見出し画像

moreruインタビュー「やりたいことを全部やりたい。まだ全体の3%しかできてない」

  すごいバンドを知った。moreruというまだ20代前半の6人組である。すごい、というよりは面白い、ヤバイ、ゾクゾクする、というカジュアルな形容のほうが適切かもしれない。久々にインパクトのあるバンドに出会った気がする。

 moreruというバンドの名前はなんとなく知っていたが、初めて意識して音を耳にしたのは、その時はまだ発売前だった新作アルバム『呪詛告白初恋そして世界』だった。そのエネルギーの塊のような破天荒な音に一聴してピンときた私はBandcampで過去音源や関連音源をすべて大人買いして、11月20日に東京・下北沢Club QueでおこなわれたDMBQとの対バンでライヴを見て、さらに強烈な刺激を受けた。こいつは予想以上、期待以上のバンドだと思った。

moreru / 夕暮れに伝えて(Live at CLUB Que 2023/11/20)


 過去の自分の音楽体験からすると、本当に面白くて刺激的なバンドに出会うとまず最初に笑いがこみ上げてくるものだ。久々に私はニヤニヤしながらライヴを見ていた。80~90年代のスカムでジャンクなオルタナティヴ・ロック・カルチャーに親しんだ者にはある意味なじみ深いものも感じるが、それだけではない2020年代のバンドらしい感性が強烈に貫かれている。DMBQとの対バンでは客の年齢層が比較的高かったが、ふだんの彼らの主催ライヴでは10代〜20代の若い観客が狂ったようにモッシュを繰り広げているという。新作のミュージックビデオはこんな感じ。

EMO SCREAMO 2045 😈album teaser

moreru - 夕暮れに伝えて(OFFICIAL VIDEO)

moreru - 念写 (OFFICIAL VIDEO)

 ハードコア〜グラインド・コアからノイズ・インダストリアルに通じる徹底してラウドで破壊的なバースト・ノイズと、エモーショナルで叙情的な楽曲の劇的な対比、古い日本のロックや歌謡曲、J-POPなどからの影響、トラップやエレクトロ、『エヴァンゲリオン』などのアニメ〜オタクカルチャーへの共感と親和性といった複合的な要素がミクスチュアした音楽性は、80年代〜90年代以降のオルタナティヴ・ロックから2020年代のJ-ROCKやJ-POPまで包含したもの。特にライヴに於ける、聴く者を強引に巻き込み触発し挑発する破天荒でヤケクソなパワーとエネルギーは、おそらく誰が聴いても見ても強烈なインパクトを受けるはずだ。

 2018年にヴォーカルの夢咲みちるを中心に東京で結成された6人組。現在までに3枚のアルバムを自主制作で発表。『呪詛告白初恋そして世界』は、初の全国流通盤である。メンバーは
夢咲みちる(VOCAL)
コジマアツヲ(GUITAR,VOCAL)
石肉(GUITAR,VOCAL)
taga(BASS,VOCAL)
Dex(DRUMS,VOCAL)
岩本雪斗(NOISE,VOCAL)
詳しいバイオグラフィーは発売元のMusicminemのHPを参照。

 以下のインタビューはライヴの1ヶ月後にメンバー全員に集まってもらい話を訊いたものだ。こうした対面形式でのインタビューは初めてだったらしく、懸命に言葉を探しながら、そして時にメンバー同士でのディスカッションも交えながらの会話もまた、音楽同様に新鮮で楽しい体験だった。

Twitter(X)

Bandcamp

ヤバい!キライ!でもいいし、ヤバイ!好き!でもいい。とにかく興味を惹きたい



 ──先日初めてmoreruの存在を知って、アルバム『呪詛告白初恋そして世界』を聴き、DMBQと対バンでライヴ(11月20日)も拝見しました。めちゃくちゃ面白かったんですけど、あの時のライヴは皆さんとしては、どんな感じだったんですか?

Dex:楽しかったですよ。

コジマ:(観客が)黙って聴いている感じがすごく久しぶりで。

──ああ、なるほど。普段のライヴとはだいぶ雰囲気が違っていた?

コジマ:この前のはそうですね。

Dex:やる側は別にあまり変わらないですけど。お客さんは割と静かで。いつものライヴだとけっこう若い人が多いから。

――あの日のライヴはDMBQのファンが多かったってことですかね。

Dex:っていうのはあるのかな。あの時は。いつもとは違う新鮮な感じでやれてよかったです。

コジマ:普段はみんなけっこう、鬱憤を抱えているお客が多いから。

Dex:お客さんは暴れ放題みたいな。

石肉:(今回は)札幌でやった時に雰囲気が似ていたね。

──おそらく私も含めて初めて見る人が多くて、割とみんな遠巻きにしてみている感じがありましたけど(笑)。

Dex:たしかに。

──でも来ているお客さんは絶対好感を持ったというか、こいつら面白いって思ったはずですよ。

Dex:よかったです。

all photo by yui nogiwa

──今回のアルバムはすでに配信ではリリースされていますけど、反響や自分自身の手応えとか、いかがですか。

夢咲:あぁ…。どうだろう。手応えで言ったら、今、作っているやつの方が良いかな。基本的にアルバムを出すときって、アルバムを出す頃には次のことに興味が行っていて。レコ―ディングし終わったくらいの段階からもう次はどういうものを作ろうかと考えているので。その時点でもう自分のものではないみたいな感じ。手応えとかをあまり毎回感じることがない。でも作ったものを客として全部通して聴いたら、良いなって思いました。

――なるほど。

夢咲:でも反響は、学校の頃に聞きたかったとか、学生の頃に聞きたかったみたいな、そういう反応がすごく多くて。ちょっと気になりましたね。別に良いとか悪いとかではなく。

──それは、聴いている人が、自分の感性がまだ柔軟だった若いころに聞きたかったということなんでしょうか?

