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【ウガンダ】「自分の土地を持つこと」。それは、彼女の「夢」でした。

ユーリン(仮名)さんは13歳の時に神の抵抗軍(武装勢力:LRA)に誘拐され、帰還できたのは19歳の時でした。6年の間、少女兵として戦わされ、その間には強制的に結婚もさせられました。
    
村に戻ると彼女の両親はすでに亡くなっていました。親戚もいませんでした。そして、村の人たちからは受け入れてもらえず、彼女は差別、偏見の対象です。
    
私たちが調査で出会った時のユーリンさんはWFP(国連世界食糧計画)の食糧援助を受けてはいたものの、お金もなく物乞い同然の生活をしていました。子どもは栄養失調。彼女自身、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいました。
    
しかし、彼女にはお金もなく、何をしたらよいかもわからず。そして、何よりも何かをする気力がありませんでした。

◆初めてのお給料は18万ウガンダシリング


帰還してから4年後の2006年に彼女は私たちが運営する職業訓練施設に通いはじめ、洋裁や小規模ビジネスの技術を身につけ、2009年に無事、卒業することができました。
   
彼女の自立してから初めての給料は18万ウガンダシリング(日本円で約1万円)。これは当時のウガンダの公務員の平均月収(約7000円)を上回る金額です。
   
その後も、彼女は身につけた技術を活かし、バッグ作りや工房で働いたりと忙しく洋裁の仕事に励みました。そして、余裕があるときは小規模ビジネスを行い、資金源を増やしながら、自立した生活を送っていました。

◆都市封鎖でも、諦めない。

 
しかし、今年の4月に新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、都市が封鎖され、今までできていた仕事もまったくできなくなったのです。
     
「洋裁はできなくても小規模ビジネスなら収入を得ることができるかもしれない!」と考え、食料品の小売業に取り掛かりましたが、これもうまくいかず、収入がゼロになってしまいました。
    
彼女は当時を思い出し、こう話します。
    
「収入がゼロになり、子どもたちに十分なご飯を与えることもできなかった。物価が高騰していて都市では食料が買えなかったので、遠くまで出向いたりもしたが、そこでも食料を手に入らず、子どもたちのことを想うと不憫で何か食べ物が手に入るまで、家にも帰れなかった。」
     
今年の5月のはじめから、私たちテラ・ルネッサンスは職業訓練施設の卒業生に呼びかけ、マスク作りをお願いしました。そして、ユーリンさんもその一人として、お願いしました。
      
私たちもマスクの配布要請がウガンダ政府からたくさん来ていたので、どんどんマスクを作って欲しいと頼んでいたのですが、彼女の頑張りには本当に驚きました。彼女はマスク作りをしてくれた卒業生の中でも、一番多くのマスクを生産してくれました。

◆コロナ禍でも、しなやかに

彼女はマスク作りをしながらコツコツお金を蓄え、このコロナ禍において2ヘクタールの土地を買うことができました。
    
「自分の土地を持つこと」。
 それは、彼女の「夢」でした。
    
今はこの土地はまだ荒地ですが、これから土地を耕し、農業をできる場所にし、将来的には自分たちが住む家と家畜用の家を建ることを計画しているそうです。
彼女は自分の力で生活していく、持続可能な生活に向けて動き出しています。
     
子ども兵という苦しい経験から這い上がって自立を手に入れ、このコロナ禍の絶望にも負けずしなやかに乗り越え、夢を叶えた彼女の生き様は私たちに人間が持つ底力を教えてくれます。

「それでも、生きよう」
    
彼女は現在、十分自立ができている状態にあります。
    
そして、今はまだ自分の生活のために必死にマスク作りを行っている仲間にとって彼女は「どんなに困難な状況においても夢をかなえることができる。」という証明であり、大きな心の灯火になっています。
       
   
彼女から日本の皆さまへ伝えて欲しいと言われたことがあります。
     
「今、私が健康でいれること、本当に感謝しかありません。10年前、私たちが自立した時に助けてくれたこと。今もこんな状況でも私たちのことを忘れず、寄り添ってくれること。日本のみなさんへの感謝の気持ちがこのコロナ禍でより大きくなりました。私は健康に暮らすことができています。本当にありがとう。」

  
私たちが彼女の自立の後押しをしてきましたが、ずっと彼女の頑張りに私たちが支えられきたのです。私たちテラ・ルネッサンスは支援者の方やアジア・アフリカの紛争被害者の方の想いや頑張りに支えられ、今日まで歩みを続けてきたことを実感します。
    

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執筆:福井妙恵 編集:鬼丸昌也

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