思うに。ドリアン稽古場婦人会。

博品館劇場での『ドリアン・グレイの肖像』に出演する女優陣は、全員が元タカラジェンヌだ。
プロデューサー氏も、ワタクシも狙った訳ではない。
ちょっと非現実めいたムードのある美女を探していたら、そうなった、という事なのだが。
(キャスティングはケース・バイ・ケースなのだが、今回はプロデューサー氏とワタクシ、それぞれの希望をすり合わせた結果)

大先輩である剣幸さん、そして「下級生」である蘭乃はなちゃん。
そして、彩輝直(現・なお)さん、風花舞さん。大阪のシアター・ドラマシティ公演に彩輝さんと交替で出演する星奈優里さんも稽古場に参加してくれている。
ちなみに。
さえちゃん(彩輝さん)、ユウコ(風花さん)、ユリ(星奈さん)の三人は同期でいらっしゃる。とても仲がよろしい。
狭い稽古場事情も相俟って、いつも一緒。当然、話にも花が咲く。世間話に思い出話。団地妻の井戸端会議さながらに。
その様子を「婦人会」と呼んでいたら、本人たちもそう名乗るようになってきた。竜宮城に棲んでいた時もあったが、時の流れはちゃんと理解しているのだ。婦人会をもって任じて逞しい。
あ、ワタクシも勿論、婦人会に度々参加する。
何と言っても、ワタクシは彼女らと25年来の仲間なのだからね。
25年。四半世紀。ふぅー…………。

ワタクシが宝塚歌劇団で働きだしたのは、1993年のことだ。
まだ大学生だった。
当時、演出助手募集の試験は学歴不問だったし、半分冗談の思いつきのようなものだったから、大学三年生の時に受けてしまったのだ。なのに思いもかけず採用となり、単位を残していたので学校に通いつつ卒論を書きつつ、言わばアルバイト身分で演出助手を始めたのである。このあたりの経緯は、また改めて書いてみたい。自分の記憶を繋ぎ留める為に。

ワタクシが初めて演出助手の端くれを務めたのは、
月組公演『花扇抄』『扉のこちら』『ミリオン・ドリームズ』だった。
彩輝さん、風花さん御出演である。
まだ正式採用でもなかった未熟な新人助手はクレジットにも名前はない。
名前が載ったのは『ブラックジャック』と『火の鳥』が初めてで、笑えるぐらい大変だった演助時代のアスレチックなサバイバル・ワークは……これもまた別の機会に。そもそも最初から三本付き(*業界用語・笑)だったんだからね(25年来の恨みと自負)。
取り敢えず、胸を張って言えるのは、365日24時間働いてましたよ!ってことで。
同じ年の雪組公演『コート・ダジュール』にも助手に入り、翌年の星組公演『若き日の歌は忘れじ』『ジャンプ・オリエント』(ショーは東京公演から、そして両作品とも阪神淡路大震災の時の中日公演にも参加)に続く。こちらには星奈さんが。
ね、25年前からでしょ。

学年的には「上級生」なのだけれど、同世代で。
この上の学年(ワタルや直ちゃん)、その下の学年(トウコやコム、おっちょんにオサ)、その下の下の学年(音子、アサコ、カシゲ、トモヨ)、我が同期(ハマコにミズ)、そして正式入団の同期(いとーちゃんにユミコ)、と。この数年の学年が、一緒に走り回った同年代の仲間感が強い。いや、そう思っているのはワタクシだけなんだろうけどね。
なにせ、ずーっと稽古場にいたから。
特にさえちゃんたちの期(樹里びょん、グンは言うまでもなく、たまお、チー坊、みやたん、タレ、あっこちゃん…………現役で頑張っている、すっしぃにさおた)は多士済々で個性豊かで賑やかだったし、退団せずに残っていた人数も多かった気が。
こちらが新人公演を任された頃に、長の学年あたりだったのもあるかな。
思い出があり過ぎる。
勿論、その後85期くらいまでは、助手仕事もまずまずあったし、同様に馴染み深いのだけどね。

彩輝さんは星組に移ってからの新人公演『二人だけが悪』で、初めてガッツリと。これは僕の人生においても、ものすごいインパクトとなり、エポックであった。その後、バウホールでの主演作を立て続けに作らせて頂く。間違いなく、あの頃の「魂の半分」。

風花さんは既に娘役のスターであったけれど、久世さん時代のショーの演助にすべて入っており(ノンさんのサヨナラショーもお手伝いさせてもらった)、何より、当時としては珍しい娘役主演のバウホール公演『LAST STEPS』を御一緒できたのは嬉しかった。若手ながら豪華な布陣で、ダンス主体のショー。しかし完売なのに予算がなくて・笑。このあたりも、また別に。

星奈さんは、星組時代よりも雪組に移ってから、『JFK』でのマリリン・モンロー、新人公演で御一緒したジャクリーヌ、一路さん時代のショーの名花の数々が思い出深く。『ダル・レークの恋』は御一緒したけれど、その後はノルさんお披露目の『WEST SIDE STORY』かな。風花氏と共に、色合いの違いはあれど二人とも情感あふれるマリアだった。

それぞれ現役時代に御縁がありつつ、有り難い事に退団後も。
まずはユリちゃんと『Winter Rose』。これも博品館だった!
OG公演でも御一緒したけれど、次に印象深いのは『Wonderful Town』かな。
ユウコとは、ル・テアトル銀座での『RED SHOES, BLACK STOCKINGS』が退団後初めて……だったかと。その後、浦井君のディナーショーに出てもらったり、OG公演の『DREAM TRAIL』や赤坂RED/THEATERの『密会』に参加してもらったりと、ショーでの仕事が多い。お芝居は……もしかして、初めてかも。これはちょっとビックリ。

さえちゃんは、実は退団後の関わりが一番薄いのだけど……そう思えないのは何故だろう。あれ?『Blue & Red』の次は『DREAM. A DREAM』に飛ぶのかしらん。『ファウスト・オデッセイア』での思いも寄らぬ再会も嬉しかったけれど、いつか、さえちゃんとは、これぞと思う作品・役で御一緒したい。
ジョシュアやルーカを共に生きた感覚を、お互いに男役でも歌劇の演出家でもないけれど、もう一度、今でもまだ、取り戻せるのかどうか。試してみたい……いや、信じてみたいのだ。
いつか、そんな場所に辿り着けるように、この先の何年かを歩んでいきたいと。そればかり願っている。

とにかく。今は。
稽古場の婦人会の華やぎに、一回り以上年下の男子たちの奮闘を見守ってもらうと致しましょう。



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