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第2話 涙の訳は、...。

その日の翌朝は、
いつもよりも長く、
鏡の前に立っていた。

制服や身なりを
整えていたからではない。

鏡に映る顔を眺めていると
階段の踊り場から上がってくる
あの娘らの涙を思い出したからだ。


二人とも
学校に来るのだろうか?


あれは、やっぱり、
先生に叱られたのだろうか?


あの時の僕には
それぐらいの想像力しかなく

前の日の出来事だというのに
尋常じゃない勢いで流れる二人の涙が
僕の身体を今さら強張らせていた。


もう、涙の訳は、聴けないなぁ…。


と、心の中で呟いては
学生カバンを左肩にかけて
家を後にした。



自転車で
立ちこぎしても
なかなか進まない急坂を

他の生徒の間を
ジグザグに縫うように
早足のまま学校に向かった。


坂を登り切ると
校門が見えて来るのだが

それよも早く
胸が苦しくなってきた。


体育会系だった僕だから
それぐらいの早足で
息が上がるハズもないのに

それが理由たど思ったのは
まだまだ、蒼かったからだ。


それこそ、どちらか二人の
後ろ姿だけでも見えればと、
思うのだが

いっこうに、
それらしきシルエットさえ
見えて来ない。

校庭を抜け、下駄箱に着いても
胸の苦しさは治まるどころか
ますます心臓を追いやっていた。

教室の扉に手をかける頃には
飛び出すんじゃないかと思うほど。


開けた瞬間!
教室の賑やかさよりも先に

二人が向き合って
話す姿が目に入ってきて

緩やかに鼓動は
静まっていった…。



『第3話 二人の視線。』に続く...。

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