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恋愛が分からない人が分からないなりに感情分析する例

アロマンティック・アセクシャルモドキ



初めて恋愛というものに接触したのは確か、自分に向けられた不明確な恋心というやつだった。それまでに物語上や存在としては知っていたはずだけど、自分自身に関わる形で認識したのはおそらくそこが初めてだった。

12歳、そもそも恋愛を理解していないことにすら気付いていない頃だったので、「一目惚れ」というめちゃくちゃフィーリング世界の理由でいきなり謎の「恋心」をぶつけられる恐怖。何が何だか分からないけど周りは楽しそうだったし、「10代になったばかりだし、みんな大人やマンガに憧れて真似しているだけかな。訳がわからず真似事をするのが今の流行なんだろうな」と軽く考えて受け応えしてた。実に甘い。
あの時(というか数年前まで)は、LGBTQほか諸々について何となく意味は知ってるくらいの認識だった。まさか自分がその中でも少数のアセクシャルのことを必死に調べることになろうとは思ってなかった。

※アセクシャル:広い意味では恋愛指向、性的指向を持たない人。その中でも、性的指向だけを持たない人とか条件によって呼び方めっちゃ色々ある。国によって言い方違ったりする 書ききれない  




知らなかったとは言っても、振り返ってみれば小さな違和感はずっとあったような。
きっと誰も気にしてないだろうなと思いながら、日常で触れ合う娯楽文化に含まれるびっくりするほどの恋愛要素に辟易したり、人間が2人登場すると恋愛を終着点にしようとする会話に疲れたり。児童文学とかファンタジーは割と大丈夫なんだけど、年齢が上がるにつれて「男と女の恋の物語」が知らずしらずのうちに塗されてる。
みんなが気づかないように、洗脳されるように、気づいたらほとんど視界がそれらで埋め尽くされてると思った。大人になるって、恋愛をすることなのかな、って勘違いしてしまうくらいには描かれる大人たちはみんな男か女のパートナーがいたし、そうであることを望むキャラクターばかり登場した。(見ている人たちも当然のようにそうなることを望んでいた。)
「なんか多いなぁ…」くらいには引っかかっていたけど、この時もまだ、周りの人がそういった話題を日常の主とするのは趣味嗜好の問題だと思っていた。(科学の話ばかりする子、ゲームの話ばかりの子、ファンタジー映画が好き、ミステリーが好き、恋愛ものが好き、みたいな中のひとつだと思ってた。)


それなのにいつのまにか、みんな当事者になっていた。私の知っている勇者物語が好きな彼も、科学が大好きな彼女も、勇者にも科学者にもなる前に、恋愛の当事者になっていた。さも当たり前のような顔をして、周りもそれが当然であるかのように受け入れていた。なんで?好きな人だけがやる趣味じゃなかったの?誰でもやるものなの?もしかして恋愛好きなの隠してたの?
何から何まで疑問だらけだったけど、多感な学生時代にあえて変なことを言って浮くのも嫌だった。あと、恋愛すること=大人というイメージがあったから、理解できない自分が恥ずかしいように思えて隠したのもある。友人たちはなんの前触れもなく恋愛を始めていたから、これも人それぞれ、時期の問題かな〜いつか自分にもその瞬間が来るでしょ〜なんて呑気に考えながら。

高校生にもなると、その差は開くばかりだった。どんどん理解できないものに囲まれていく。
オリコンチャートには悲しい恋の別れの歌、映画館に行けば阻まれながらも引き寄せあう2人の純愛物語、家に帰れば愛憎もつれ合う不倫ドラマ、どこもかしこも恋愛のことばかり…なんなんだこれ。あなたに会えなくて苦しい?あなた以外いない?胸にぽっかり穴があいた?what's you mean?

ラブソングで使い果たされたアレコレの単語、ほんとにすごい、何一つ分かんないんですもん、ほんと気づいたとき笑っちゃった。あ、みんなこれ感情移入するものなんだ、適当なそれっぽいセリフを楽しむんじゃなくて、あるある歌ってたんだ、って。
多分その事実に気付いた瞬間は、いままで生きてきた中で一番の衝撃だった、本当に世界がぜんぶひっくり返っちゃった感じの。(多分世界的に見たらひっくり返ってたのは私だったんですけど)



それに気づいてから自分の感情について考えてみたけど、人として尊敬する・好きという感情はもちろんあるけど、それが独占欲と性的欲求に全く繋がらないことに気付いた。恋愛ってものを分からないなりに考えてみて、家族愛や友愛との違いとして自分が思うのはその2点かなと。

①対象を独占したいと思うかどうか
よく見かけるのは2人組が多いので。夫婦も2人限定だし、浮気は御法度のようですし。(世界見ると一夫多妻とかあるし、あの状況が経済的魅力含めた利益的契約なのか、純愛の上をいく包容力的な何かなのかわからないのでひとまずスルー)
あとこの独占行為が、己の欲求を優先した個人的な感情によるものだとしたら、奇跡的に条件の合う2人が合致してただ独占欲を満たし合っているだけかとも思ったけど、「君の幸せのためなら身を引く…」みたいなのも見るし、違うのかなぁ…。

