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 [オーディオ] EMC設計の電源工事

 最近話題のEMC設計の電源工事をやってもらいました。自宅マンション内の書斎兼リスニングルームの電源環境を改善するための工事です。

 オーディオにおける電源の重要性はここで改めて繰り返す必要はないでしょう。拙宅は都内の集合住宅なのでオーディオ的には決して理想的とは言えない環境であり、私は某社の電源コンディショナーを数年前に導入していました。知り合いの某オーディオ評論家に言わせれば「クリーン電源なんて使ってたらロクな音にならない」とのことですが、そうは言っても元の電源環境が劣悪な場合は,デメリットよりはメリットの方が大きいと思いますし、ウチの電源コンディショナーは比較的音質への影響が少なく、S/Nが改善しかなりクリアで見通しの良い音になったと実感していました。


 ところがここ1〜2年でEMC設計という会社の電源工事で音が劇的に良くなったという報告をあちこちで目にするようになり、気になっていました。どうやらよくあるクリーン電源機器の導入とは別次元の改善効果があるらしい。しばらくEMC設計のSNSをフォローし、それとなく観察していたんですが、9月に「AV専用電源仮設実験」という「お試し」をやってもらい、その効果を実感したので本工事の施行に踏み切ったわけです。

 EMC設計は代表である鈴木洋さんがほぼひとりで運営しており、鈴木さんがひとりハイエースを運転して日本全国を飛び回り工事をやっているのでなかなかスケジュールが回ってこないんですが、なんとか年内に工事してもらいました。

 どういう工事かごく簡単に述べると、一般分電盤からオーディオ専用として使うキレイな電源を切り離してリスニングルームまで配線し、特製コンセントを通してオーディオ機器用に給電するというもの。うちの場合、玄関脇の下駄箱にある分電盤の横にEMC特製ブレイカーを設置し、それを通してオーディオ用電源を配線したわけです。理想的にはブレイカーからリスニングルームまでEMC特製のケーブルを使って給電することですが、集合住宅なので一般家屋のように屋根裏に入り込んでケーブルを這わせることが難しく、一般分電盤とリスニングルームが離れていて、建物内部あるいは外部を這わせるにしてもさまざまな制約があり、やろうと思えばできるが時間も費用もそれなりにかかる。なのでブレイカーからリスニングルームへの給電はエアコン専用として既に敷設済みのケーブルを転用し、手間と費用を抑えることにしました。エアコン専用と言ってもケーブルは十分に太く、オーディオ用に使うには十分。リスニングルームのエアコン用コンセントからケーブルを伸ばしてEMC特製電源ボックス(8口を2台)に繋ぎ、そこからオーディオ関連の電源をとる。かいつまんで言うとそういう工事でした。ちなみにエアコンの電源は、部屋にある一般電源用のコンセントからとることにしました。100Vのエアコンだったので一般電源で大丈夫だそうです。

 大事なのはEMCオーディオ電源には、オーディオ用機器だけを繋ぐこと。オーディオ機器はすべてEMC電源のみを使い、一般電源は使わないことだそうです。この場合の「オーディオ機器」とはケーブルで繋がっているすべての機器で、アンプやプレイヤーやROON Server用のPCやスイッチングハブやNASなどはもちろん、たとえばROON ControlやYouTube鑑賞などで使うMac Miniや、そこに繋がっているバックアップ用HDDやモニター、リッピング用ディスクドライブ、あるいはwifiルーターなどもすべてEMC電源から給電しています。なぜ一般電源に繋いだらダメかというと、そこからアースループが起きて音質が劣化する可能性があるから。ウチの場合8口の電源ボックスを2個、計16口を用意してもらいましたが、驚くことにほぼすべてオーディオ関連だけで埋まってしまいました。ちなみにEMCでない一般コンセントに繋いでいるのはオイルヒーターとか空気清浄機、プリンターなどです。工事は13時から始めて18時過ぎには終了しました。もちろんエアコン配線の流用ではなく専用配線を敷設するとなると、さらに時間はかかるはず。これらの工事をすべて鈴木さんが1人でやります。

 さて肝心の電源改善効果ですが、一言で言えば「圧倒的に情報量が増えた」ということ。単にノイズフロアがさがってS/Nが向上したというだけでなく、オーディオ機器からストレスなく音が出てくるようになった。上のコメントで言っているように、今まで半開きだった蛇口を全開にしたような感じで、低域などもどんどん出てくる。それでいてブーミーにならず、クリアで軽やか。オーディオ機器のポテンシャルがしっかり発揮されたという印象で、もちろん機器の個性や音色はそのままに、エネルギーと情報量だけが増えたという感じです。工事直後からどんどん音が変化していきますが、ある程度エージングが一段落して音が落ち着くのは2〜3ヶ月後、場合によっては1年後だそうです。今これを書いているのは工事から3日目ですが、既にかなりの変化を感じています。はっきり言ってこれまで使っていたクリーン電源よりもはるかに電源改善効果は大きいです。

 費用ですが、ずばり27万円でした。これを高いとみるか安いと見るかは人によって違うと思いますが、たとえばアキュフェーズあたりの高級クリーン電源を使うことを考えると費用は半分以下で済むわけです。アキュフェーズの音は聴いたことないので比較はできませんが、決してEMC電源が劣っているとは思えない。一般的なクリーン電源はノイズ軽減のためにフィルターを通したり波形自体を補正・再成形するなどしますが、これらのタイプは大なり小なり音質の変化は避けられない。でもEMC電源は流れてきたノイズの少ないキレイな電源を適切にとりだし配線・給電するだけなので音質への影響はきわめて少ないんですね。非常にシンプルでストレート。費用対効果、いわゆるコスパ(という言葉は好きではないですが)は最高だと思います。やれクリーン電源だオーディオ用電源タップだ、とあれこれ買い揃えてきましたが、もう電源関係で迷ったり悩んだりすることはないだろうと予感しています。

 もちろん以上の記述はあくまでも「私の環境では」という但し書きがつくので、工事のやり方や費用、手間、時間、そして音質改善効果は千差万別です。いきなり本工事は不可能で、まずは下見が必須らしいので、まずは仮設実験で効果(本工事の2割ぐらいだそうです)を確認し、打ち合わせ兼下見で工事の手順を決め、それから見積もりを出してもらい日程を決めて本工事という流れになると思います。つまり最低でも2回、鈴木さんに来てももらう必要がある。

 鈴木さんは大変雄弁な方で、オーディオのことや電気・電源のことをいとろいろ教えていただき、非常に勉強になりました。今後はエアコン配線流用から専用配線へのグレードアップを視野に、貯金に励みたいと思います(笑)。

 なお現在出ている「ステレオサウンド」誌にはEMC工事を施工したオーディオ評論家の詳しい手記が掲載されています。一戸建ての家で施工費は78万円ということでした。またやはり今出ている「サウンド&レコーディングマガジン」には、プライベートスタジオにEMC電源を導入したエンジニアの話も掲載されてます。そのエンジニアの影響でスタジオでの導入も増えているらしく、リスニングオーディオのプロと音楽制作のプロが両方評価しているということになりますね。下記動画も参考にしてください。



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