小説を書くことー4(A)

Kさん(らしき人)は、私の顔をじろじろ見ていました。なんというか、私という人間ではなく、物体を見るような感じでした。私の顔はごく普通の東洋人の顔です。年を得るにつれて、少し頭の形が変わってきて、頭の上部(額から頭の天辺にかけて)が膨らんできました。40近い息子に「お父さん、どうしたの」と言われて、頭を触られたことがあります。それほど目立ったのは確かですが、俺は病気じゃないだろうか、と思い、インターネットで頭が大きくなる病気というところ調べたら、年寄りになれば、頭が大きくなるのはごく自然なことです、という記事を読んだことがあります。

私はまだショックが続いていたので、Kさんが遠慮なしにじろじろ見ているのをそのまま見ていました。電車が入ってきたので、そのまま電車に乗り込みました。前回と違うのは、私たちは2人席に座り、話を続けたことです。

「すみません、お名前は?」電車に乗ってから、私は幾分気分が落ち着いてきたので、初めて声を出しました。私の声を聴いてKさんは体を少し動かしました。Kさんが少し動揺したのが伝わりました。

自慢じゃないですけど、私の声は非常に良くて、若いころには、アナウンサーになったら、と言われたこともあります。声だけだったら、私はかなりもてていたかもわかりません。

彼女は改めて、私のほうを向きシェンですと言いました。その昔、お互いに同僚として初めて自己紹介したときに中国語の発音をKさんはしたので、なんだかチャーシュウメンみたいな名前だったのを憶えています。その時の話で中国では、大学は日本語専攻、朝から晩まで日本語を話していたということを言ってくれました。日本式にKさんのことを姓で呼んで、Kさんも私を姓で呼んでいました。「澤さん」気持ちを落ち着かせるためか、深呼吸をしながら私の名前を呼びました。

やはり彼女はKさんでした。それも30年前のKさんでした。

彼女はその当時ドイツ人と結婚していたので、クーゲルと名乗っていました。「姓はクーゲルさん、クーゲルさんですよね」私は念を押すようにKさんに話しかけました。

                         ー続くー

筆者はこの物語の部分をーその4Aとしようと思います。このエピソードのあとにーその4Bとして、別のエピソードに入っていきます。それとこれはあくまでドラフトなので、文章のまずさには勘弁願います。

だけど、この物語、長くなりそう。読者の方もどうか飽きずに辛抱強く読み続けていただければ幸いです。






ドイツ生活36年(半生以上)。ドイツの日常生活をお伝えいたします。