすめします。
(-追記終わり)

・Ken Pontacという存在


で、長々と国内外のソニックファンダムの歴史を語ってきましたが、ここからがようやく本題です。
界隈の中で特に根強いのが、Ken Pontac蔑称ケンポンという脚本家の描くキャラクター像へのバッシング。
2010年以降『カラーズ』『ロストワールド』を代表とする彼の担当したシリーズでのソニックは、
軽快なジョークや不真面目な態度に加えてしばしばヘマをしたり、確かにその前の10年とは異なっています。
アドベンチャーから描かれていた、クールでちょっと気障な日本ソニック像からは明確に外れたそれ。
テイルス等他キャラの描写にも苦言はよく見ますが、やはり集中的にボロクソに言われている部分は主にソニックに関するもの。
ですが、日本ファンの言う通りこれは『ソニックというキャラクターを理解せず、ぶち壊している』のでしょうか?
答えはNOです。

まず最初に述べた通り、「ソニックのキャラクターは、"アドベンチャー"で初めて固まったものではない」んです。
前述の通り、むしろそれ以前93年からずっと続いていたアニメと漫画で既に、当然のごとくソニックは動いて喋って、人格を持っていました。
特にArchieコミックはセリフの言葉遊びがすごく、ジョークの含まれていないコマがないレベルで洒落っ気に溢れています。
そこから派生したaosthなんかも、ソニックはエッグマンの配下(メインはスクラッチとグラウンダー、ある意味ではオーボットとキューボットの遠い祖先)の罠にしょっちゅう引っかかったりしています。
いかにもアメリカンでコメディチックなソニックは2010年代に急に降って湧いたものではなく、むしろアドベンチャーよりずっと早くから英語圏で親しまれていたキャラクターなんです。
ハードの性能的にもアクションゲームに重厚なストーリーが描ける時代ではなかった当時、英語圏で広く共有されていたソニック像はむしろこれなんです。

また『ロストワールド』のストーリーは、わかりやすくソニックが『失敗を経て教訓を得、成長する』物語です。
一人で突っ走った結果テイルスをもピンチに陥らせたソニックが、EDではナックルズの皮肉も受け流して「それよりのんびりしようぜ」で締める。
日本産脚本でもスリルとスピード狂に描かれがちな彼の、ある意味ではとても"らしくない"この言葉はとても象徴的です。
プレイしたのであれば、ざっくり言えば『焦らず周りを見て、話を聞き、時には歩調を合わせよう』のようなメッセージ性を持った物語であることはキャッチした人が多いと思います。
で、ここでまたアニメの話に戻るのですが、aosthには『SONIC SEZ』というコーナーがあります。
各エピソードの終わった後、ソニックが画面の前の子供達に(主にテイルスの失敗例と共に)ちょっとした"いい話"をしてくれる、軽い教育番組的なショートショートなのですが、
そこで扱う内容がまさにこういったものなんです。曰く、「夜は早く寝よう」であったり、「独り占めはよくないぞ」であったり、「子供でも心地良くない触られ方をした時はNOと言っていい」であったり……
1993年代半ば時点でソニック・ザ・ヘッジホッグというのは、そういう"コミカルで子供たちに親しみやすくも教訓を与えてくれるキャラクター"だったわけです。日本以外では。
aosthは3年以上というロングランを続けた人気作で、キッズ向けカートゥーンとしてはかなり大きな存在です。流石に現地の放映事情まで細かく把握はしていませんが、本放送終了後も再放送は多かったそうです(又聞きですが)
というか海外のネトフリではこれも含めてソニックの旧カートゥーンが今も配信されていますし、DVDコンプリートBOXが出たのは2019年。
近くブルーレイも出るという噂があったり、決してこのソニックは"黒歴史化した過去のマイナースピンオフ"なんかではないんです。(note移植時追記:aosthのブルーレイコンプリートBOXは2022年2月に発売されました)

