この世の全てがおれをさいなむぜ……と、コンビニのおにぎりを久しぶりに買おうとしたり、カントリーマアムが減りまーすのニュースを眺めたりするたびに思う。昔、おにぎり100円セールっていうのもあったしカントリーマアムはホームメイドクッキーのようにでかかった。会社の三十代後半の上司の昔の話を聞く時にも思う。高い中華。何泊もした旅行。初めてのブランドバッグ。大量の新入社員の中のひとり。毎日のように通ったクラブ。最近の平成レトロとかY2Kとか、おれも好きだけどあれにはそうとう諦めと絶望のにおいがこびりついているように思う。まだなんとかなる、今はだめだけどいずれきっと輝く。そんな空気がパックされたそれらは、今開けたら劇薬にしかならない。おしゃれな劇薬。毒。生まれてこの方ずっと右肩下がりの景気で、ゆとりだなんだとバカにされ、あらゆる教育の過渡期に生まれたばっかりにこれからやってくる下の世代に足蹴にされることが確定しているおれたちには、もう手の届かないもの。
「え？じゃあ今の子って何して遊んでるの？ずっと家にいるの？」というセリフが事務所にこだまし、俺や後輩は「いや、出かけるときもありますけどそんなには……」と言って目を伏せる。

モー娘。のLOVEマシーンすら本来の歌詞が持つ雰囲気を飛び越え、あまりにもぎらついていて光すぎていてリアル感のない希望を感じさせる歌にすら思えてくるこの世の中で、本当にこの国のあらゆる分野のトップにいる人間の幼稚さと稚拙さを痛感する。（先の上司のことではありません！）
あらゆる権力が腐敗し腐り落ちる中で、とうとうおれらが掃除をしなくてはならない段階になってきた。まだアジアトップの〜というちゃちな幻想にしがみついて（しがみついている自覚はないのか）偉そうで傲慢で誰かを踏みつけるようなことばかりを吐き散らしたり実行したりするやつらがこの国の代表であるかのように振る舞うのが我慢ならない。なにが美しい国だよ。お前が見てるのは自分が殴った死体でしょ。

世代間で対立するのは無駄でしかないけど、責任の所在を明確にし、じゃあこれからどうするかという分析をすることは必要なはずで、それでもそうすることが「攻撃」に見えてしまってああだこうだ言うんだったら、じゃあなんでもっと早い段階で手を打っておいてくれなかったんですか、と思わずにはいられない。何も知らないくせに？　たしかにそうかもしれない。たしかにおれはまだ若造だが、若造が未来を信じられない世の中ってなんだ？って思うし、じゃあどうにかするか……と思って立ちあがろうとしたら若者はリベラル的な価値観を身につけてはいるがその実……みたいなどこから目線？なツイートにぶち当たったり、もっとシンプルな罵倒にはばまれたりする。政治に興味を持て、選挙に行けとかなどがそう。どうやらこっちが悪いみたい。そりゃ全員がまともであるはずはないんだけど。

今年書いた「ライクアラズベリー」という小説にも書いたが、この国の聚落はここ数年、つまりはおれたち「若造」が選挙なりなんなりでそういった「政治」に関与できるようになった段階で急速に始まったわけではない。何年も何十年も前からじわりじわりと進行している。もう時代が違うから。バブルじゃないから。身の振り方を考えて生活しないと。これはうちのバブル世代の親族のセリフだが、仕方ないとは思いつつなんと無責任な……と思わなくもない。権力も繁栄も放っておけばどんどん瓦解する。それをおこたったことに思いを馳せず過去自分たちも言われて腹が立ったはずの「最近の若いものは〜」に逃げるんだったら、もうそこにいる意味ってないよ。少なくともおれはそうはなりたくないし、これからやってくるだろう下の世代にこの文章に書かれているような、短絡的で怒りと恨みとほんの少しの良心に彩られた呪詛のようなことを思われたくもない。
でもそれって当たり前のことでしょう。おれたちはもう学生でも子供でもない。おかしいことやばかなことをするなとはいわない、でも子供の心を持ち続けることとただ無責任に享楽的な過ごし方をすることはまったく違うことだ。そこを履き違えている人が多すぎるし、そうならないように常に自己を鑑みる必要がある。破壊。リセット。甘美な響きを持つそれによりかかりたくなる気持ちはわかる。おれだってその簡単な思考に逃げたくてたまらない。でも仮にそうなったらこちらもただではすまない。考えなくてはならない。おれも考えていなかったので考える。

今世界のあちこちで起きている、明らかに虐殺というほかないことに問題意識を持ち声をあげている人に対して、他国のことにどうこういうよりこの国にはこの国の問題があるので、そちらに物申したらどうですか？　とかここでデモをしようが何をしようが変わらない！　とか言うやつ、そもそもこの国の問題に声をあげてないし、じゃあいざ戦争とか命の危機になったら自分はなにかちょーすごーいパワーで助かるーとか思ってそうだし、二言目にはもっと冷静に言わないとわかりませーんとか言いそうだし、永遠に「被害者」のままでいられて「加害者」になることを考えていなさそうで笑ってしまう。命を感じろ。おれもお前もあなたもどこかの人も体に大穴が開けば死ぬ。反対に他人に大穴を開ければ殺すこともできてしまう。そのことを考えろ。それから喋れ。考えられないなら黙れ。失せろ。

なんとかやっていきましょうね。