火星人襲来―その6

ジョンの眼前に広がっているのは赤茶けた岩石だらけの火星の景色だった。人間なら、この光景を見て、どういう風に感じるのだろうか、ジョンは瞬間的に人間の感情をサーチ、孤独感という感情に突き当たった。ジョンの問題はどういう風に孤独感を表現するのか、ということで、表現、孤独感でサーチ。反応はなかった。

メアリーは、自分たちが乗ってきたロケットを分解して、バギー車を組み立てるのに必要な部品を取り出してきた。忙しくロケットと外の臨時テントの中で組み立て始めたバギー車の往復を繰り返していた。ジョンはメアリーに孤独感の感情表現を聞きたいように思ったが、メアリーは自分達アンドロイドの脳内に組み込まれたバギー車の組み立て設計の図面と照らし合わせて、パーツを並べていくのに忙しいようだった。あまり関心はないのかもしれない。

ロケットの中の3Dプリンターは、ロケットが着地をしてから、休みなく稼働をしていた。メアリーは時々プリンターの中をのぞき、完成品を取り出し、テントの中の部品のところに並べていった。

バギー車は簡単な構造で組み立てには一日もかからない。と言っても、ジョンもメアリーも日にちの感覚を失いかけている。

おそらく3Dプリンターの稼働が止まった時に1日が終わるのかもしれない。ジョンもメアリーもアンドロイドのために休みなく働くことが出きる。ただアンドロイドの金属疲労とメンテのために1週間に一日の休息が用意されていた。ジョンもメアリーも強制的に動かなくなるので、あまりこの1日を歓迎していない。アンドロイドは動作をして、アンドロイドなので突然スイッチを切られてしまえば、見かけはポンコツのロボットでしかない。それに休息が終わった後に、新たなデータが脳内に組み込まれている。そのデータの間違いを人工知能を駆使して訂正していくのも、仕事になっていた。バギーの組み立ては順調に進んでいったが、突然3Dプリンターの稼働が止まった。地球の指令センターの一日が終わったようだった。

バギー車の組み立てが終われば、それに乗って、少し柔らかい土地を探し出して、人間が住めるような酸素を製造し、水、食料を補完できるような貯蔵庫を完成させるのが当面の目標で、そのための設計図はジョンとメアリーの脳内に組み込まれていた。

それほど修正の必要もなく、作業が進めば、おそらくで3ヵ月ほどで最低限人が住める場所が完成するはずで、完成と同時に人間としての初めてのクルーが8ヵ月ほどかけて火星に到着する予定だった。その間に、住居としての安全性の試験を繰り返して万全な体制に持っていくようになっている。

アンドロイドを休みなく稼働させるために、ジョンとメアリーの脳内には年間の工程表が組み込まれていた

                            ー続くー







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