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神様とカシュヴァーンと私

デビュー作「死神姫の再婚」一巻が丸ごと公開されております。

死神姫の再婚/小野上明夜 - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/1177354054884239559

てな訳で、今まではネタバレに引っかかるなと思って言えずにいたことを、平成も終わる日にちょっとここで書いておきたいと思います。

※以下「死神姫」一巻の内容についてのネタバレを含みます。未読でネタバレがだめな方はお気を付けください。



「死神姫」を読んでくださった方はお分かりだと思いますが、このお話は割とガッツリ内容に宗教が絡んでいます。投稿の段階では、実はそういった色はほとんどなくて、ラスボスはアリシアのおじさんでした。

ですが改稿を重ね、資料を読み込むうちに、「雰囲気とはいえ中世を舞台にしている内容で、宗教にまるで触れない世界観もヘンだな」と思ってそういうカラーを織り込んだ次第です。

というのも私自身、おそらく平均的な日本人より宗教と馴染み深い人生を送っていたからです。私の祖母は某仏教の宗派の非常に熱心な信者で、毎日休みなく(覚えている限り、本当に毎日だったと思います)お寺に通い、檀家として掃除その他の仕事を進んでこなしていました。私も子供の頃は祖母の勧めで寺に通わされ、いろいろな仏事に参加したりしていました。

正直、私自身には仏の教えは全然身に付いていません。ていうか人がいなくて静かだったので、よくお寺の墓場で遊んでいた罰当たりな子供だった。蛇を見付けてはしゃいだりしてました。ですが、祖母にとってお寺と仏様という存在が非常に大切なものだということぐらいは伝わっていました。

祖母が亡くなった際、生前の献身へのお返しとして、お寺のお坊さんが位の高い戒名を無償でくださいました。通常ですと五十万だとかします、最高位の戒名だそうです。来る日も来る日も寺に通っていた祖母には相応しいものですし、ありがたい話です。きっと喜んでいると思います。

ですが、残された祖父が体調を崩し、死が近付いて来た時、「わしにはばあさんと同じ地位にあたる戒名は高くて買えない。死んだ後、ばあさんに会えないかもしれない」と心配していました。

結局お寺が気を遣ってくれて(祖父は別に寺に何かしていた訳ではないのですが)、祖母と同じ位の戒名をくださったことで問題は解決したのですが、その時に感じたやるせなさは心に残っていました。じいちゃんとばあちゃん、あんなに仲良しだったのに、死んだ後も一緒にいるためには高いお金を払わないといけないんだな。

今になって思い返せば、祖父も私も戒名についての理解が浅かったんだなと思うのですが、その時の率直な気持ちを織り込んで〈翼の祈り〉の教えは出来上がりました。なんちゃって中世ヨーロッパが舞台なので、宗教=キリスト教がベースというのが一般的だと思いますが、天国へ行くために生前の善行もしくは寄付と引き換えの翼が必要、という考えは戒名からヒントを得ています。なお聖女アーシェルについては、クマリ信仰を参考にしています。

そういう訳で、カシュヴァーンの宗教に対する考え方は、祖父の言葉にショックを受けた時の私がベースになっております。彼の中で「神様」と「神様を愛している、必要としている人間」が区別されているのはそのせいです。おかげさまで書きやすいヒーローではありました。

ただ、書きやすい分同族嫌悪もひどくて、この……くそ……この……お前! と思った回数が一番多い登場人物でもありました。何よりアリシアと結婚してるのが一番許せないですね! 一巻のあとがきにも書いたけど、あの子は私が赦されたい理想の嫁だからな!?!??!???!

ちょっと取り乱しましたが、そういういろいろ複雑な想いを込めて書いた作品です。楽しんでいただければと思います。

かなうなら、他の作品も楽しんでいただければと思いますので、商業作品はもちろん、5/12 コミティア128 の合同誌、個人誌もよろしくお願いします!





小説家。「死神姫の再婚」でデビュー以降、主に少女向けエンタメ作品を執筆していますが、割となんでも読むしなんでも書きます。RPGが好き。お仕事の依頼などありましたらonogami★(★を@に変換してね)gmail.comにご連絡ください。