コジマ:そういう意見がチラホラと。ネットとか、ツイッターとか。

夢咲:エゴサ上で一番多かったのはそういう意見なんですけど。それは気になりましたね。

──でもそれってめちゃくちゃ誉め言葉なんじゃないですか?

夢咲:そうなんですかね。

Dex:それって何か、オトナの人が…オトナの人っていうと変だけど、そういう感想を持つって、音源を一個、外に置いているじゃないですか。自分の外に置いて壁を作って聴いている感じ。それが気になるみたいな。

夢咲:そうです。だからガチ中学生みたいなところからのレスポンスみたいなものがもうちょっとほしいなという感じです。

──なるほど。私もその「オトナの人」かもしれないけど、自分たちと同い年、もっと下の子に聞いてもらいたい気持ちが強いんでしょうか?

夢咲:そうですね。若い人というか、自分と同い年の人ですね。やっぱり意識せざるを得ない。聞き手として想定しているのは。

──それは、自分たちの音楽に共感してほしいという気持ちが強いということですか?

Dex:共感とはちょっと違う。

夢咲:共感と言えば共感なのかもしれないけど。なんか、“この感覚!”みたいな。“この感覚で行こう” “この感覚、わかる”、みたいな。自分が本当に最初に音楽とかロックを知った時って、新しい感覚、自分にない新しい感覚を授かったみたいな驚きがあった。“わかる!”みたいな。それを共感というのであれば、共感かもしれないです。Yokai JakiとかSEMATARYを初めて聴いた時に新しい感覚が自分にインストールされた感じがしたし、うわっ、これ新しい感覚だなって。

Dex:同じ方向を向いている、みたいな。

夢咲:新しい美的なセンスみたいな感覚。それをまだ過去にやられていない手法でやる、そういう感じですね。

Dex:中学生……に限らずですけど、若い頃に音楽を聴いて、良いなぁ、みたいに感じることはたくさんあると思うんですけど、たまに、“うわっこれマジでヤバい、最強”みたいなことがあると思うんですよ。それを目指している感じかな。”この音楽最強だし、これを聴いている俺も最強”みたいな感じ。結構そのイメージでやっています。

──わかるわかる、と思われるよりは、全く未知の価値観に出会った衝撃みたいなもの。”こいつやべえ”みたいな。

夢咲:でも、“こいつやべぇ”ってなるところにも、わかるなぁっていう感じが多少あって。

Dex:それはそうだよね。

夢咲: “わかりすぎる”みたいな、それが自分にヒットするのが、Dexの言う最強、みたいなことだよね。そういうものになってやろうとかは別に思っていないけど、納得する音楽を作って、そういうものを増やしたいと思います。これ!みたいな。

──でも、自分と全く接点がないようなものだったらそれで終わってしまうし。

夢咲:でも、なさ過ぎてもめっちゃ俺はヤバいって思う。フリッパーズ・ギターとか、初めて聴いた時、接点がなさ過ぎてヤバいってなって。逆に好きになった感じもある。だからmoreruを聴いてる人も、そういう音楽とめっちゃ関係ない人が殆どですね。

──自分と感覚が違う人であっても、ガツンと来るようなものがやりたい。

夢咲:“うるさい”みたいなのって身体的な、感覚的な反応だから。うるさいものって割と誰にでもうるさいじゃないですか。気持ち悪いもの、グロいものっていうのは。誰が見てもヤバくはありたいとは思う。

Dex:確かに。

夢咲:それが好きとか嫌いとかっていうのは、ご自由にどうぞっていう感じですね。誰が見ても、誰が聴いても、ヤバい!キライ!でもいいし、ヤバイ!好き!でもいい。とにかく興味を惹きたいっていうのはありますね。

──インパクトを与えたいと。興味という意味では、この前のDMBQとのライブではめちゃくちゃ見る人の興味を惹いていたと思います。

夢咲:そう、そういう子供なんで。中学の時とか、めっちゃ人の興味を惹きたいみたいな。

好きなものを全部やりたい。やりたいことはまだ3%しかできてない


──見ましたよ。代々木公園で夢咲さんが転げまわってる動画。16歳くらい?

Dex:もっと若い?14とか?

──14?!なんでああいうことをやろうと思ったの?

夢咲:だからその、興味を惹きたくて。なんなんですかね、承認欲求と言って差し支えない衝動。学校の体育の授業で着替える時に、ポロンってチンチン出しちゃう感じ。マジでそういう奴だったんで。しかもそんなに明るい奴がやってるわけではないので、目立つわけでもない。だから誰も別に気にとめない。だから……それが癖になってるのかもしれなくて。それをもっと大きくしたところで、ノイズとかになってくるんじゃないかな。

──なるほど。ノイズを選んだきっかけはあるんですか?

