小説を書くことー13(A)

スマホの操作の要領がわかってくると、シエンの手の動きが早くなってきました。一連の写真を見ていくうちに、シエンの手の動きが止まり、私にその写真を拡大して見せました。

その写真は結婚式の写真で、なんとで私とシエンが、この会社の同僚に囲まれて写っているものでした。何度も書きますが、シエンは確かに美しい人ではありますが、感情的に私はシエンにひかれるところがありません。

と言っても、シエンは私の妻と比べても、聡明で、家事全般は滞りなく取り仕切ってくれるような気がいたします。また同じ東洋人として、セックスの面でも、それなりに良い相性かもわかりません。というようなことを勝手に想像して写真を見ていたのですが、どうしてこんな写真があるのか、誰かが勝手に合成しスマホに載せたとしか考えられません。

シエンは今の旦那のところから逃げ出して、銀行勤めのイギリス人と一緒になるはずなのです。

シエンも不思議な顔をして結婚式の写真を見ていました。それからシエンが見ていったのは、子供たちが写っている写真でした。先ほど見た巨大な男が私の肩を抱えていたのは、そうやら私とシエンの間にできた子供のようでした。いくらなんでも、こんな合成写真を撮れるはずもなく、どうやら私たちは結婚するのではないかという、ということが現実味を帯びてきました。

しかし、ですよ。結婚をするのには理由があるはずです。one night stand(一夜の過ち)を犯して、子供ができて結婚をする?

私もシエンもone night stand とは、男と女というような程遠い所に位置していますので、考えることはできない。

それで、私はシエンがと何気なくつぶやいた「私はお金が好きです」という言葉を思い出しました。

                            -続くー 



ドイツ生活36年(半生以上)。ドイツの日常生活をお伝えいたします。