[野球] 日本ハムの大補強、そしてあの選手の動向は?

 衝撃的なニュースが飛び込んできました。ハムの高梨、太田とヤクルトの秋吉、谷内(やち、と読むそうですね)の2対2トレードです。

 高梨は新人王を獲って日本一に貢献した2016年以降、ここ2年ばかり明らかに伸び悩んでましたし、今年の夏以降はずっと鎌ケ谷だったので、戦力構想から外れてしまったのかもしれません。ケガ持ちというわけでもなくまだ若いので、環境を変えて一皮剥ける可能性があります。逆にいうと、ハムではこれ以上伸びしろがないと判断されたわけです。同じように伸び悩んでいる有原や加藤ではなく高梨が放出となったのは、左と右(加藤は左、高梨は右)、ドラフトの指名順位(有原と加藤は1,2位、高梨は4位)と出身大学(有原は早稲田、高梨は山梨学院)の違いでしょうか。しかし2年前の新人王で、先発でも中継ぎでもいける27歳をあっさり放出してしまうのはハムらしい。ハムの放出選手の「見切り時」の巧さは皆が認めるところですが、それにしてもフライアウトピッチャーで被本塁打の多い高梨が狭い神宮でちゃんとやれるのか。活躍するためには、配球の工夫、やたらストレート勝負にこだわらないなど、まず本人の意識改革が必要かもしれません。

 太田は内野のユーティリティプレイヤーとして貴重な存在。入団4年目のまだ22歳で、今年ドラフトで指名された大卒選手と同じ学年と、伸びしろがあるどころか、まだまだこれからという選手です。守備は堅実で内野はどこでも守れる。足は速い。打撃はまだ未完成ですが今季のヒット7本のうち2本が3塁打と、パンチ力もそれなりにある。中島(来年オフFA)の後釜として期待の若手だったわけですが、ここで放出となったのは、ハム球団は年齢が近く守備位置もかぶる石井一成や渡邉諒の方をとったということでしょう。年齢が下の選手では平沼もいます。太田はうまく育っても飯山2世(守備固め代走専門)、という見切りがあったのかもしれませんが、しかしまだ22歳です。これからいくらでも変身・成長する余地はあるわけで、あまりにも早すぎる放出としか言えない。太田は地方の高卒のドラ8で、渡邉は外れ外れとはいえ野球名門校出のドラフト1位、石井は2位で、早稲田大学出でもあります。私個人としては高梨よりも太田の放出の方が残念ですが、乞われていくのだからヤクルトで頑張ってショートのレギュラーを獲ってほしい。山田のメジャー流出があるなら、二塁だって狙い目です。

 一方、ヤクルトからやってくる秋吉は、新人時から3年連続60試合以上登板、70試合以上登板も2回ある右のサイドハンド。ハムでは考えにくい酷使ですね。建山や江尻のあと絶えていた変則右腕枠ということでしょうが、実績は十分ながら登板過多が原因の故障持ちで、ここ2年は本領を発揮できていないというのが気になるところ。同じヤクルトからの移籍・故障組の杉浦のリハビリがうまく行って、来季は先発ローテも期待できるまで回復しているという実績もあり、秋吉も再生可能とみているのかもしれません。

 もう1人の谷内は太田同様に、内野ならどこでも守れるユーティリティプレイヤーという触れ込み。とはいえ年齢は27歳。中島や杉谷、大田泰示と同じ学年ということなので、ハムでは中堅どころです。これまでの成績は杉谷より下。実際のプレーを見たわけではないのでなんとも言えないですが、これから大きく化けてのレギュラーを期待するというよりは、ベンチに置いておくと使い勝手のいい選手という感じでしょうか。

 いろいろ調べると、今回のトレードはハムの損、ヤクルトの得という声が高い。秋吉が首尾良く再生して全盛期の力を発揮できれば、もちろん盤石のセットアッパーとして期待できるでしょうが、そうでない限りまだ若く伸びしろが期待できる選手を2人放出したハムが若干損、という意見はわかる気がします。しかし今回の場合それだけを見るのではなく、去年の杉浦⇔屋宜のトレードも加味して考えれば、ちょうど釣り合いのとれるトレードとなるんじゃないでしょうか。前述の通り、杉浦がもし故障が癒え万全の体調なら、来季は先発ローテの一角を担うことになると思われるからです。今年のCSで高梨ではなく杉浦を先発に大抜擢したのが、ハム球団の杉浦への期待度を表しています。そういう大舞台で来季以降も投げてくれというメッセージです。つまりは杉浦⇔屋宜はハムが一方的に得なトレードになりそうで、今回のトレードもあわせ高梨大田屋宜⇔秋吉谷内杉浦の2年越しのトレード、と考えればちょうど釣り合いがとれるということです。

