小説を書くことー18(A)

台所にタマちゃんといたのですが、私にとってもう一人の私(僕)が居ると解ってごく普通の生活を営んでいるというのもわかり、タマちゃんにうながされてシンクの台の下の穴からもと来たところに戻りました。穴は私の頭が入るぐらいの大きさで、タマちゃんの後に続いて入っていくと、なんだか猫になったような気分でした。

ちょっと整理。

便宜上私はA,B.Cと分けていますが、1989年に戻ってきた私は分身というべき僕(C)が一人、私自身(A),2019年に存在している(あるいは存在していた)70を越した爺(B)がこの地球上にいるわけです。

僕(C)の延長線上には(B)がいるのはほぼ間違いありません。それなら私(A)の延長線上にだれがいるのか、予定調和的(?)にですね、私がどこかにいるのか、と考えてみるのですが、全く謎です。

ということはこの物語は私(A)を軸にして進むような気がいたします。

僕(C)自身ほとんど忘れかけているのですが、やはり1989年に戻ってきて、怠惰な妻と、おしゃべりな息子と暮らしているので、ごく平凡な毎日を暮らすわけです。もしかしたら、訓練生から昇格して最近新入社員になったグリュンバルドと浮気ぐらいするかもしれないですが。

話を戻して、

かなりの時間私は留守にしていたと思っていたのですが、戻ってきて台所に行くとちょうどよい具合にオーブンが温まっていて、私は冷凍チキンを放り込みました。オーブン全体からチキンの香りが漏れてきて、その生活臭からなんとなく俺は生きているんだ、という感覚が戻ってくるようです。

20分ほどで、熱いチキンを出して、皿に投げ込みました。私はフォークでチキンの衣を取り、中身をタマちゃんに取り分けるのですが、タマちゃんは私の親切心無視で、いいよ、おいら自分でやるからと言って、皿に放り込んだチキンウィングをひっかきだして、床の上において、足(手)で固定させてかぶりついていきます。かなり熱いので、タマちゃんにやけどをしないように気をつけろ、というのですが、意に介することもなく、食べています。

相当腹が減っていたのか、タマちゃん本来猫舌であるはずの自分が猫であることを忘れたように夢中になって熱いチキンにがっついていました。

次の日、出社時に私は僕(C)として出社するのか、私(A)として出社するのか迷っていました。それに一番の疑問は、今まで勤め上げてきてせっかく定年までこぎつけたのになぜ働き続けなければいけないのか、ということです。

                         ー続くー

さて、今はこの物語のタイトルをどうしようか、と考えています。私がこの物語で意図しているのは時々コラムのようなことを書いていますが、それも全部ひっくるめた物語を書ければと思っています。





ドイツ生活36年(半生以上)。ドイツの日常生活をお伝えいたします。