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第3話 二人の視線。

いつになく
首は硬くなったまま

黒板の前を通り
最前列の窓側にある
自分の机へと向かっていた。

横目で二人の女子を
詳しく確かめるためだ。


万が一


どちらかと
目が合ったなら
どうなったんだろうか。

どんな言い訳も出来ないほど
おかしな顔つきだったと思う。


それでも...


教室の賑やかな雰囲気を
乱すことなく、

おしゃべりする二人の姿が
横目でも目に入り

前の日の彼女らの涙を
思い出さずに
ホッとしたのを記憶している。



が、その瞬間。


視線を僕に向けようとする
雰囲気を察して、
直ぐに!

進もうとする先にある
自分の席に完全に
意識を向けたのだが

左頬に刺さる
女子の視線を強く感じた。


しまったぁ…
間に合わなかったかぁ!


と思ったものの

既に横目で
その視線の主を確認できる
ポジションは過ぎていたから

最悪の事態は
免れたと思った。


せいぜい彼女が見る景色の一部に
僕の姿が映り込んだか
横顔を見られた程度だ。

が、しかし、
そのまま、刺さる視線は、
自分の席に着いても続いていた。



固まりそうになる
身体に逆らうように

左肩のカバンを
ぎこちなく肩からおろし

机の左側にかけてから
教科書を出そうとするのだが

取り出す左手は
1限目の国語の教科書を
捕らえられない。


今度はわざわざ
左側にかけたカバンに
利き手の右手を突っ込む。


それでも、やけに
二人の女子のスポットが
気になる。

僕の背中のセンサーが
どうしても
二人に向いて離れないのだ。


慌てて教科書を取り出し
ノートと筆箱も
カバンから出しては

教科書の文字を読むのだが
全く頭に入ってこない。


ダメだぁ…。
背中のセンサーが止まらない。


たまらず、右肩45度の
あの華やかな女子たちを越え
右肩75度へと大きく舵を切った...。



( つづく... )

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