ハイレゾ・ミュージックバーに行ってきた

 ハイレゾ・ミュージックバーというのは、Spincoasterという音楽メディアが経営する音楽バー「Spincoaster Music Bar」のことです。ハイレゾ音源とヴァイナルレコードが良い音で聴けるのが売り。

Spincoaster Music Bar グランドオープンのお知らせ

 これが先日クラウドファンディングでオープンに向けて出資者を募っていて、面白そうなので一口乗ったところ、めでたく目標金額に到達し、先月末に開業したわけです。私は1万円出資でゴールド会員に。これが会員カード。

 で、先日、予約をして仲間と誘い合って訪問してきました。メンツは某レコード会社ディレクター、特殊翻訳家、ITライター、ゲームメーカー勤務など、筋金入りの音楽好きのうるさ方連中です。

 代々木駅から7〜8分歩き、小田急線の線路を渡って、そろそろ店も少なくなってきたところにこの看板が。

お店のドア。

重い防音扉をあけて中に入ると、こんな感じ(写真は公式サイトから拝借)

 あとは持ち込んだ音源などを聴きながらひたすら飲んでいました。音源の持ち込みは1人1曲と決まってますが、一瞬ほかのお客さんがいなくなって我々の貸し切りみたいになった時間帯があり、その時はここぞとばかりにわがまま放題で音量をあげてもらい、いろんなジャンルの音源をかけてもらいました。イケメンと評判の店長が愛想良く応対してくれます。持ち込み音源は、ハイレゾの場合データをUSBメモリに入れ、お店のハイレゾ用プレイヤーのHDDに転送し、タブレットで操作してプレイする(ただし、持ち込めるのは独自音源・未流通の音源などのみ)。ヴァイナルレコードは2台あるプレイヤーで、曲名を指定するとお店の人がかけてくれます。お店の使用オーディオ機器

 スピーカーはヴァイナルとハイレゾで、それぞれ別のスピーカーを使っています。ヴァイナルはこれで。musikelectronic geithain RL904

 これでまず、去年リリースされたスティーヴ・アルビニのシェラックの新作を聴いたんですが、ロー(低域)の迫力にびっくり。ダンス系やエレクトロニカ系ではなく、ロック・バンドのレコードでこんなにローが入っているのも珍しいですが(アルビニのこだわりでしょう)、かなり大きな音量でもへこたれることなく、ストレスなく重低音が再生されるスピーカーがすごい。16センチウーファー、398 x 254 x 345 mmという小さなサイズとは思えない再生能力です。そのあとにかけたボーズ・オブ・カナダの新作は、シェラックほどローは入っていなかったんですが、やはり低域に力があり、音が緻密で情報量が多い。高域の伸びや華やかさというより、どちらかといえば中低域のパワーと密度の濃さで聞かせるタイプのようです。最新の新譜から、80年代のロックやニュー・ウエイヴ、90年代テクノなどいろいろ聞きましたが、古い録音を雰囲気よく聞かせるというよりは、新しい録音に向いているように思いました。特に分析的というわけではないですが、解像度が高く、録音状態の善し悪しが素直に反映されます。世界中のスタジオでモニタースピーカーとして採用されるだけのことはあります。サイズは家庭にはちょうどいい大きさで、そろそろスピーカー買い換えを考えていた私は俄然購買欲が湧いたんですが、ペアで100万超はさすがにおいそれと手は出ません。ひとまわり小さい下位機種RL906(ペアで50万ぐらい)なら頑張ればなんとかなりそうですね。

 それにしてもいい音でいい音楽を聴くと気分があがりますね。アルコールも回り、会話も弾んで、いい感じです。

 ここでUSBでもっていったハイレゾ音源を聞いてみます。プレイヤーのソニーHAP-Z1ESは音の良さに定評があります。スピーカーはこれ KOON 400NT

 日本の音響機器のベンチャー企業が作ったもので、受注生産、世界に数台しかないらしいです。サイズは決して大きくなく、昔ながらのジャズ喫茶の巨大JBLスピーカーなどを思えば、形状も含めいささか頼りない感じ。バーカウンターの後ろで小さめの音で鳴っていたので、我々の席からはBGM程度にしか聞こえず、素性のいいスピーカーであることはわかりましたが、それ以上の印象もなく。ところが貸し切り状態になって音量をあげると仰天。サイズからは想像もできない堂々たる鳴りっぷり。超高域から超低域までバランスよく歪みなく鳴り、しかも音の立ち上がりが抜群に速い。リズムセクションのキレの良さと上モノのクリアで明晰で分離のいい、キレのいい音は、とにかく圧倒的でした。コーネリアスやマッシヴ・アタック、宇多田ヒカル、吉松隆の「タルカス」など、いろんな音源を聴きましたが、とりわけドゥービー・ブラザーズの「Natural Thing」70年代アメリカ西海岸ロックの気持ちのいい解放感がとりわけ印象的でした。
 前述のRL904も素晴らしいですが、20kHz以上の超高域は出ないので、ヴァイナル専用。超ワイドレンジ音源の多いハイレゾにはこの400NTという使い分けがなされているということです。いかにも現代風のハイスピード音響なので、RL904以上にソースの粗をほじくり出しそうですが、いい録音の音源をいい音で聞くには、このうえないスピーカーではないでしょうか。受注生産。いったいいくらするんですかね〜 

 正直、訪問するまでは半信半疑な部分もあったんですが、たっぷり音を聴いて納得しました。いい音楽をいい音で聞きたい音楽マニア、もちろんオーディオマニアも、「Spincoaster Music Bar」、訪問の価値があると思います。moraとタイアップしているようですが、もう少しお店で聞ける音源が増えるといいですね。なお、お店のオーディオシステムのなかではアンプが弱点のようで、いずれ入れ替えて音のグレードアップを図るとのことで、これも楽しみです。
 もちろんオーディオに関心がなくても大丈夫。お店の雰囲気もいいし、店長もイケメンw お客さんも平日にも関わらずよく入っていたので、予約したほうがいいでしょう。ちなみにフードは乾き物のツマミ程度しかありません。

 それにしてもRL904、400NTという最新モニター・スピーカーを聞いて、スピーカーに関する認識を新たにしました。プレイヤーやDACやAVアンプが最新テクノロジーでどんどん音が更新されているのはわかるとしても、スピーカーの原理は大昔から変わらないので、昔の機器でもある程度は戦えると思っていたんですが、最新理論と先端技術を駆使した現代スピーカーは凄いですね。あの程度の小型サイズであれだけの重低音を再生できるんですから。超ワイドレンジ、S/Nの良さ、スピード感…デジタル録音技術の進化につれ、機器も進化する。そんな当たり前の事実を思い知らされた感じです。久々にオーディオ熱がぶりかえしそう。

Spincoaster Music Bar公式サイト

住所:東京都渋谷区代々木2丁目26-2第二桑野ビル 1-C 
アクセス:代々木駅 徒歩4分 / 新宿駅 徒歩5分
Tel:03-6300-9211
Mail:bar@spincoaster.com
営業時間:19時〜24時(Bar Time)
定休日:月曜日
席数:17席

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