またKen Pontacは元々それに近い子供向けカートゥーンを手掛けており、
こういったコミカルかつわかりやすく低年齢層向けのメッセージ性を持ったソニックというのは意図して描かれたものであり、
またセガ側が彼を起用した目的も正にそこにあるだろうというのは決して飛躍した発想ではないでしょう。
2021年夏に公開された『ソニックカラーズアルティメット』のWebアニメ『Rise of The Wisps』も、正にこの路線の作品でした。("いじめは許さない""友達に頼ろう")
『ケンポンソニック』は明確に、アドベンチャー以前から存在し、英語圏で親しまれていたソニックの延長線上に居るキャラクターなんです。
決して彼はソニックのことを理解していないわけではない。むしろ多くの日本ファンよりよほど旧いソニックをちゃんと知り、リスペクトしていると言えるでしょう。

(2021/12/10追記:テイルスについて)
 テイルスはArchieやアニメでの改変がソニック以上に激しいキャラクターでした。
ソニック達"Freedom Fighters"にはRotorというメカニック担当の別のキャラクターが居たのもあり、
ただただおバカで、しょっちゅういらんことをして事態を悪化させる、今なら割とヘイトが集まるだろう悪い意味で子供っぽいキャラクター。(個人的にはこれはこれで可愛くて好きです)
年齢も8歳ではなく、aosthでは「ボクまだ4歳半だから文字書けないよ」みたいなセリフがあったりします。
前述の"SONIC SEZ"も、テイルスが"SONIC SAYS"と書こうとしたミススペルがコーナー名になっています。
『カラーズ』で明らかに怪しいレストランで食事をしてお腹を痛めたり、
『ロストワールド』で急に理不尽にも見える嫉妬心を炸裂させる一面は、そういう子供っぽさの形を変えた発露とも見れます。
すぐ調子に乗ってはピンチに陥って助けを求めたり。
そんなテイルスもソニック2発売当時から存在したんですよ。
(-追記終わり)
(note移植時追記:この項目は『アドベンチャー』で独り立ちしたはずのテイルスが『ワールドアドベンチャー』や『フォース』ですぐソニックに頼ったり情けないところを見せるのが許せない!!と極端に悪く言うオタクを度々見かけるため追記したものです)

・好物:チリドッグ


もし「海外スピンオフからの逆輸入なんていらない・許せない」というのなら、チリドッグ好き設定にも同じことを言ってください。
確認できた限りでもソニックの好物がチリドッグであるという描写は1993年のArchieソニックで既に存在したものであり、
また、そもそも初代ソニックから当作においても"エッグマンにロボットに改造されていく動物達を助ける"というソニックの行動原理からすれば(その中にはピッキーという豚のネームドキャラクターすらいるにも関わらず)
豚肉を使った料理を好んで食すというのは、大いに"キャラ崩壊"を嘆くことができる事実であるはずです。
英語圏では初期より存在したこの設定は、ソニアド2バトルで人気が出た頃の日本ネットでは"知る人ぞ知る豆知識"レベルのものであり、
公式で触れることはおろかファンですら知っているのは決して多数派ではありませんでした。
そのわかりやすい証拠としては『ソニックX』で一切触れられていないこと等が挙げられます。
ゲーム本編に"逆輸入"されたのは『ソニックワールドアドベンチャー』以降で、それ以前では『ソニックアドバンス3』の攻略本に記述があるぐらい(らしい)(これも外部ライターによるものである可能性は高い)
今ではファンアートでも公式でも当たり前に描かれてますが、国内においては決して歴史の長い設定ではないんです。
(12年は充分長い?それなら11年やってるケンポンソニックももうとっくに"そういうキャラクター"ですよね)

(それはそれとして、ロスワの"善玉キャラクターの浅慮な行動で事態が悪化するストーリーテリング"自体が好き嫌い別れる展開なのはわかります。
 また、フォースに関しては起こっている事実に対して演出や描き方が粗すぎると個人的に感じます。
 ぶっちゃけ英語圏でもKen Pontacに対するバッシングは見かけますが、個別のキャラクター像どうこうよりシーンごとの繋がりの適当さといったストーリー自体への批判が多い)

