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ゼメリンク鉄道

空白の三年半の時間を埋めるように今年度は海外旅行に繰り出す。
嫌で仕方ないけど円安だ物価高だなんて言ってられない。
来年から子供が小学生になるので、自由に使える時間は半年を切ってしまった。
ブログで書きたいことがたくさんある。レイアウトの制作だってしたい。料理もすごく楽しいし。
だけど、今は海外に行くことが何よりも優先だ。

だいぶ期間が空いてしまったが、ブログは旅行の順番通り書いていこうと思う。

シュネーベルクから幹線の駅に戻り、グラーツ行のレイルジェットに乗り換える。今日はチェコのブルーだ。

あぁ、この列車は本当にゼメリンクを越えるんだな。やっと念願のゼメリンクに来ることが出来たよ。
このゼメリンク鉄道は世界遺産に登録されていることもあって、地球の歩き方にも載っている超有名な鉄道。鉄道というか幹線の一部なんだけど。
有名なのが嫌いな私であるのだが、今回の旅行でゼメリンク鉄道に対する思いは半端ではない。

写真だと全然分からないが、night jetとすれ違う

そう、あれは4年前。私と1歳の子供と両親の4人でオーストリアとチェコを巡る旅の時のこと。ウィーンでレンタカーを借りて、ゼメリンクを越えてハルシュタットを観て、リンツで返却するプランを立てた。
いつかアウトバーンを運転してみたい。制限速度のないドイツではないけれど、父親が何年も前からそう口にしていたので海外ドライブにチャレンジしてみた。海外レンタカーはいつかのマレーシア以来。

ウィーン市内を走って郊外に抜けるまでは順調だったのだが、アウトバーンから一般道に入ると大雨が降ってきた。憧れのゼメリンク峠までもう少し。
そんな時、ロータリーの縁石に右前タイヤがぶつかった。慣れていないロータリー、慣れていない右車線。やってしまった。
運転している父親は大丈夫だと言ったが、助手席の下から明らかに変な音がする。車を止めてタイヤを確認すると、やばい、パンクだ。
しかも、人が全然歩いていない田舎道。どうしよう。

沿道に人家がいくつかあるが人の気配が全くない。
ノックしてみるものの返事がない。人が出てきたところで、ドイツ語はハウプトバーンホフとかくらいしか知らない私にどうにかできるのか。
どうしよう。
もうヒッチハイクしかない。何台かは通り過ぎた後、工事関係の車が止まってくれた。

パンクしたタイヤの写真を見せると、状況を察してレンタカー受付でもらった緊急連絡先に電話してくれた。一時間くらいで来てくれるらしい。よかった。ありがとう。
もちろん一時間では来なかった。二時間待った。1歳の子供も退屈してきた。
そして、三時間を過ぎた頃にレッカー車がやってきた。とりあえず、スペアタイヤでも付けてくれるのかな。と思ったら、なんとレッカー車で運ばれることになった。
もうゼメリンク峠どころではない。
まず、街はずれの車の整備工場みたいなところに行った。レッカー車のおじさんが相談していたが、ここには合うタイヤが無いみたいだ。次はそれなりに大きな町のホームセンターみたいな所に行った。だが、そこにも合うタイヤが無いみたい。
私は自動車の知識は全くないのだが、タイヤってそんなに種類があってどうにもならないものなのか?
そのうち、レッカー車のおじさんはあきらめて、私たちのレンタカーをホームセンターの駐車場に放置した。そして、次の故障車があるからと行ってしまった。
いやいや、ここはどこだよ。どうしろっていうんだよ。
私たち家族はその場に立ち尽くしてしまった。1歳の子供もいる。
ゼメリンク鉄道どころか、海外旅行を楽しんでいる場合ですらない。

そのうち、こんなオーストリアの田舎町のホームセンターの駐車場で立ち尽くしている日本人家族はよっぽど異質だったのか、買い物で来ていたおばあちゃんの目にとまった。簡単な英語と翻訳アプリを使って話しかけてくる。そのうち、インドを旅したときのように人がたくさん集まってきた。
そのうち一人の男性が、知人の整備工場に電話をかけてくれた。タイヤの型番?を伝えている。頼む、あってくれ。
あったみたいだ。タイヤ交換50€。もちろんオッケー。
その男性は、手慣れた感じでジャッキアップしてタイヤを取り外した。
タイヤを抱えて私だけその男性の車に乗った。車の中でいろんな話をした。
トルコから移民としてオーストリアに来たこと。きっと、困っている外国人をほっておけなかったのだろう。

タイヤを交換してもらい、駐車場に戻るとレンタカーにタイヤを装着した。大丈夫そうだ。
ありがとう。父親がお金を渡そうとしたが、みんな受け取らなかった。
すごいな。私も困っている人を助けることができるかな。
最初に話しかけてきたおばあちゃんは心配してその日の宿にまで電話してくれた。そして、良い旅をと言って立ち去って行った。あぁ、連絡先聞いておけばよかったな。お礼できないやん。
そのおばあちゃん、私の父親と同じ、ホンダのフィットに乗っていたらしい。この時は必死すぎて私は気がつかなかった。
この話になると私の父も母も、フィットのおばあちゃんと言っている。
私の父も車を買い替えるときはまたフィットかな。

ゆっくり観光したかったゼメリンク鉄道沿線の高速道路を、宿に向かってひた走る。
また絶対に来よう。こんなの悔しすぎる。
そんな念願叶ったゼメリンク鉄道訪問なのだ。

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