芥川賞・直木賞をみていると、NHK紅白歌合戦・レコード大賞をおもいだす

・ブログに2010年7月19日公開した文章の転載
 
1970年代まで(あるいは70年代前半頃まで)、日本の歌手の多くはNHK紅白歌合戦に出場すること、レコード大賞を受賞することに大きな価値や意義をみいだし、また名誉としていた。
が、80年代にはいり、当時ニューミュージックと呼ばれていた音楽がレコード売上の主流をしめるようになると、NHK紅白歌合戦への出場を辞退する歌手・ミュージシャンも少しずつあらわれて、またNHK紅白歌合戦に出場すること、レコード大賞を受賞することに価値や意義をみいださない歌手・ミュージシャンも徐々に増えていった。
そしてその傾向は年とともにつよまっていった。
レコード大賞に関心のある人は現在では少数派にすぎないだろう。
NHK紅白歌合戦の方は、レコード大賞に比べればまだ権威は残っているし、出場することに価値や意義をみいだしている人は多い。
それでも以前に比べれば、影響力や世間の関心が薄れていることは否定できないだろう。

日本の作家の意識や価値観は、1970年代頃までの歌手のそれに似ているなと感じる。
芥川賞・直木賞を受賞することに大きな価値や意義をみいだしている人がかなり多いだろう。
だが、候補になることを拒否する人もあらわれている。(もっとも、昔から受章を拒否する作家は少数ではあるがいたと思うが。)
文学・小説の世界が音楽と同様の歴史をたどると、これから、候補になることを拒否する作家が徐々に増え始め、20年位たったら、有力作を書いた作家の多くが、候補になることを拒否する、なんて時代になっているかもしれない。
 
 
20年以上前から思っていたことだが、社会学者かノンフィクションライターが、日本の作家の芥川賞・直木賞に対する意識調査をやらないかなと思っていた。
芥川賞・直木賞に権威を感じるか、両賞を受賞したいか、といった点を中心にして。
全員が本音で答えてくれたら、かなり面白い調査結果が出るんじゃないかと思っていた。
だが、芥川賞・直木賞は文壇あるいは出版界の天皇のような存在で、批判することがタブーになっているようだから、まず実現はしないだろうけれども。

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