もう一つ別の問題として、とにかく"ケンポン"を仮想敵として便利に叩く空気がエスカレートしすぎだと言う点もあります。
例えばカラーズの「敵を倒す拳法を教えようか? 正拳二回でアチョーってな!」のシーン。
あれを以てケンポンケンポン言っている人、英語版のそのシーン見ましたか?
詳しくは割愛しますが、英語のそのシーンで行われている言葉遊びは古くはArchie、新しいものではソニックトゥーンなんかでも極当たり前に使われているパターンのものです。
(そもそもソニック独自ではなく、お調子者キャラクターが普通に使う範疇)
その他のシーンにおいても、英語版のセリフ回しは軽快なジョークに溢れていて非常に面白いですよ。
ただそれと連動したソニックのジェスチャーが大きすぎてセリフ自体を単純に訳せばいいものではなくなっているのが翻訳班苦労してるんだろうなあと個人的に感じました。
というか内容以前の問題で「日本語版での台詞回し」で「英語版を書いた脚本家」を叩くの、おかしいと思いませんか?
あのシーンは明確に翻訳(=日本側セガ)の問題です。
あれを槍玉に挙げるなら、批判されるべきは日本セガのスタッフです(脚本家の名前、スタッフロールにあります)
間違っても「日本産ソニックこそ至高」という主張の補強に使える材料ではありません。
『ソニックフォース』の脚本に関しても同様です。
メインライターはKen Pontacではなく、かべがみカバーストーリー等を担当した豊田栄太郎氏・及び護矢真氏です。(2012/12/20訂正:豊田栄太郎氏が担当したのはDLCのシャドウストーリーであると公式に明言されました。元々スタッフロールでの表記が曖昧な部分でしたが、日英のファンダムでまことしやかに言及されていた他、English writerの上に表記があるため豊田氏もメインライターであると思い込んでいました。お詫びの上訂正いたします)(2023/1/30更に追記:豊田栄太郎氏はソニックフォース本編でもキャラクター監修・及び日本語での台詞回し等を担当されていたそうです)
(個人的には脚本自体ではなくゲームへの落とし込みが上手くいってないという問題だと思うので、両氏を批判する気はないですが)

(2021/12/11追記:批判する点と、やり方について)
 上に書いた通り、別に自分はKen Pontac脚本も、その作品も別に全肯定するわけではありません。
どんな作品にも多少の欠点があるのは仕方ないことであり、また他の部分はいいからこそ一部が目についたりといったこともあるでしょう。
ただ、今の界隈を覆う空気は「ストーリー運びが気に食わない」と「そこに登場するソニック達が気に食わない」が混同され、そこから更に「作品全体をいくらでも馬鹿にしていい、むしろそうするのがソニックファンとして正しい」という認識になっている人が多い。
批判の矛先についても、間違っても作品自体やキャラクター・ファンに向かうべきではありません。
今の界隈に溢れているのはもはや『批判』というより、いかに嫌いなものをバカにして自分が"わかっている"側のファンかを示すための『罵倒』や『揶揄』でしかないものが多い。
それはたとえやるにしても同好の(同嫌の?)士しかいないとはっきりしている場でやるべきで、それを好きな人の目にも入る場でやるのは普通に下品な行いです。
嫌いな作品を批判するなら、正しい相手に、正しい形で向けてください。
ここ十年の作品が丸々そんな扱いなので、新しく興味を持った人がまず目にするのは"自分が好きになったきっかけの作品に対するネガティブな意見"であるケースがごく当たり前にある。
そして「自分はファンとしては認められないのか」と傷付いて去る。そんなことが起こり続けています。
どうしても好きになれないものがあるのは仕方ありません。
が、「自分が好きではない作品にも、それを好きな人にも、一定の敬意を払う」というのは、今の時代Twitterというそこそこ公共性の高いSNSを使う上でどうか持ってほしい意識だと思います。
ましてや何かのファンを名乗るのであれば。
(-追記終わり)

