憲法9条が改正されたら軍国主義が復活するか

・ブログに2010年11月14日公開した文章の転載
 
90年代後半以降、左翼的な言説・護憲派的な言説は退潮していったから最近ではあまり聞かなくなったが、80年代までは「憲法9条を改正したら軍国主義が復活する」といった主張をたまに目にして、それに対する反論もみられた。

この意見が妥当であるかは、憲法9条を改正したらすぐに軍国主義が復活すると主張しているのか、それとも将来の軍国主義復活への道を開くと主張しているのかで判断がわかれる。

前者の意味(憲法9条を改正したらすぐに軍国主義が復活する)ならば、こうした主張は的外れな主張、軍国主義に対する過度な拒否反応にすぎないといえる。
実際、憲法9条改正を主張する人のうち、軍国主義を復活させたいと考えている人は極少数にすぎないだろう。

後者の意味(将来の軍国主義復活への道を開く)ならば、そうした危惧はまったく的外れとはいえない。
日本のように経済を維持するのに必要な資源・食糧の多くを輸入に頼っている国は、世界規模での経済危機がおこり、国際関係が緊張する状況に直面すれば、危機的状況を軍事力の行使によって乗り切ろうという勢力が台頭するだろうから、軍国主義が復活する可能性は常にあるといえる。

では憲法9条を維持していれば軍国主義の復活を防げるかといえばそんなことはない。
軍事独裁政権が誕生すれば憲法9条など真っ先に改正されるだろうし、それ以前に国民の多くが憲法9条改正に賛成するような状況にならなければ軍事独裁政権は成立しないだろう。

だが逆に考えると、国民の多くが軍事政権を支持するような状況、そのような状況が生じなければ憲法9条は改正されないかもしれない。
改憲派の人たちが、どんなに必死になって改憲運動をしても、軍国主義が復活するような経済情勢・国際情勢にならなければ憲法9条は改正されない。

一方、国際的な経済危機が生じ、国際関係が緊張状態におちいれば、護憲派がどんなに頑張っても軍事独裁政権が誕生し、あっさりと憲法9条は改正されてしまうかもしれない。
だから「憲法9条が改正されたら軍国主義が復活する」という主張は、実は一面の真理をいいあてているのかもしれない。

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