[オーディオ] すったもんだのROON導入記(後編)(大長文注意)

前編はこちら。

 話題の音楽再生/データベース・アプリ「ROON」の導入記。諸事情あって常用のAudirvanaが使えなくなり、新たな音楽再生アプリを探し始め、ROONに目をつけるまでが前回でした。

 そもそも私はWindows機を使っているころからのiTunes愛用者で、自宅で音楽を聴く時にPCからのデータ再生を主にするようになってからは、ずっと頼りにしてきました。音が悪いとかデザイン最悪とかいろいろ毀誉褒貶はありますが、音楽用のデータベース・ソフトとしてはこれ以上のものはなかなかなかった。とくに私のように毎日大量の音源を仕事で聴く者としては、データベースとしての利便性>音質>デザインです。CDを手に入れたらすぐリッピングしてデータ化し、iTunesで管理する。映像も同様に管理可能。もちろん配信で音を買った時も同様です。iCloudは使っていませんが、Apple Musicとアプリを共有できる利便性もあります。音質についても、高音質で定評のあるAudirvana PlusをiTunesと連携させれば大きな問題はない。

 しかしiTunesには重大な欠点があります。それは管理データの量が増えれば増えるほど、動作が重くなること。私はThundelbolt接続のHDDを2台(合計6TBのHDDに4TBほどデータが入っています)デイジーチェーン接続で音楽データ用のストレージとして使っていましたが、とにかく重い。とくに検索時の動作の遅さといったら、とても耐えられない。検索は一番使う機能なので、相当にストレスが溜まる。

 そんなわけでAudirvanaが満足に使えなくなり、iTunes+Audirvanaというタッグにもガタが来ている状態で、新たに「使える」音楽再生/データベース・ソフトを探す必要があった。そこに現れたのがROONというわけです。Philewebの紹介記事で逆木一さんが熱を込めて書いておられますが、その機能の多さは圧巻。データーベース・ソフトとして相当に洗練されたアプリであること、音楽データを管理する際に悩みの種のひとつであるメタデータの扱いで、相当に力になってくれそうであること。そして音質も単体プレイヤーとしてどうやらそこそこ行けそうだということ。

 問題は年間使用で119ドル、永久使用で499ドルという腰が抜けそうな高額なプライシングです。果たしてそれだけの価値があるのか。2週間の試用期間中に判断することにして、まずはダウンロード。でもその前に入会手続きをとり、いろいろ必要事項を記入してIDを取得する。クレジットカードの番号まで書かされますが、試用期間を終える前に解約すれば大丈夫なはず。

 ダウンロードからインストールはとくに難しいことはありません。IDとパスワードを打ち込み、音源のある場所を指定し、TIDALのアカウントを持っていれば記入する。早速ROONがストレージを探索してファイルを分析し、次々とROONのデータベースに登録していく。かなりの速さです。とはいえ合計4TBのデータです。時間がかかりそう…ということでしばらく放置しておくことにしました。

 ふと気づくとROONの動きが止まっている。終わったのではなく、なにかの事情でデータのインポートが止まってしまったらしい。まだ全ファイルの半分ほどしか登録されていない。いろいろ調べますがまったく動く気配がない。Roon→preference→settings→setupを覗くと、バックグラウンドでデータを解析し最適化する作業も止まっている。ウンともスンとも言いません。ソフトを再起動したり、PCを再起動したり、ほかに動かしていたiTunesなどのアプリを全部落としても、全然動く気配がない。settings→storageで、登録してあるstorageを無効にしたり有効にしたりしてもまったく効き目がありません。

 身近で導入している友人がいたので知恵をもらいますが、どうもうまくいかない。万策尽きて、最後の手段として、先のPhilewebでROONの紹介記事を書かれていたROONの達人、逆木さんのブログを探しあて、そこから問い合わせてみました。

導入後数日たつのにいつまでたっても画面の右上のところがグルグルと回ったままで、クリックすると「Adding Music To Library」のところがずっと回ったままです。
preference→set upでBackground Audio Analysis Speedを見ると、Analyzingのところの数値が 13/ 102615 といった具合に止まったままで動きません。fastにしてもnormalにしても同じです。一旦roonを終了し再起動させるとまたAnalyseを始めますが、じきに(10~20曲ほど読み込んだ時点で)止まってしまいます。
同じコンピューターにインストールしているiTunesには20万曲ほどが登録されています。前述のThunderbolt HDDに、それだけの楽曲があるということです(合計4TBぐらい)。ROONが登録しているファイルは10万ちょっとで、つまりiTunesの登録楽曲の半分ほどしかROONには登録されていないようです。
ROONに登録できる楽曲数に制限があるんでしょうか?それとも当方のマシンがスペック不足なんでしょうか? 
操作してみて、ROONには非常に高いポテンシャルを感じているんですが、このままでは導入を断念することも考えなくてはなりません。
ご多忙中とは存じますが、考えられる原因と、対策をご教示願えればと思います。よろしくお願いいたします。

 このインポートが止まった状態でも、既に登録済の楽曲は聴けるし検索もできる。まだ10万曲の段階とはいえ、検索は非常に早く快適。音も悪くない。動作も軽く、情報量が豊富なので操作していて楽しい。期待に違わぬポテンシャルを感じていました。ふだんならこの止まった段階で「やあめた」と試用を中止するところですが、このまま断念するのは惜しい可能性を感じたのです。