 さて、今回の大型トレードの直前には、オリックスのエース金子千尋の獲得という寝耳に水の大ニュースがありました。

 金子がオリックスから自由契約選手として公示されて即交渉し、あっという間に入団決定。実際に本人にアプローチしたのはもっと前かもしれないし、もしかしたら金子の方からハムに売り込んだのかもしれませんが、いずれにしろハムが金子の獲得を熱望していたことは確かのよう。金子の獲得はマルチネスが流出したさいの穴埋めという意味もありますが、それ以上に、2014年には沢村賞も獲った日本最高レベルの技巧派右腕の経験とノウハウを、伸び悩むハム若手投手に伝授してもらいたいという期待が大きいと思います。特に誰もがポテンシャルを認めながら殻を破れない有原と、ドラ1新人吉田輝星は、彼に学ぶところ大じゃないでしょうか。2年契約を破棄してまでトンキンを解雇して彼がつけていた背番号19を金子に託したのは、ハム球団としては最大限の配慮でしょう。実際にその名前に見合った活躍をしてくれるかどうかは、体調次第。逆にいえば体調さえ万全で1年間ローテを守れれば、全盛期から比べるとやや衰えているとはいえ10勝ぐらいは期待できる。ですがそれ以上の波及効果があるのではないか、というハム球団の見立てだと思います。

 年俸1億5千万+出来高の1年契約。金子ぐらいのベテランなら複数年契約を欲しがりそうなものですが、1年間しっかり働いて、まだまだできることを証明し、より条件の良い球団、あるいはメジャーを視野に移籍を目論んでいるのかもしれない。いわばハムとしては日本語ができて日本野球の経験豊富な外国人助っ人を雇ったようなものでしょうか。それでいいと思います。もちろんこのままハムに骨を埋めてもらえるなら、いうことなし。

 さて金子の前には新外国人投手ハンコックの獲得も発表されています。

 直後に2年契約だったはずのトンキンが解雇されているので、トンキンの抜けた穴にすっぽりはまる形。投手としてのタイプはトンキンに似ているようですが、メンタルに問題のあったトンキンの二の舞にならないよう、首脳陣はうまくコントロールしてほしい。

 一方で、レアード、マルチネスという両外人との契約交渉が難航しているとも伝えられています。2人ともMLBへの復帰を狙っているということですが、レアードは近年の成績を見てもMLBは望み薄でしょうから、NPBの他球団と条件面で天秤にかけているということでしょう。私の勘ですが、レアード残留に関してはハム球団はそれほど熱心ではないはず。既に流出を前提に近藤や大田、淺間に秋季キャンプで3塁の練習をさせていたからです。高額年俸のレアードがいればそのぶん伸び盛りの若手のフタをしてしまうことになる。王柏融の獲得で外野はだぶつき気味。彼らを活かすためにはレアード流出もやむなしということです。マルチネスはMLBの動向次第でしょうが、こっちは残ってくれるに越したことはない。来季はロドリゲスが先発ローテに入ってくる可能性がありますが、もしマルチネスが流出となると、先発候補の外人をもう1人獲るかもしれませんね。

 まだまだ触れなくはいけない話題は一杯ありますが、最後に気になる選手の動向について。田中賢介です。ハムは既に全選手の契約更改を終えてますが、唯一賢介だけが未更改のまま。地元北海道でいろいろイベントに出ていいるようですが、契約更改のニュースは伝わってこない。あまり考えたくないですが、契約の下交渉でもめている可能性があります。去年の契約更改で大減俸を食らった賢介が「実質的に戦力外みたいなもの」と自嘲していたのは、「体調は万全だしやれる自信もあるのに、チームの若手育成の方針で出番を減らされ、それを理由に減俸は納得できない」ということだと思います。今季も若手優先起用は変わらずベンチを温めることが多かった賢介は、内心で球団(あるいは、栗山)のやり方を快く思っていない。その一方で同じ歳の出戻り鶴岡は重宝され、今回の契約更改でも大幅アップを勝ち取った。全くの憶測でしかないですが、賢介は球団にそれなりの待遇を要求するか、入れられないなら退団→他球団移籍まで視野に入れているのかも。ハム球団としては、選手としてはもう多くを期待してないけど、しかし将来の幹部候補として、いずれはコーチとして球団に残ってほしいと思っている。もちろん根強い人気のある選手だから、もめた末に出て行ったというような印象を世間に与えたくない。あるいは、引退したい賢介と、来年引退興行で稼ぎたい球団の思惑のズレとか?
 ……というようなせめぎ合いがあるのでは、と勝手に憶測します。もちろんこの記事をアップしたあとで何事もなかったようにニヤニヤ顔で契約更改、なんてことがあるかもしれないし、そうなって欲しいと願ってますが・・・。谷内の獲得は、そんな賢介の動向と関係あるような、ないような・・・

(追記)

< 日本ハムは救援陣が課題で、数少ない右サイドハンドで実績もある秋吉が補強ポイントに合致。谷内は内野守備力の高さに加え、同僚や後輩からも慕われる人望とコミュニケーション能力の高さも評価された模様だ。>

なるほど人間性を評価……それはさすがに一ファンにはわからない領域ですね。将来はヤクルト→ハム移籍でそのままコーチになった三木みたいな道のりを辿るんでしょうか?

よろしければサポートをしていただければ、今後の励みになります。よろしくお願いします。