手紙

みんなで連続小説 Advent Calendar 2014 第14話は、
flyingcat (@only000xxx) が書かせていただきます。

電話で怒鳴り散らした後、また固い床で眠るのかと気分が滅入ってしまい、新しいタバコにまた火をつけてしまった。

冬の夜風が悪戯に冷たい。
まるで自分の心の中の孤独を映し出しているようだ。

「せっかく新しい町きたのに…ままならないなぁ…」

亜矢はそうため息まじりに一人呟いた。タバコが吸い終わると寒さも手伝ってなんとか部屋の中にはいった。部屋に戻ると圭一が神妙な面持ちでパソコンを見つめていた。亜矢が部屋に入ってきたのがすぐわからないほど集中しているようだった。亜矢が圭一のそばに行こうとするとようやく気づいたようで、努めて明るい口調で話し出した。

「残念だったねベッド」

「うん…」

「夜も床で眠るの?」

「そうなりそう」

「なんだったら僕の部屋に泊まりにくる?僕はソファーに寝るからベッドは君に譲ってあげるよ」

流石にシラフなので返答に戸惑ってると

「冗談だよ。 そんなに真剣に悩まれるとこっちが恥ずかしくなっちゃうよ」

「そうですよね ごめんなさい」

そう言いながらお互いクスリと笑った。シリアスにならないように別の話題をふって陽気に振る舞ってくれる。きっと彼は優しい人なんだろう。ついこないだ知り合ったばかりなのに亜矢には素直にそう感じられた。

「…中身なんでした?」

亜矢はゴワゴワ圭一に聞いた。

「知りたい?」

なんだかちょっと挑発的な態度で圭一が聴く。

「はい。 ちょっと怖いけど やっぱり自分に宛にきたものだから」

そう亜矢がそう言い放つと亜矢が想像してたよりも易々と圭一は話しだした…。

「中は絵の写真ばかりだったよ。君はもうこのDVDの送り主が誰だか気付いてるんだろ?」

「ええ…」

絵の写真と言われれば、亜矢が思い浮かべるらやれるのは一人だけだった。

「きっとユウです。こんなふうに私にサプライズを仕掛けるのは」

「立ち入った事を聴くようだけど…彼と君の関係は…?」

「以前この町に来る前に付き合ってたんです。」

悲しみを含んだような笑顔で亜矢は答えた。

「写真とは別にテキストファイルで君宛に手紙がはいってるみたいだけど読むかい?」

「手紙…」

そうつぶやくと考えこんだような首をかしげたポーズをとった。

「あの…もし迷惑じゃなかったら手紙を声にだしながら読んでくれませんか?」

「ええ? 僕が? いいの?」

「はい。きっと一人の時だったら辛くて中身も見ないで捨ててたと思うので」

この荷物が届いてからの二人はなんだか重苦しい雰囲気だ。まるで開けてはいけないパンドラの箱を開けたようだ。

「今日は変な事に付き合わせちゃってごめんなさい。もっと楽しくおしゃべりしたりして楽しい夜になるはずだったのに」

しおらしく謝る亜矢を見てこないだのお酒の席での投げやりな態度も
実は彼と別れた事が原因かもなと思った。

「わかった…そんなふうに頼まれたんじゃ仕方ない読むよ。」

そうして圭一はゆっくりと手紙の内容を読み出した。

…………………
亜矢へ.txt

こないだは意地悪して他人のふりをしてごめん。なんだか君の楽しそうな声を聞いてたら意地悪したくなったんだ。君は僕と別れたらすごく落ち込むだろうって思ってたからさ。思ったより元気そうでよかった。

彼女 エリから話しを聞いたと思うけどもうすぐロンドンに行くんだ。彼女 あっけらかんとしてて。人懐っこくて、でも面倒見がよくていい子だろ。亜矢もきっとエリの事好きになれると思うよ。

エリに僕と君との話をしたら、そんな風に逃げるように別れたら絶対
後悔するよって怒られたよ。おかしいだろ?君と別れた僕の事をまるで自分の事みたいに心配して

このアイデアも実は彼女のなんだ。
僕がなかなか素直にならないから手紙なら素直になれるだろうって

本当は墓場まで秘密をもって行こうと思ったけど
女の人には男のロマンってやつはあんまり理解されないのかな。

実はさ…こんな事言ったらきっとまた君は沢山泣くだろうから本当は言いたくないんだけど

僕の身体…あんまりよくないんだ。
もって5年だろうって。
こんなにまだ若いのに笑えるだろ?

父方が癌の家系らしくてね。でも親父がピンピンしてたから油断してたよ。
だから、死ぬ前に自分の実力を試してみたいんだ。
何も話さずに一方的に別れを切り出してごめん。

でもさ 君が飼ってた猫が死んじゃった時にわんわん泣くし、何ヶ月も落ち込むもんだから。見てられなくてさ。

自分が死んだらきっとまた君はわんわん泣くんだろうなって簡単に想像がついたからね。

だから 将来君が一人で泣く時がきた時に、心まで一人にならないように、君が大好きだって言ってくれた僕の動物達の絵を写真にとって君に送るよ。

…………

文章はそれで終わりだった。

圭一が全て読み終わると
亜矢の目からは大粒の涙が零れ落ちていた。

明日は @1_010_110_10 さんです。お楽しみに!

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