②性的欲求の対象になる
これもよく見かけるし、セックスはパートナーとに限りたいってパターンが多い気がするから。あと恋愛映画やマンガの終盤に肉体的接触が登場することが多いから。(これも一部には共同体としての結婚も聞くし、恋愛の条件の第1位が性欲ではない例もあると思うから多数派の例として)

この2点を満たす対象が自分にあるかっていうと、まず独占したいものは特にない。他者はあくまでも他者で、自分によってどうこう変えられないものだと思っているから、あるべき場所にあるべきだと思う。自分の元になければならないものは、自ずとその位置に収まるだろうとも考えているから、多大な労力をかけてでも何かを繋ぎ止めようとは思わない。経験上、実生活で告白されて付き合ってフラれる理由No. 1!
次に性的欲求。一般的に見て性的魅力のある女性・男性像は理解してる。(きっと今まで見てきた情報の刷り込み)それに加えて、自分本位に見ていて楽しいエロスも分かる。けれど、その空間に自分が出演した瞬間「あれ?なんか違うかも?」の始まり。何というか、生身の人間みが強くなる気持ち悪さ…。多分世の女性に理解できる方が多いのではと思っているんですが、なんか、性的欲求に支配されている人間の瞳の気持ち悪さ?その人間の一番深いところがにじみ出ていて、今まで話していた人物とはまるで違う生き物になってしまったような。それがとても気持ち悪い。(まあこれは今まで受けた性的加害による影響もあるかもしれないけど)

とりあえず、好きという感情とセックスがイコールで繋がらないようで。
なんで、尊敬する大切な人と体液を交換すると嬉しいのかがさっぱりなんです。犬かわいい〜、この建物最高好き〜、それがセックスに繋がらないのと同じで、好きなのは、その人の性格・考え方・発言・態度・外見だとか要素を愛しているのであって、すなわち全てが好き、この人と一生を添い遂げよう、一体化しようとは思わんのです。

自分にだって2つの次元に推しがいるし、趣味もかなり多くある。そんな話をするとすぐに恋愛感情に繋げようとする方々もどこにでもいる。言っておきますがねえ、好きの究極は性じゃないんですよ。それぞれに好きの方向性があってそれを極めとるんすわ。自分の視界が恋愛一色で、たまたま周りに同じ指向の人が多いからって、世界が丸々お前と一緒だと思ってんなよ!!!!it's a small world!!!



そんなこと言っても、他人に迷惑かけなければそれでいんじゃなーい精神なので、別に恋愛について恨みがあるわけでも無い。(リア充●ねとか言ってる人ほんとに不可解)

それに、能力としては羨ましいと思う時もある。だって、これだけ世の中が恋愛コンテンツに溢れかえっているんだから、きっと恋愛が好きな人は相当楽しい環境なんじゃないですかね?ハイパーマジョリティ趣味だと思うんだけど
あと、恋愛を理由に生まれる謎エネルギー。あれも羨ましい。「恋したから」を理由にとんでもない努力をしちゃう人って結構いるじゃないですか、犯罪方面はほんとにクソだけど、それ以外の、モテたいことが原動力の人とか、好きな人を振り向かせるために自分を磨く人とか、素晴らしいと思う。ずるいほんとに、エンジン1個分多く積んでるってことでしょう?もちろん恋愛に人生を狂わされた話とかも聞くし、大変なことも多いんだろうけど、それらの行動によって得られた経験とか人脈は、確実に自分の手が届かない領域のものだから。明確に差がある。
こんなことを書くと、「恋愛しない人だって幸せです」とか「その分違うものを得ている」とか優しい人に言われそうだけど、それはもちろん自分のことなので重々承知してる。自分の人生を悲観しているわけでもないし、自己肯定感ばり高いので。ただ、こんな全世界歴史的に大ヒットしてしてるゲームがあったらやってみたいなあと思うのは当然じゃないですか。現時点で最高の、この素晴らしい人生に、プラスで大ヒットゲーム「恋愛」ができたら、どんなふうになったんだろうって少しばかり夢見る時もある。目冷めたら忘れるけど、外に出ればそこらじゅうにあるから。




なんでこうやって個人的なことを細々と文章にして、インターネットに恥ずかしげもなく晒して残しているかというと、自分がそういう文章に助けられたから。

一歩外に出れば大抵の場所で恋愛、結婚、パートナーの話がでる。「共感されなくてもなんともない、そうゆうものだ。」と思いながらも、日々積み重なる疎外感はけっこう応えるし、インターネット上で偶然見つけたアセクシャルの記事に「間違ってなかった」と安心した覚えがある。いつそれに気づいたとか、日常会話でのあるあるとか、誰にも共感してもらえなかった気持ちが初めてインターネット上に残されてる誰かと一致した時のなんとも言えない気持ち。

数年前までは、得られる情報は親・友人・学校などの行動範囲周辺の人々かテレビ、雑誌だけだったけど、どこかの県で暮らしてる先人たちの結婚観とか会社での振る舞いとか知れたのは、ほんとに参考になって有り難かった。最近はテレビや書籍でも少しずつ紹介されるようになったけど、それでも少ない。

このnoteを読んで、必要ない人は忘れるだろうし言いたいことがある人は言えばいい。その中で誰か1人でも不安な人の為に、少しでも実例を置いときたい。



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