小説を書くことー12(A)

会社に来たけれど、とりあえず何をしたらいいのか、わからなくて、私は営業部の部屋でぼんやりしていました。電話がかかり目の前の黒電話を取ったのですが、何を話したらいいのかわかりません。

シエンの声が電話から聞こえてきました。

「おはようございます。すみませんが、秘書室に来てくれませんか」

シエンの秘書室は営業部の部屋より格段に良く、2人の秘書がいるだけです。営業部の6人部屋より広く、もし一人が休めば、格好の密談ができる部屋になります。

考えてみれば、シエンは私の秘書として雇われているので、どちらかと言えば、私の指示で動くのが普通なのですが、なんとなく立場が逆のようになっています。

シエンの部屋に行くと、シエン一人だけで、別の秘書(支店長秘書)は昼から、来るとのことでした。

シエンの机の上に置かれていたのは、私がなくしたと思っていたスマホと充電器でした。

「昨日、会社引けてから、あのブランコのあたり、と崖下のところに行ってみつけました。これ、どうしたら動くのですか?」

私のスマホは指紋認証をしているので私以外動かすことはできません。

がけ下で見つかったスマホはもしかしたら壊れているかもしれないと思ったのですが、右の親指を下の真ん中のボタンに当てるとたくさんのアプリが出てきました。

まるで30年後先の電波を受け取ったように見えました。

私が持ち込んだ未来機器は問題なく動きました。

但し、フォトのアプリを開くとまったく知らない子が並んでいて、私の妻、孫娘の写真を見ることはできませんでした。時々は私自身の写真が出てくるのですが、横にいて私の肩を抱いている巨大な男は見も知らない男でした。

シエンは私のスマホの操作をずっと見ていて、スマホを取り、自分で操作をし始めました。

                           ー続くー

いったん書き始めた物語なので、終わりまで書くつもりですが、物語の起伏がなくなってきて、私、作者自身が退屈しながら書いています。

それでも読んでいただいている方、本当に感謝しています。







ドイツ生活36年(半生以上)。ドイツの日常生活をお伝えいたします。