夢咲:本当にノイズをやっている人からするとサブカルみたいな感じですけど、大槻ケンヂの本をすごく読んでいて。『グミ・チョコレート・パイン』に「自分ボックス」っていうノイズバンドが出てくるんです。小説だから音はないけど文章の中で表現されているノイズを自分なりにやろうかなって思って。それがきっかけですけど、今はちゃんとノイズを聴くようにしています。入りはそういう、サブカル的なやつです。

Dex:ノイズがあった方がカッコイイしね、普通に。絶叫もそうだし。

夢咲:ノイズは音として、異常なくらい好きかもしれない。フェチ。ノイズには自分はそういうものを感じる。

──DMBQの時にライヴを拝見して、Youtubeで昔のライヴも観て。代々木公園の頃からやっていることは変わらないんだなという印象がありました。もちろんいい意味でですけど。ご自分ではどうですか?

夢咲:一番根本にある何かみたいなものは変らないと思います。形が違うだけで。

──代々木公園の頃から何が変わったかというと、バンドになって、メロディのある歌も歌うようになって、曲らしいことをやるようになった。その変わり目はどういうところにあったんでしょうか?

夢咲:それは……ノイズをやっているとやっぱり、けっこう難しいんですよ。自分がノイズっていう音楽で新しいことをやるのが普通に限界がある。だし、ノイズっていうのは好きな音楽の一つだけど、いろいろな音楽が好きなのでいろんな音楽を全部やりたい。歌とかも好きなので入れなくちゃいけなくて、歌っています。”全て”をやりたいですね。全てをやるにはノイズも必要で、ブラストビートも必要で、歌も必要という感じなんですね。とりあえず全てをやろうと。

Dex:最強になるためには全てをやらないと。

夢咲:もっとイケると思ったんです。「グラップラー刃牙」の強さインフレみたいに。俺はもっとイケるというかでもどうなんだろう。曲っていうことにアレされてるのかな。曲っていうことに。

Dex:ん? 何を言ってるの?

夢咲:曲は曲じゃん。フォーマットを超えられないでしょ。でもノイズは超えられるから…難しくなってきた。

Dex:メロディがあった方が良いよね。

夢咲:だからなんか、全てやるってムズいよね。全てをやりたい。でも音源って何かっていう話ですよね。

──メロディがあって、歌を歌うようになったのは、ノイズの限界みたいなものを超えたいということだったんですか?

夢咲:っていうことを今、言おうと思ったんですけど。でも歌を超えるにはノイズしか、曲、音楽以外でしかないんじゃないかというところもあって。でも、”歌”を作る感覚でやっているといった方がふさわしいかもしれないです。

Dex:確かに。

──歌を作る。

夢咲:歌を作っている。だからノイズの限界を超えようっていう大仰な想いよりは、他(の音楽)を作りたい方が正直。

Dex:歌が中心にあって、それに付随というか。もともとね。みちるは歌謡曲とか超好きだし。

夢咲:J-ROCKとか好きだし。

──J-ROCK。何が好きですか?

夢咲:俺はサンボマスターとか。

──サンボマスター好きな人、若い人に多いですね。

夢咲:青春パンクに含まれる快楽性とかもめっちゃやばいですね。何か一つをやるんじゃなくて全てをやりたい。

──自分が音楽をやるにおいて、自分が聴くものとやるものは分けるとか、いろいろなものが好きだけどこういうものに絞ってやるとか、そういう人も多いですけど。そうじゃなくて全部を一緒にやりたいわけですね。

夢咲:全部全部、全部。

──全部やると、今みたいな音楽にならざるを得ないという感じですか。

夢咲:まぁでも、もっと。

Dex:もっとイケる。

夢咲:まだ全部やれていないと思っていて。6とか、今。

Dex:10中の6。

夢咲:いや全部って多分、200くらい。

──200!200分の6?!(笑)

夢咲:あと194くらい強くなれるって思います。

──まだ3%?(笑)

夢咲:本当にそう思います。

Dex:みんな本当に違うんですよね。好きな音楽が。珍しいですよね。

──moreruはオタクカルチャー的なものも含めて、いろんな要素を持っている。自分たちの好きな音を全部やってるけど、まだ3%という。

夢咲:200分の6は出せてるかも。本当にまだまだ、音楽を作りまくれる、僕は。それがもっと今よりもっと凄いと思うから。

──自分はこんなもんじゃないと。

夢咲:全然。あ、自分はこんなもんかもしれないけど、我々はこんなものじゃないです。

Dex:みんながいるから。

インターネットにしか友達がいなかった



──なるほど。moreruの結成のきっかけは夢咲さんとDexさんが出会ったことだとお聞きしました。

Dex:元々はツイッターでフォロワー同士というか。みちるは中学生の頃からああいう活動をしていたわけで、けっこう目立っていたんですよね、そういうツイッターの音楽好きの人達の中で。それで僕が17くらいの頃に音楽がしたくて高校辞めて。コイツと音楽やるために熊本から上京した感じです。

──夢咲さんは東京?

夢咲:そうです。東京です。

──東京と熊本で離れていたけど、ツイッターでお互いのことは知っていた。

夢咲:ツイッターでそういうコミュニティがあって。熊本に住んでる音楽好きなやつ、秋田に住んでる音楽好きなやつ、みたいな。(Dexは)ドラムとかやってるって。

──代々木公園でやっているやつとか、ライブハウスでやっている動画もありましたけど、当時はひとりであんな感じのことをやっていた?

夢咲:はい。そうです。

Dex:最初の頃はノイズオンリーみたいな感じで。でも、バンドやりたいなっていう話になって。

──なぜバンドを?

