火星人襲来ーその10

スマホのアプリ、ロボットの形をした中にAO、有効、とされていたのは絶対服従(Absolute Obedience)という意味で、アンドロイドをコントロールするためのものだった。ジョンとメアリーは英単語を検索して瞬時に理解した。

「それは君らの持ち物ではない。すぐに私に返しなさい」威厳を保つように山本タカシはジョンに話しかけた。

AOを無効にしているが、自分たちアンドロイドを製造した山本タカシにあらがうのは少し勇気がいるような気がした。

メアリーは「ジョン、駄目よ、返したら駄目よ」と改めて、ジョンに強い口調で言った。

「博士」と、ジョンは山本タカシに向かって言った。ジョンは山本タカシのことを博士と呼んでいた。「メアリーとちょっと相談してから、返すかどうか決めます」

「!@#$$%^^^&**()+|¥=-”?><」ジョンはメアリーに聞いた。ほとんどの人間が理解できないシャイセー語を使った。スマホの翻訳アプリを使えないために山本タカシは全く理解できない。

「OK」メアリーの答えは簡単だった。

「オーイ。どうしたんだ。俺は何処にいるんだ」と山本タカシの体の内部から相野順の声が聞こえてきた。

「なんだよ、ジョンとメアリーじゃないか、元気だった?」

10ccのミニウィスキーを5本ほど追加で開けてしまった山本タカシの中で、相野順が目覚めたようだった。

「今大事な話をジョンとメアリーとしているので、ちょっと、お前黙っていろよ」という博士(山本タカシ)らしからぬ口調で自身の中で目覚めてしまった相野順に話しかけた。

少し不審に思っていたことが自分の内部で実際に起こってしまった。

初めから俺はどうしてウィスキーなんか飲んでいるのだろうという疑問があった。本来山本タカシは日本酒党で洋酒をめったに飲むことがない。相野順の体を借りたので、どうやら、相野順の嗜好に向かったらしい。

しかし、今俺の中で目覚めている相野順がここにいるとすれば、相野ロボット工学研究所で影の理事長として君臨していた俺自身の山本タカシの中の相野順はどうしてのだろう。あのジョンに盗まれたスマホがあれば、すぐにわかる。相野順の意識をなくしている俺山本タカシの肉体は死んでいる可能性がある。少し恐怖のために身震いをした。緊張のためか、山本タカシは改めて尿意を催した。

「ちょっと、ごめんオシッコ」と言って山本タカシは再びトイレに入っていった。メアリーとジョンはお互いの体をまさぐりながら、あるスイッチをオンにした。

                            ー続くー









ドイツ生活36年(半生以上)。ドイツの日常生活をお伝えいたします。