(2021/12/10追記:各作品世界そのものについて)
 キャラクター以前に、ソニックシリーズに登場する世界観にも連続性はとてもではないがありません。
特に惑星全体を舞台にした『ソニックワールドアドベンチャー』では星全体を飛び回りますが、ステーションスクエアもグリーンヒルもエンジェルアイランドもソレアナも見当たりません。
各国の住民たちもソニアドや新ソニとはまるっきり別の存在です。GUNやシャドウ(お遊び選択肢で名前だけは出るものの)の存在すら怪しい。
『ソニックフォース』でも彼らの住む星をざっと眺めることができますが、そこにはそもそも人間という存在の気配すらありません。
ロストヘックスだって急に湧いてきた存在ですし、ぶっちゃけ作っている側としてもアクションゲームのシリーズとしてそこに必要以上の整合性を求めていないのは明らかでしょう。
特にその出自に深く人間が関わるシャドウなんかは、アド2~シャドゲ以降の世界でどういう存在なのか、パーソナリティ設定すら怪しい部分があります。
古くはカオティクスやエミーの設定一新だって同じことです。
極論としては"ソニック達全員が作品ごとに別世界に住む別人"だと端から思っておいたほうが、よっぽど丸い解釈だと言う話です。
 ちなみにArchieソニックから広がったソニックユニバースでは彼らの住む星の名前は"Mobius"というもので、
そこに住むソニック達独特のケモ度を持つ住民を指す"Mobian"という単語も英語圏ではかなり広く浸透している概念です。
その頃の展開だけでなく最新のソニックフォース、あるいはIDWソニックでもどうやら人間ではなくMobian達だけが住む世界が舞台になっているようですし、
その世界に住むキャラクター達もまた、アド時代と地続きに解釈するのは無理があると言えるでしょう。
(-追記終わり)

・マルチバースという概念

また、アニメと漫画が長年複数展開していたという事実は、具体的なキャラクター像以前に
「ソニックというのは作品ごとに違う面を見せるキャラクターである」という認識の下地にもなっています。
ゲーム・漫画・アニメでずっと活躍し続けていたソニックに、一つの固定化されたキャラクター像を押し付ける意見が日本ほど強くない理由はこれです。
(もっとも、単純にどのソニックにもファンの母数がめちゃくちゃ多いという前提もありますが)
英語圏Twitterでも日本と同じように「2000年代初頭の"本物の"ソニックを返せ」という声は定期的にあがるのですが、
大抵の場合は「単にお前がそのソニックから入って懐古厨してるだけだろ」というツッコミがすぐに付きます。
それは、そもそも英語圏では90年代からずっと色んなソニック像がメディアごとに描かれてきて、それぞれに愛されてきたからという歴史があるからです。
作品ごとの同名キャラクターを無理に同一視せず、それはそれ・これはこれで楽しむ。
これはソニック以外にもアメコミでリブート(世界観リセット)がよく行われる関係もあります。
日本人でもMCU映画とかなんとなく知ってたらスパイダーマン何人居るんだよみたいなややこしい世界なのは分かると思いますが
ソニックも正にそんな感じの存在なんですね。
実写ソニックの扱いもまさにこれで、ゲームのソニックのキャラクターとは違っても端から"そういうもの"でしかない(ただしデザインが単純に悪かったため、そこにはバッシングが起こった)