 すぐに逆木さんから返事をいただきました。音源のインポートがうまくいかないという問題は、ROONの利用者フォーラムのようなところでも常に出ていて、ROON側もうまく対処できていない。iTunesで管理していたMP3を含むライブラリをインポートすると失敗するとか、異様に小さいサイズのMP3など壊れたファイルの存在が原因だ、という報告もある。なのでまずはその「異様に小さいサイズのMP3」などを削除して、もう一度ROONを再インストールして、改めてデータを読み込ませる。それでも無理なら、個別に問い合わせるしかない、ということでした。

 おそらく製作者に問い合わせても試用期間中に解決するのは難しいでしょう。ならば自力でなんとかするしかない。逆木さんの言葉を頼りに、異様に小さいサイズのファイル、あららさまに壊れているような出所不明のファイル、極端な低ビットレートのファイル…などを次々と削除したり、もう一度新たなファイルに転換したり。ついでに念のためと思いiTunesに登録していた映像ファイルも削除。そのうえでROONをインストールし直してストレージを最初から読みこませようとしたら、アンインストールしてもデータは残っているらしく、再インストールしても、止まったままの元の状態が再現されるだけ。なのでApp StoreにあるApp Cleanerというアプリを使い、関連のデータも含め完全消去してROONを再インストール。もう一度最初からセッティング作業に入り、ストレージを指定してインポート作業を開始します。

 しかしまたも止まってしまいました。もう一度音源データを精査し、怪しいファイルは削除するか移動して、アンインストールからやり直し。しかし何度やっても同じです。そのうち、いつも同じアーティストのアルバムをインポートしたところで止まるのに気づいたので、そのあたりのファイルが怪しいと思い削除してみます。どのファイルを削除していいかわからない時は、そのアーティスト関連のMP3ファイルを全部別場所に移動。そのうえでアプリをアンインストールして…という作業を繰り返す。するとまた別のところで止まるのでそのあたりのファイルを調べ…という具合に何度も再インストールと再読み込みを繰り返し、ようやく全ファイルを読み込んでくれました。最後まで止まらずインポートを終えた瞬間は感動しましたよw 逆木さんに返事をいただいてから丸3日、仕事をやりながらずっとその作業。疲れました…。

 どうやらなにか問題があるファイルを読みこもうとすると、そこでアプリ全体が、紙詰まりを起こしたようになって、動かなくなってしまうようです。iTunesに普通に読み込んでいて、聞くこともできるファイルなのに、ROONでは引っかかってしまう。実際に読み込ませてみないと引っかかるかどうかわからず、またどの曲データに問題があるかも見ただけではわからないので、トライ&エラーでえらく時間がかかりました。問題があったのはやはり古いMP3が多かったですが、わりと新しいApple Losslessファイルでも引っかかるものがありました。その多くがCDからリッピングしたデータです。さすがに配信サービスから買ったハイレゾデータではそんなことはありませんでしたね。

 私の音楽ライブラリは、配信されたDSDなどのハイレゾデータから、iTunes Storeなどで買ったDRM付きのデータ、CDリッピングのデータ、ネットから適当に拾ってきたデータまで、非常に幅広い雑多な音源が詰め込めています。リッピングデータも、あまり音質に意識がいっていなかったころは192kbpsの低ビットレートでインポートしていたりする。気づいた時は全部ロスレス・リッピングし直してますが、なかなかそういう時間はない。

 今回調べてみて一番時間の長いデータは、昔ナップスターで落としたヨーロッパのDJプレイの隠し録り音源で、6時間分ありました。まだダイヤルアップ回線のころですからDLしやすいサイズにするため、48kbpsとか、そういう超低ビットレートに圧縮されたデータです。音源そのものは貴重ですが、言ってみれば中古盤屋の倉庫の片隅で打ち捨てられた古いカセットテープのようなものです。本来であれば、そういうゴミのようなMP3ファイルはiTunesに任せ、出所のはっきりしたロスレス以上のキレイなファイルだけをROONに読み込ませるといいのでしょうが、それでは、今までのさまざまな音楽ファイルをすべて一元的に管理したいという私の目的からは外れてしまいます。

 逆木さんによれば、

Roonで読み込む際に問題を起こすファイルは、つまるところ「iTunesでしか機能しない何らかのメタデータがいつの間にか勝手に埋め込まれ、音源としての互換性を消失している」状態

と推測される、ということです。これは私の憶測ですが、そのタグの管理、メタデータの管理が、iTunesのヴァージョンアップを重ねるうち、収納ストレージを替えるうち、私の場合WindowsからMacへの移行などもあって、ぐちゃぐちゃになってしまったのではないか。もしかしたら、iTunesの検索がめちゃくちゃ重いのは、それが理由のひとつじゃないでしょうか。

 ところがROONはまだ出来たばかりのアプリで日が浅い。なのでタグの付け方やメタデータの処理も、独自の統一されたフォーマットとデータを元にやっているので整合性が高い(個々のセッティングで、元の音源ファイルにくっついてきたメタデータと、ROON独自のタグのどっちを優先するか選ぶ項目があります)。だから検索も早い、というわけです。iTunesでタグを少しいじったら、ROONに登録されているデータに即反映されたのはびっくりしました。

 そんなわけで全データのインポートを無事に終わり、今はほっとしているところです。まだ全然使いこなせていませんし、いろんな機能もほとんど試していない。ただ仕事に必要な音源を検索して聴いているだけですが、とにかく動作が速いというだけで感動している状態です。しばらくは操作に慣れているiTunesとの併用が続くと思いますが、もう少し使い込んだら改めてリポートを書くかもしれません。それまでは逆木さんのブログを読んで、いろいろ勉強することにします。いやはや疲れました・・・


逆木一さんのブログ「言の葉の穴 オーディオ・創作・地元ネタ、日々の雑感垂れ流しブログ」 



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