夢咲:やっぱりバンドじゃないとできないことをやりたいと思って。バンドめっちゃ好きですね。なので……バンドが好きなんで、としか。

──「バンド」というのは、あなたがヴォーカルで、バックアップするバンドがいる、ということではなくて、全員で一体になっていくっていう意味でのバンド。

夢咲&Dex:そうです。

夢咲:友達とかと音楽やることってすごく良いことなんじゃないかって思っていたんです。バンドをやっていなかったころは友達とかいなくて。ツイッターではいた。ツイッターの友達で集まって音楽をやれたら、めっちゃいいんじゃね?みたいな。

──ああいうことをやっていたらなかなか友達は……いないよね。

Dex:いなかったね。お互い。

──でも出逢えたから。

Dex:うん、いたから。

──波長が合いそうな。

Dex:そうです。

夢咲:インターネットには(友達が)いた、みたいな。現実は本当に、誰も音楽を(聴く人も一緒にやる人もいない)、みたいな。でもインターネットにいた、みたいな感じです。

──二人が出会って、最初はどんな感じだったんですか?

夢咲:何か…グラインド・コアとかやりたいっていう話をして。でも最初は…とにかくエネルギー、みたいなやつ。エネルギーが一番発生している音楽がやりたいって。ドドドドって。

Dex:当時グラインド・コアとか聴いたことなかったんで。ブラスト(・ビート)とかも叩いたことなかったし。レッチリとかが好きだったんで。なのでめっちゃ大変でした。

──最初はブラスト・ビートでグラインド・コアみたいなことをやろうとした。でもヴォーカルとドラムだけではできないから。

夢咲:ギター…アツヲ君。

──3人目のメンバーの登場。

夢咲:それもツイッターです。

Dex:全部ツイッターです。

コジマ:もともとDexとツイッターで繋がっていて。

夢咲:その時期くらいに石肉とかとも、もうやっていたしね。

コジマ:そう、別で繋がっていて。みちるのことは同じようにツイッターで見ていて。何か一緒にやれたら面白いなって軽く思っていたくらいで。そうしたら(Dexと)やってるっていうから。誘われて、やるやる、って。

──ツイッターで知っていても誘われて実際に会うまでは面識がなかった?

コジマ:面識がなくて。初めてスタジオで音を合わせるっていう時に初めて会って。僕自身もハードコアパンクは聴いていたんですけど、ブラックメタルとかグラインド・コアとかは聴いてなくて。結構それが新鮮だったし。あと、僕も友達いなかったので、現実に。インターネットでしか友達がいなかった。

夢咲:話が通じる友達がいなかった。(現実の)友達はいるにはいたけど、話は通じなかった。

コジマ:で、なんか、ウマが合うなって。

──実際に会う前から、コイツとは面白いことが出来そうだなという予感があったと。

コジマ:当時の僕からしたらみちるはけっこう有名だったので。なんか違う形で化けるかなぁとか。Dexは僕も中学くらいから連絡をとっていて。似通った趣味をしていたので、一緒にやったら面白いだろうなって思っていたら、良いメンバーが揃ったからやろうって言われて、やるやるやるって。実際やってみたら、けっこう面白かった。

バンドってマジでやばいよね

──ツイッターで知り合ってバンドを結成したって、今っぽいなって一瞬思うんだけど、でも考えてみると昔は音楽雑誌のメンバー募集っていう欄があって、それで集まるっていうのが普通にあったから。音楽雑誌のメン募欄がツイッターになっただけですね。

夢咲:でもちょっと違うのは。そいつの生活しているスタイルとか、

コジマ:そうそう。

夢咲:口癖、趣味、これが好きでこれが嫌いでっていうのがツイッターではわかる。メン募欄って嫌いなバンドのリストがないじゃないですか。

──まぁ、そういうことはあまり書かないでしょ(笑)。

夢咲:好きなバンドしか。でも、このバンドの場合ツイッターで人を集めるということは、嫌いなバンドのリストをお互いが知っているってことなんですよ。ひどいアレだったんですよ、ツイッターも、今考えると。本当にない方が良いようなひどいコミュニティで。

──好きなバンドを言い合うよりは嫌いなバンド、イヤなバンドを言い合う方がわかりあえるのかもね。

夢咲:そうなんですよ。

Dex:けっこうみんな、好きなバンドは違うけど、嫌いなもので一致団結して。

──そこまで言ったら、じゃあその一致団結して嫌いなバンドってなんですか、という話になりますよ(笑)。

Dex:それはちょっと…。

コジマ:ツイッターってけっこう、感性が見えるし。どういう感じで生きているか。最初からバンドをやるって話だったけど、そこからみちるとはコミュニケーションを築いていって、結果として仲良くなってるし。Dexはそういう感じで元々コミュニケーションを取っていたから、長く行けたし、やりやすかったし。

──コジマさんが参加してトリオになったあたりから、だんだん音楽性が固まってきたという感じがあったわけですか?

夢咲:まぁ、そうですね。でもまぁ、音楽性ってめっちゃ変わって。ちょっと向いている方向が今に近くなった感じ。スタートラインに立ったというのが良いかもしれない。

――メロディがついてきたってこと?

コジマ:そうそう。

夢咲:曲作りを意識するようになった。

コジマ:(それまでは)けっこうぐちゃぐちゃだったから。

──なるほどね。それから、tagaさんがベースで参加して。

taga:はい。僕は普通にメン募で。元からツイッターで知っていたわけでもなく。

──一方的に知っていた?