(2021/12/11追記:映画について)
 映画ソニックに関しては見た目も性格も出自もゲームの彼とはそもそも別物で、同一視することがバカバカしいレベルだと言うのは観ればわかります。
前述の通り(ソニックの活躍の一つの軸でもある)アメコミの映画では本当に当たり前のことなので、「映画世界は映画世界」という受け止め方が海外では一般的です。
それに加えここまで語った通り"ゲーム以外のそれぞれのソニック"という土壌がとっくに出来上がっているため、
初期デザインこそ不満爆発したものの「こんなもんソニックじゃない」という日本の一部ファンがぼやいているような内容は本当に見ないです。
そして別人であるがゆえ、キャスティング(この場合CV)が違っても(各々の好き嫌いはあれど)そこまでの反発は起きない(これは英語版では既に何度かソニックの声が代替わりしていたこともありますが)
日本では金丸淳一氏が担当しないことに不満の声が少なくなかったですが、たとえ金丸氏がやってたとしてもそれはそれでソニックのキャラ解釈で騒ぎになったんだろうな…と思ってしまいます。
実際のところ映画ソニックは原作リスペクトにも溢れ、ファミリームービーとして非常によくできていました。
結果として中川大志さんもあの子供っぽいソニックによく合ったキャスティングだと思います(演技の質も問題ない)
(俳優ではなく声優を使えという意見はわからないでもないんですが(自分自身声オタなので)、
 たとえばディズニー映画の吹き替えって本当に俳優やお笑い芸人でも違和感ないものばかりで、他は絶対字幕で観る派の自分でも信用してたりします。
 ディレクション側がしっかりしていれば、少なくとも映画における俳優と声優の演技って限りなく差は埋まるものだと思うんですよね。
 何より内容とあわせてせっかく新規にも観やすい作品なんだから、話題性のある人を起用してそのきっかけにするというのはソニックというコンテンツの戦略上決して間違いではないと思います)
ただ日本の一部ファンが"別物のソニック"を楽しめないだけならともかく、「ゲームと違うから」という理由で悪し様に言うのはとても悲しく、ズレた意見であり、何より新規流入を妨げ、界隈とジャンルの首をかなり直接的に締める行いだと思います。
(ただし初期デザインと、それをめぐる当時の公式の挑発的な態度とかは批判されても仕方ないかなとは思う)
(-追記終わり)

(2021/12/11追記:『ソニックトゥーン』に関しても似たことです。ゲームと違う彼らを日本ファンの多くが受け入れなかった結果、二期は国内展開されなかった。国外を見れば"マッスルズ"いじりこそ多少あるものの、作品自体は大きくヒットしています)

ただ、日本では長年"ゲーム以外の展開がほぼなかった"ため、
キャラクター性が明確に描かれたソニアドこそが彼の『原点』であり、そこから外れた彼のキャラクターは『紛い物』である、というような誤解がまかり通ってしまっているわけです。
サターンでそもそもソニックのゲームがほぼ出なかった時期も、2003~2010頃の不満がゲーム性に向いていた時期も、それ以前も以降も、日本ファンはゲームでのソニックしか見ることが出来なかった。
だからそこの連続性が途切れることに違和感を持つのは、当時としては仕方ないと言えるものです。
ですがここまで語ってきたようにソニックがゲームに比重を置ききったキャラクターであるという認識は日本の狭い視点によるもので、
世界同時の展開が増え、そもそも国外での展開の方が遥かに多い歴史が知れ渡っている今、
30年の中の極一時期、極一部で描かれたキャラクター像以外を平然とこき下ろすのは、そろそろ終わりにしませんか。
"アドベンチャー以降の日本産ソニックこそ原点であり唯一絶対の正解である"という認識は、明確に間違いです。
(2021/12/10追記:"近年のソニックを否定している我々こそ正しいファンの姿だ"という態度も、です。このような指摘に対して上から目線で「新参には不快かもね~申し訳ないw」とヘラヘラしているような。)

ファンダムも公式も含め英語圏と日本語圏のネットが極めてシームレスになった現代、国内での展開も少しずつ増えつつある中、国内ファンがいつまでも旧い認識のままでいるのは、
今後の展開を望む上で本当に危うい事態だと思っています。

繰り返しになりますが、嫌いなものを無理して受け入れる必要はありません。
ただし『アドベンチャーのずっと前から、ソニックの人気が爆発したきっかけも、ゲームが不作な時期にそれを支え続けたのも、日本からはほぼ触れることの出来ない英語圏での幅広いメディアミックス展開だった』
という前提は認識してください。
そして、どんなソニックにもそれを愛するファンが居ることも。

あと、IDWソニックにおける豊田栄太郎氏は一般的な単なる監修ではなく"飯塚さんとともに英語版プロット時点からがっつりIDWのスタッフとやりとりしている"と明言している(なぜか日本語版動画ではカットされてますが…)ので、
かべがみカバーストーリーと彼のストーリーテリングを高く評価するファンは安心してまずIDWソニックを買ってください。

(急いで書いたせいで推敲が足りない部分があると思うので、後からちょくちょく追記・編集することがあると思います。)
(明確な間違いや疑問点等あればぜひご指摘お願いします。)

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