見出し画像

『100年トリマー』持続可能なドッグサロンを目指して


1.はじめに

ごあいさつ

山形の片田舎から上京した僕は、ペット業界にどっぷりハマって28年が経ちました。

もともとは動物看護師を目指して…
あ、すでに興味がないですね。

ここはnoteの恩恵をフルに使って、アーカイブに任せたいと思います。

齋藤の黒歴史に興味があるという珍しい方だけお読みください。

そんな僕が長く携わってきたのは、トリミングスクールでの講師業でした。

これからペット業界へと羽ばたくトリマーの卵を育てていたんです。
見事大空を羽ばたく子もいれば、夢半ばにして飛ぶのをやめた子もいました。

今回はそんな始まりと終わりを長年見聞きしてきた僕が、自身でドッグサロンを経営し、仮説と検証を繰り返した結果を共有するお話です。

あくまで僕個人の経験に基づいたことなので、手触り感はあるものの再現性までは保証できません。
販売しといてなんですが、話半分でお読みくださいませ。

「One for Dog」とは何者か

One for Dogはこれから犬を飼う人の相談会をはじめ、子犬のサロンデビューを応援するはじめてトリミング、飼い主さんと一緒に学べるしつけ教室やお手入れ教室など愛犬の成長に寄り添ったドッグライフプランを提供しています。他にも教育機関や公共施設での講演会やドッグイベントなど、より良い愛犬文化の創出に取り組んでいます。

SNSのプロフィールより

先に自分から言っておきますが…
ちょっと何言ってるか分かりません。

そうなんです、そういうお店なんです。

この場を宣伝に使いたくはないのですが、とはいえこのままだと何屋か分からないので、ちょっとだけ紹介させてください。

■ サービス①「これから犬を飼う人の相談会」

One for Dogの足元にはいつも「教育」があります。
ネグレクトも殺処分もボランティア活動だけでは足りず、根本のリテラシーが不可欠と思っているからです。

しかし、その教育も届けるタイミングによっては手遅れになってしまう…

では、いつか?

林修先生が出てこないうちに先を急ぎますが、それが家族会議の段階だと思っています。
ここからサポートできたなら、相当数の犬たちやその飼い主さんを救うことができるはずです。

次に問題となるのが、どこでやるか?

登場するタイミングを逃した林修先生が出てこないうちに続けますが、本来ならば「ペットショップでやる」が正解です。

とはいえ想像してみると…

「その犬種は初心者向きではないですよ?」

「お子さんに手がかかる今、愛犬を迎える余裕はありますか?」

決して飼うなと言っているわけではない

やはり現実的とは言えません。

そこで、不特定多数が訪れ、世代問わず集客力のある「無印良品」というブランドを使わせてもらうことに成功した結果、前代未聞の犬を飼っていない人に向けたペットサービスを届けることが出来たんです。

■ サービス②「はじめてトリミング」

トリマーであれば誰しもが経験する「咬み犬」。
そこまでいかずとも暴れる犬、嫌がる犬なんてのはトリミング業界への登竜門みたいなものでした。

しかし、その原因の多くが犬ではないことくらい皆、理解できています。
ましてや飼い主さんですらないことも薄々感じているかもしれません。

僕はその答えを「遅すぎたサロンデビュー」としています。

すなわち、社会化期(生後3週〜14週)から多くのトリミング経験を積ませることこそが、アレルギーを引き起こさない予防薬だと思っているからです。

そのためには、ワクチン接種の"完了"が最大の障壁なのですが、様々なリスクヘッジによって容易には突破できずにいます。

そこでOne for Dogでは、[完全予約制+完全貸切]という非効率極まりない打ち手を使って、ワクチン未接種での受け入れを可能にしました。

そして、この打ち手をとった本当の狙いが「新米飼い主さんへの教育」だったんです。

先に挙げたトラウマを引き起こす原因に、飼い主さんたちの無知があります。
トリミングに至っては、お手入れの何たるかなどそもそも分かっていないのです。

そこで家族参観と称し、解説を交えながら無知の知を把握してもらうことにより、その後の教育をしやすくしたわけです。

  • 月に一度はトリミングを経験させてあげましょう

  • 無理なオーダーは愛犬の負担になります

  • 問題行動を学習する前にしつけを学んでおきましょう

  • トリミングに慣れた頃にはお手入れも学んでおきましょう

さらに「これから犬を飼う人の相談会」によっても、飼い主さんの"はじめて"をハックしやすくなりました。
この段階から飼い主さんとの関係性が築けることのメリットは、なにより業界の皆さんが感じていることかと思います。

  • 飛び込み客

  • サロンジプシー

  • トラウマ

ストレスによってトリマーの寿命を削り取るような場面は数え切れません。

愛犬家を正しく育てあげることで、トリマー自身もまた助けられることがあると感じています。

■ サービス③「しつけ教室」

僕がドッグトレーニングを学び始めたのは、かれこれ18年ほど前。

ニューヨークでドッグトレーニングをしていた日本人トレーナーの紹介で、大阪にある警察犬訓練所の所長さんからノウハウを学びました。

師と仰いだその人からの一語一句が僕の活動原点になっているのですが、そんな中でも特に印象深い言葉が胸に残っています。

ある日、こんな質問をしてみたんです。

「なぜトリマーである僕たちに、惜しまずノウハウを教えてくれるんですか?」

飼い主さんへの指導方法まで教えてくれた

当時、トリマーの世界において技術は見て盗むものであり、鍛錬によって磨き上げられたテクニックは鰻屋のタレくらい秘伝なものでした。

自分自身の種明かしともなるノウハウを、しかも別業界の人間にまで教えるわけですから、僕からしても不思議でたまりませんでした。

するとこう言ったんです。

「ドッグトレーナーは明日のために今日があって、明後日のために明日がある。長い時間をかけてコツコツ信頼を獲得していく地道な仕事。でもトリマーは違う。さっき会ったばかりの犬を短時間で、しかも嫌がることでもテクニックでなんとかしてしまう。ドッグトレーナーには考えられない技術だ。」