コジマ:3人でやっていた時に、ベース欲しいねっていう話になって、投稿して。

Dex:“ベース募集します”って。

taga:ギターやりたかったんですけど、ベースになって。このビッグウェーヴに乗るしかない、って。

──(笑)ビッグウェーヴっていう感じがした?

taga:それはもう、思いましたね。ビッグウェーヴだって。

──Dexさんは熊本で、他は皆さん東京?

コジマ、夢咲、taga:東京です。

石肉:僕は青森。

岩本:北海道です。

コジマ:東京でも全然違うので。

夢咲:僕は西東京というか。八王子。そういうのもでかい。

コジマ:僕は練馬で。

taga:僕は世田谷で。三茶です。

──なるほど。同じ東京と言っても地域的にもバラバラだし、かなり文化圏が違いますね。

夢咲:けっこうショックだった。taga君とかと会って、めっちゃショックだった。

taga:ショック…。

夢咲:すごいなんか、スピード感が違う。

──地域的にはバラバラ、育ってきたカルチャーも微妙に違うんだけど、でもツイッターで、お互いのセンスはよくわかっていた。

コジマ:話した感じで、けっこうわかる。

taga:ユーモアのセンスとか。

──例えば今だったらみんなDTM をやっていて、音源をメールなどで交換しながら曲を作るって普通のことだと思うけど、バンドって実際に顔を合わせないと音にならないから。

全員:そうです。

──例えばツイッターでよく見ていたとしても、合わせてみてどうか。

夢咲:俺はもう、キタ!みたいな。バンドは(それまでも)ちょっとやっていたけど、自分のやりたい音楽、ブラストビートが、キタ!みたいな。これでしょ!みたいな。そんな感覚は初めてだったから。

コジマ:弾きたいように弾ける。

taga:試行錯誤もあったけど。

夢咲:うまく行かない時とかもあって。最低だなとも思いつつ。

Dex:バンドってマジでやばいよね。

夢咲:後ろからブラストがガンガンくる、もう、最高。

Dex:6人いるし。意味わかんないですよ、もう。

──どんどんメンバーが増えていますよね。資料のバイオグラフィを見ていると、本当に次から次へと(笑)。

Dex:やらないといけないことは多いので。

夢咲:やらなきゃいけないこと全てをやろうとすると増える。

Dex:本当はもっと要るんですよ。8人とか。

夢咲:もっと完璧に再現するんだったら、あと2人くらいいないと。だから今でもメンバーは少ないです。

──これでも少ないと。

夢咲:既定の、ちゃんと音源通りの音をやる人数に達していない。

Dex:そうそう。ここから実際に増えるかどうかは別だけど。6人ってけっこうヤバくて。みんな器用な方じゃないので。けっこう揉めるというか。意思疎通に難があったり。

──6人もいると調整が大変そうですね。

Dex:キチガイばっかだから。

taga:みんな我が強い。

──このバイオグラフィーによると2019年にtagaさんが入って本格的にライヴ活動を開始して、ファーストアルバムを出してバンドが軌道に乗っている。で、面白かったのは四谷アウトブレイクで7日間住み込みギグっていう。

コジマ:やったね。

──よくこんなことやりましたね。

夢咲:あれはなんか、アウトブレイクっていうハコの特性であって。けっこう全裸とかになっていたので、そういうのに「良いね」みたいに言ってくれるハコがアウトブレイクだった。俺らから7日間やろうって提案したわけじゃなくて。

taga:その前にもやっていた人がいるんですよ。

コジマ:恒例行事的な。

夢咲:もうそのカルチャーはなくなってしまったんだけど。

──あれはまさにコロナ前だから出来たということですね。

Dex:あの頃は割とマジで、がむしゃらというか。ライヴとかも必死で。ノルマ払うのがマジでイヤで、ノルマのないライブに出まくるみたいな感じだったんです。アウトブレイクは当時の俺達の無茶苦茶な感じとかを面白がるみたいな。そういう感じで。

夢咲:それが最初にあった判断。

──その頃にはmoreruのお客さんはかなりついている状況だったんですか?

Dex:全然。

taga:みんな名前は知っているけど、観に行ったりすることはない。

コジマ:アウトブレイクに来る人が来るっていう。

──なるほど。ハコのお客さん。

コジマ:moreru目当ての人はそんなにいなかったと思います。

カッコいい名前にしちゃうと、カッコいい音楽しかできなくなりそう


──ところでなぜ、moreruという名前にしたんですか?

夢咲:二種類回答があって。「エモい」みたいな、そういう言葉ってあるじゃないですか。「エモ」っていう言葉が使い古されていて…という言説すらも使い古されていて。「エモ」という言葉では自分の感情、侘しさとか、そういう寂しい系の感情、泣き系の感情にあまりマッチしなくて。だから、「エモい」を「もれる」って言い換えることが自分にとっては一番フィットする。感情を抑えても「漏れる」みたいな。「エモ」みたいな、ジャンクな言葉を、自分なりにパラフレーズすると、「もれる」になる……のが回答Aで。訊かれたら答えようって用意した答え。本当は意味ないんですよ。中学の時に何となくつけた名前で。でも今日はバンド名を訊かれたら、こっちを用意しようと思って。それが回答A。

――(笑)公式見解って感じですか。

Dex:嘘すぎる。

夢咲:名前を自分で決めるのって無意識的に、どんな言葉であれ、適当であっても名前を付けているわけだから。それはやっぱり、なんらかの関係はあるんだと思いますよ。そういうのが、作った答え。

