本当の運命

運命の出会い


出会いはいつだっただろうか
全く記憶にもないくらい遠い昔に
私たちは出会っていたが
まさかこんなに時を経て
共に暮らし始めることになるとは
夢にも思わなかった。

平成最後の12月
私は熱海で美味しいお茶に出会った。

お茶同様に
私のこれまでとは交わらなかった梅園で
咲き誇る梅の花を見ていた時
園内でお茶を無料で配布していた。

「お茶か、いらないな」そう思った。

お茶と梅園と私は34年間で
全く関係を築いていないのだから仕方がない。

そんな私に友人(静岡生まれ静岡育ち)が
「お茶飲まんに?」と言った。

温かい茶は好かないんだよなと思いつつ
友人と梅園が折角勧めてくれたわけだし
私はしぶしぶお茶を口にした。

お・・・美味しい・・・・。

衝撃だった。

お茶は飲まないと言いつつ
ペットボトルの冷たいお茶は数えきれないほどに飲んできた。
緑茶ハイだって何百リットル飲んだか分からない。

だけど、私はそこで気付いた。

【私は本当のお茶をまだ知らない】

温かいお茶が美味しいなんて今まで知らなかった。
パクチーの美味しさやテキーラの美味しさは知っていたが
お茶の美味しさを知らなかったなんて、灯台もと暗し。

思わず、お茶を買って帰ろうかとも思ったが
生憎、家には急須も湯のみもないので
私はこのまま一生
ペットボトルのお茶と
生涯を共にする覚悟を決めた。

まるで、本当は幼馴染が好きなのに
親の言いつけで見しらぬお坊ちゃんと結婚をする気分だ。

運命の悪戯

だが、運命とはいたずらで
私はまた本物のお茶に出会うこととなる。

年が明けた2019年正月
夫の祖母の家に新年の挨拶へ行くと
お年賀で新茶と海苔をいただいた。

もう忘れようと思ったのに・・・
私は親の決めた人と結婚をするから・・・

新茶を抱きしめて、私はぐっと気持ちを抑えた。

そしてその翌月
友人から熱海のお土産だと言ってお茶の葉をもらった。

もう運命としか思えなかった。

今ある決められた生活よりも
私は何があっても彼と共に生きたい。
心がそう叫んでいた。

逸る心をなんとか落ち着かせ
私はAmazonで急須と湯のみを購入した。

あれから数カ月
私は本当に好きな人と幸せに共に暮らしている。
正直、不自由はある。

お茶の葉をわざわざ缶から適量出してお湯を沸かし
優しくそれを急須に注ぎ、飲み終わって洗う際には
シンクに茶葉が広がって鬱陶しくも思う。

だけど、私は幸せだ。
何故なら、お茶が美味しいからだ。

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