なんだかすごく嬉しかったのを覚えてる

そういえば講師時代、ドッグトレーナーからトリマーに転身しようと入学してきた人は少なくなかったのですが、正直に言えばあまり得意ではありませんでした。

それはたぶん、考え方が違ったから。

爪切りが嫌ならば、まずは足を触ることから慣れさせるトレーナーに対し、骨格を利用して一瞬で作業をこなすトリマーでは、そもそもの考え方が違うんです。

どちらが良い悪いの話ではなく、考え方が違う。

だからこそ師はトリマーの技術に着目し、もしもこの人たちにドッグトレーニングを教えたらとんでもない逸材が誕生してしまうのではないかと考えたはずです。

しかも、トリマーは飼い主さんとの距離まで近い。

問題行動に発展し、なんならこじれまくってから泣きつかれるトレーナーに対し、パピーの頃から飼い主さんと接する機会が多いトリマーは、動物病院の頻度すら凌ぎます。

この人たちなら早いうちから飼い主さんに、基礎教育を届けられると思ったに違いありません。

そんなわけでの修行時代だったわけですが、ようやく今になって師の言っていることが分かった気がしています。

とはいえ僕は、訓練所や出張トレーナーさん、ひいてはパピーパーティを差し置いてまで、自身のしつけ教室を押し通そうとは思いません。

僕には僕のできるトレーニングがあり、できないこともまたあるからです。

  • 重度の問題行動

  • 飼育環境の改善

  • 犬同士の馴化

これらはOne for Dogのしつけ教室では取り組めないことを飼い主さんにも伝えています。

"それぞれの立場で最善を尽くす"

こうした考え方から、トリミングサロンでもしつけ教室をはじめる役割はあるのだと実感しています。

■ サービス④「お手入れ教室」

このサービスがOne for Dogの核であり、また一定数のトリマーから共感を得られない不遇のサービスでもあります。

「飼い主さんにトリミングなんか教えたら商売あがったりでしょ!?」

もう何年言われ続けているだろうか

これは呪縛のようにつきまとっている業界関係者からの言葉。
いや、飼い主さんから言われることすらあります。

とはいえ、こればっかりはやってみなくちゃ分からないのも事実。
否定されても仕方ありません。

それでもなんだか虫の居所が悪いので、

「2年間の実技を数回のレッスンで巻き返される程度なら、トリマーなんて仕事はなくなってる!」

お手入れ教室の主役はグルーミングです

なんて、酒の席で愚痴ったり。

しかしながら皆、トリマーを続けるために日々苦しめられている現実があることも知っています。

現状のトリミングはレストラン型のサービス。
常にトリマーは完成したサービス(仕上がり)の評価に晒されています。

作業をバックヤードに置いてきたことで、犬たちの負担や作業の大変さなど知る由もない飼い主さんが、トップトリマーのインスタグラムを片手に楽観的なオーダーを要求するのは見慣れた光景。

その結果、自身のやりがいを上回る肉体的・精神的負担により現役生命を削り取られているんです。

一方、お手入れ教室はというと、言わばバーベキュー型のサービスです。
仕上がりがイマイチだとしても、その過程に価値があるので、意外と満足度が高かったりします。

なによりトリミングそのものへの理解が深まることで、無理なオーダーをしなくなったり、理不尽なクレームすら言わなくなったりするんです。

誤解されてしまう前にお伝えしておきたいのですが、僕は「これから犬を飼う人の相談会」によってペットショップをなくしたいわけでもありませんし、「お手入れ教室」でトリマーの仕事を奪いたいわけでもありません。

むしろ、それぞれが好循環になる役割を作りたいと思っています。

子犬には飼い主さんのやる気だけでなく、プロトリマーの技術が欠かせません。
不慣れな子犬を飼い主さんが扱えることなんて不可能に近いからです。

そのため、1才〜2才くらいまではトリマーさんにトリミングのマナーを教えてもらうことを義務付け、パピーからの受け入れは断っています。
トリマーさんに慣れさせてもらってからバトンを受け取りましょうと。

トラウマのある子のリハビリや、飼い主さんとの関係性(信頼関係を築けていない)にも制限を設けています。

こうした試行錯誤を繰り返した結果、お手入れ教室には論理的かつ体系的なカリキュラムが必要だと気付きました。
そのためのシステムはOne for DogのYouTubeにも公開していますので、ご興味がある方は覗いてみてください。

■ サービス⑤「オンラインサロン&イベント」

僕が目指した未来に「トリマーと飼い主さんの分断を無くす」があります。
クレームの中には誤解によるものも多いからです。

  • 作業を秘密にしたがるトリマー

  • 不審がる飼い主さん

この関係がお互いの理解を邪魔していたりします。
であれば僕が矢面に立ち、それぞれの本音をぶちまけてしまおうじゃないかと考えました。

僕のオンラインサロン(オンラインコミュニティとも言う)は、トリマー限定とかお客様限定とかいう縛りはなく、分野も立場もごちゃまぜです。

そこから生まれる何かを期待して…
とまあ、このあたりは後述に語りつくそうと思っているので、ここではこのくらいにしときます。

これらのメニューに結論付くまで、いくつもの失敗を重ねてきました。
そこから得た気付きや反省を元にして、これより書きなぐりたいと思います。

ちょっと長くなりそうなので、愛犬とのかくれんぼが途中という方は、きちんとケリを付けてからお戻りください。

ここから先は

17,534字 / 4画像

¥ 980

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?