Dex:回答Aね。

夢咲:自分なりに分析をしている。

taga:実際、漏らしてたしね。

夢咲:お腹がすごく弱くて。っていうことも、無意識的にあるのかもしれないですね。だからいろいろ複合的なんですけどね。「もれる(漏れる)」ことの情けなさ、みたいな。

Dex:文字がけっこう情けないしね。言っていてもなんか、締まらないし。

コジマ:ふにゃふにゃの文字だしね。しまらない。

──でも、「もれる」って、感情が漏れてくる、だだ漏れするっていうニュアンスもあるし、今言ったように、「もれる」っていう語感の、ある種の情けなさというのが、バンドの性格をよく表しているというか。カッコつけた言葉に言い換えてないっていうね。

夢咲:そうですね。それもけっこうあって。カッコいい名前にしちゃうと、カッコいい音楽しかできなくなりそうで。moreruはカッコいい音楽をやろうと思っていないので。本物の音楽をやろうと思っている。本物はやっぱ「もれる」っていう感じなんじゃないですか。

──カッコいい音楽と本物の音楽は違う?

夢咲:ステージに立つ人っていうのはカッコつける、カッコいいところを見せたい。それがカッコいい音楽。それは全然、素晴らしいことだと思うんですけど。でも、本物の音楽というのは違う。人間はそんなにカッコよくないじゃないですか。カッコこよくないところも出す。カッコよくないことも曲にする。

──それが本物の音楽?

夢咲:まぁなんか……

Dex:態度としてだよね。

夢咲:態度として。あまりその…カッコいい音楽をニセモノって言いたいのではなくて。見せている表層をカッコいいというか、「本物」って言い方も、もしかしたら語弊があるかもしれないです。「すべてを出したい」ということで。

──本当の自分をさらけ出したい。

夢咲:自分に起こった…、自分をどう認識しているか、みたいな。自分は自分をカッコいいと思っていない。なので、そういうリアルもあるんだと思っています。自分がカッコいいと思っている人は、カッコいいことをやったらそれは本物だと思うし。

──代々木公園でパンツ1枚で転げまわっているあなたも、この間の下北Club Queで転げまわっているあなたも、自分をさらけ出したい、爆発させたいっていうのが、すごく伝わってきたんですよ。例えばBOREDOMSの山塚アイの若いころとか、中原昌也の若いころとか、そういう人たちを私は思い出したんです。全部さらけ出して表現するという点では似通っている。それはmoreruっていうバンド名にも通じるものがあるなと思いました。

夢咲:ハナタラシ(山塚がボアダムスの前にやっていたバンド)とかも、鼻から漏れてるっていう。

──バンド名自体がすでに、カッコつけていない感じがありますね。

夢咲:そう、めっちゃ「もれて」る。ハナタラシかっこいい。

──2020年には、石肉さんが加入されて。

石肉:そうですね。

──ギターがもう一本必要だったということですね。

夢咲:俺がギタボ(ギター・ヴォーカル)だったんです。でも俺はやっぱり、二つのことをやるのは無理だと。だから俺はピンボーカルに完全になりますということで。

──なるほど。石肉さんはツイッターで、彼らのことは知っていた?

石肉:結構前から知っていて、遊んだり、ライヴ見に行ったりしていたので。

──じゃあもう、バンドの音は完全に把握している状況で加入したんですね。

石肉:そうですね。ギター増えるからってもう一本鳴らして、みちる君が弾いていたところとか。俺が入って増える曲もあったので、そういうのもやると。

──ステージでは横を向いて絶叫していますよね。

石肉:そうですね。

──あれはなぜなんでしょうか?

石肉:ドラムを見ないとわからなくなっちゃうからです。

──めっちゃ印象的で、目につく感じがありました。

石肉:最初の頃は正面見てやっていたと思うんですけど。最近はずっと横を向いてやっています。

Dex:横の方がかっこいいよ。

夢咲:激情スタイルだよね。

──石肉さんが入ってからアルバムを出して、シングルもどんどん出して、活動が加速している感じがあります。その頃には、自分たちのやるべき方向性がすっかり固まったという手応えはあったんでしょうか?

夢咲:方向性みたいなものって別に……

──決めていない?

夢咲:最初からずっと変わっていき続けたいという感じです。やりたいことがけっこう次々とあって。それを形にするスピードは速くなったかもしれないです。

Dex:その時どきでやりたいことがあって、それに向かって一直線。それが終わったらまた次のところへ、みたいな感じでした。今もそうですけど。

──なるほどね。で、2021年にヴォーカルとノイズ、シンセとかサンプラーを扱う人が入って。その人が抜けて、2023年に岩本さんが入った。それも、バンドが求めるいろいろな音を出すために、どうしてももう一人必要だったということでしょうか。

夢咲:そうです。

――岩本さんは一番最後に加わったわけですけど、それまでmoreruはどういうバンドだと認識していたんですか?

岩本:どういう風に説明したらいいんだろう。

──入った経緯は何だったんでしょう?

岩本:入った経緯は…。

夢咲:出会いは2021年くらいでお客さんとして来てくれていたり。その頃になるとバンドにも、バンド仲間的な友達が増えていって。そのうちの一人だったんです。

岩本:moreruを初めて知った時に、私も他のバンドをやっていたんですけど、moreruがいたら、自分とか、他の誰がどんなバンドやっても意味ないと思って。

Dex:そんなことはないよ。

──大好きだったわけだ。

岩本:小学校の時に、小2くらいの時に、飼っていたウサギが死んで…なんか、一番好きなバンドに入れますようにって、お願いしていたんで。

夢咲:ウサギが死んだことと、関係ある?

