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赤面が止まらない

暑い。
なんだこれは。
聞いてはいたけれど。
黄砂も来るのかよい。

昨日、効果が出てるか見ますみたいなので採血したのね。
それがいつもなら座って腕をまくってなんだけれども。
採血の量と、念のために少し落ち着いてから採りたいとか言われて。
ベッドに15分横になってから採血しますとか言われたのですよ。
いいですけど、多分、15分あったら寝ちゃうと思いますと伝えると。
いいですよーとか言うわけです。

ならばと横になった瞬間に寝たんだと思うんですけどね。
「じゃあ、採血しますね!」と声が聞こえまして。
はっ!と目が覚めたとき、完全にイビキをかいていました。
寝たまま、腕をまくられる時のこの恥ずかしさ。赤面。
カーテンを隔てた向こうには病院の人たくさんいるし。

でね。何事もなかったような顔をしているわけです。
いやいや、絶対に聞こえていましたよね?
ガーガー言っちゃってましたよね。
なんだったらグゲッグゲッって詰まったりもしましたよね。
もうこのまま寝かせてしまうという選択肢もよぎりましたよね?
起こすまでは笑ってましたよね?

被害妄想甚だしく思い込みながら採血されるという。
どうかこのままリッターで持っていっちゃってください。
どうせなら、イビキで笑ってくださいと心の中でつぶやきました。
笑われた方がどれだけ気が楽か。

時に人は人に気を使い。
あざ笑うことは人を傷つけることだと我慢する。
ああ、それはわかっているのです。
わかっていながらも、その気を使ったスーンとした表情に。
気を使う程の事でもない事に気を使わせた情けなさに。
逆に傷ついていくという。

ああ。これだよ。
これなのだよ。
人は人に優しくするのに。
それでも人と人とは齟齬が生まれていくのだと。
親子でも兄弟でも他人でも。
人は誰かを想って、無意識に傷つけてしまう。
理解したいのに赤面は止まらない。

採血の跡には小さな絆創膏がかすかな痛みと共に残っていた。

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