岩本:そのウサギにお願いしていたから。これは必然のことなんです。

──ファンとして見ていた頃は、moreruのどういうところが一番好きだったんですか?

岩本:何だろう……それはあまり説明できない。他の好きなバンドはどこが好きか説明できるんですけど。

──実際に、ファンとしてお客さんとして見ていたmoreruと、実際に自分がメンバーとして入ったmoreruと、何か変わりましたか?自分の中で。

岩本:ん-。変わらないです。

自分はフロアを完成させなきゃいけない。カマそう、という気持ちは常にある



──なるほど。メンバーはたくさんいらっしゃいますけど、それぞれやることってある程度きっちり決まってる感じなんですか?

石肉:そうですね。

夢咲:音以外のやることも決まった感じですね。

──例えばステージの上での即興とか、各メンバーの裁量でどれくらい変わって来るのでしょうか。

Dex:割と結構ありますよ。ステージに限っては別にガッツリ決まっているわけじゃなくて各々の仕事をやっている感じです。まぁ、仕事を放棄しているやつもいますけど。

──では、楽曲はどういう風に作ることが多いのでしょうか?

夢咲:このアルバムまでの話だと、俺がデモを作って、(メンバーに)渡して、スタジオで合わせて、ここはこうじゃね?とかっていう感じで、曲が納得できる形になっていく。

コジマ:骨組みを作ってくれて。変えなくていいところは変えないで、あれやこれやみんなで言って。フレーズとかも作っていって。最終的に、みんなが納得する形で完成しているのかなとは、思います。

──骨組みというのはどの程度のものなんでしょうか?

コジマ:もう6割くらいは出来ていますね。

──DTMで作っている?

夢咲:iPhoneのガレージバンドで。すげークオリティ低いんですけどね。言うと。

コジマ:曲によるとは思うんですけど。

夢咲:そうですね。それもまあ、今までのやり方です。今回のアルバムは「EMO SCREAMO 2045」っていう曲があって。それとかは完璧にDexが作って。

Dex:俺がギターで。

夢咲:俺がDexのうちに行って「こういう曲をやりたいから、作って!」って発注したら、そうしたら一瞬で作って。すごいなって。今後はそういう風に作っていきたいとも思っている。

Dex:(今後は)それぞれがね。

夢咲:この前アツヲ君が新曲を持ってきてくれたりして。みんな曲を作る。そもそもみんな音楽作ってる人たちなので。

Dex:ソロとかでも作ってるので。

コジマ:もともとみんな趣味が違うので。なんだろう、僕の個人的なことを言うと、やりたいことの中にmoreruがある。別の(やりたい)こともいっぱいあるので、その中の一つとしてやっているという感じです。

──ご自分が色々なことをやっていらっしゃる中で、moreruはどういう位置づけなのでしょうか?

コジマ:なんですかね。友達?

──そこか!友達!(笑)

コジマ:友達以上。もっとうまい言い方があるか。生活。生活ですね。完全に。

──こういう音楽をやりたいとか、こういうスタイルのことをやりたいとか、そういう風に集まったというよりは、むしろそういうセンスとか、お互いの気持ちみたいな部分が響きあう感じで、

コジマ:僕は完全にそうです。

Dex:みんなそうなんじゃないかな。

コジマ:けっこうこのバンドだと、僕は自然体でやれるというか。あまり取り繕わなくていいから。それがすごく気持ち良くて。あまりそういう経験がなかったし。ライヴとかだとそういう形でバッと出せるので。だから貴重なのかなと思ったりします。

──夢咲さんが気分が乗ってくると、この前みたいにステージ降りてフロアで転げまわったりする。見ていてどう思います?

夢咲:俺だけじゃないっすよ。けっこう……

Dex:彼(コジマ)の方がけっこう。

夢咲:俺より全然。

──あ、ホント(笑)。

taga:暴走度が高い。

コジマ:ああいうのを見ても、全然、もっとイケるっしょっていう。

──頼もしいですね。

コジマ:さっき、「本物の音楽」みたいな話が出ましたけど、僕が思う最強の音楽、本物だと言えるような音楽を聴いている時って、本当にぼーっとなるんですよ。なんかその感じを自分なりにやりたい。けっこうワガママにやりたいんです。

夢咲:客が暴れてると、俺は暴れない、みたいなところはある。

Dex:確かに。

夢咲:ステージで “俺は‼”って行くのは、割と、そういう仕事だから、という感じ。めっちゃリビドーでそうせざるを得ない、というわけでもない。そういう仕事なので。

──あぁ、なるほど。

夢咲:だからすごい、リビドーは危険ですよね。

Dex:本当に危険。

コジマ:危険っていうのもちょっと。

夢咲:俺は、そういうことにすごく憧れてる。そういう奴になりたい。すごく。もっとプン!っていきたい。プン!って。何かを切りたい。

コジマ:音楽は、ライヴをやるならそうあるべきだと思っているので、個人的には。みんなにそれを求めてはいないんですけど。

──自分がそういう状態になれる、なれるメンバーがmoreruであると。

コジマ:これじゃないと絶対に出来ないので。

──めちゃくちゃ良いことじゃないですか。

コジマ:それくらいの気持ちではやっていますね。

──でも夢咲さんはちょっと冷静というか、自分の役割みたいなことを考えていたり?

夢咲:僕はやっぱり、まぁ…サービスしないと、っていう。

──でもほら、こないだのライヴも遠巻きに見ているオトナばっかりだから、かき回してやろうっていう感じは絶対にあったでしょう?

夢咲:あるのかなぁ。例えばお客さんがめっちゃモッシュするライヴとかだったら、もうなんか、その場自体が完成なんですよ。だから僕は、ただ歌ったらいいんです。歌に集中すればいい。そうならない現場は、完成しないんですよ。俺はそういう意味ではめっちゃ冷静ですよ。完成させないといけないので。フロアを。なので、お客さんが聞き入っていたら自分が暴れたらいいじゃないかとか。そうやってる時に、本気になっちゃう。ちゃんと考えてやるけど、考えられなくなるためにやる。まぁ「カマそう」っていう気持ちですよね。それは常にある。

──できれば歌に集中したいってことですか。歌っているという意識はあるんですね。

Dex:そりゃあ、あるんじゃない?

夢咲:いや、だから…。

taga:あるでしょ。

夢咲:それはうん、ある。歌っている意識…。

──感情が爆発していれば良いとか、爆発しているところを見せればいいとか、そういうことではなくて、ちゃんと歌いたい。

夢咲:それ自体は、そうですね。それ自体は全然目的なので。歌うことは。そこでやっぱり、到達したい。

──どこに?

夢咲:到達したい感覚。それは外に。外部に。

──お客さんにということ?

夢咲:というよりは、もっと……

taga:突破する。

Dex:リミットを突き破る。

夢咲:自分の中の(リミットを)突破したい、そうか、だから、それはめちゃくちゃ…歌っている意識、めっちゃありますね。歌っていること自体が目的ですね。それはすごく思う。

暴れたいだけのやつとか、いっぱい来てほしい。それでも音楽の本質には辿り着くはずだから



──歌うことは好きですか?

夢咲:そんなに。得意じゃないんですね。自分。

──得意じゃない?

夢咲:得意じゃない。

──でも、好き?

夢咲:好きとか嫌いとかいうより、しなければならないこと、ですね。

──あぁ、やらずにはいられないという感じ?。

Dex:暴れるとか、モッシュとかが取り上げられ、目につきがちですけど、そこは別に全く本質じゃないので。

コジマ:けっこう、見たくはない。人が暴れてるの。

夢咲:俺はめっちゃモッシュしてほしい。どんどんしてほしい。フロアが見たことのない動きしていてほしい。

コジマ:全員自由なので。

夢咲:それでけっこう、普通に幸せ。

Dex:じゃ、俺もそうかも。

夢咲:贅沢なことだけど、出来るだけ型にハマらないでほしい。

Dex:そう、痙攣とかしてほしい。

コジマ:その方が嬉しい。

Dex:(モッシュって)形式じゃん、割と。そういうのも別にいいけど。けっこう、変なことしてほしい。発狂とかして。

──一般に今のライヴでやってるモッシュって秩序だっていて、ある種、システマチックですよね。

石肉:ダンスっぽいというか。

夢咲:それはそれでいいと思うけど。ブンブンする型って、ハードコアを聴いた時のリアクションとしての身体表現として、どうしてもあれになっちゃうというか。でもmoreruはそうじゃないというか。もっと痙攣とか。

Dex:そう。全員痙攣してほしい。

夢咲:ちょっとお前、大丈夫か?!みたいな。

コジマ:客との距離感が近いので、暴れられるとめっちゃシールドとか抜けちゃうんですよ。それで俺はけっこう、イヤ。

──そうかそうか。

taga:こっちが気を付ければ良いんだけど。

夢咲:そういう問題じゃなくて。普通に。流れがくるんで。わーって。

──ステージとフロアが近いところでやっているからそういうことが起きる?

コジマ:向こうも(シールドが抜けたりすることに)気づかないからね。

石肉:不可避でしょ。

Dex:場所の問題だから。

コジマ:場所の問題だとしても俺はね。

Dex:とにかくその、けっこう言いたかったのは、暴れたりっていうのはけっこう、本質じゃなくて。たまたま発露としてそうなっているだけで、なんか、moreruといえばそれ、になっていくのは、めっちゃイヤ。

コジマ:オレもめっちゃ嫌いだわ。

夢咲:俺は別に、「moreru=暴れる」みたいになっても全然OK。別に、(客が入ってこられるような)入り口じゃん?

Dex:そうだけど。

夢咲:いいじゃんそれは。

Dex:表層…。

夢咲:表層でも、広まったら良いと思うんだよ。

コジマ:きっかけにはなるけど…。

Dex:俺はめっちゃ曲を聴いてほしいから。

夢咲:だから曲はさ、「暴れられて楽しいですよ」みたいな感じで。きっかけとして人を誘って。でもmoreruの本質って聴いたらわかることじゃん。結局それが大事だから。これすごい楽しいパーティーだよって言って、人を集めるの。そこですごい地獄みたいなことが起こったら、めっちゃすごいじゃん。本当に変わるじゃん、人って。体験としては凄いじゃん。だから俺は「moreru・イズ・モッシュ」大歓迎で。どんどんそういうのがいっぱい来てほしい。そういう暴れたいだけのやつとか、いっぱい来てほしい。それは別に(音楽の本質には)にはたどり着くと思うから。

Dex:そこに来たやつらが、最終的に、本質に。

夢咲:そうそう。だからそういう、手段として別に、moreruは全然、暴れてください。別に暴れなくてもいいし。

Dex:ケガしたくなかったら後ろで見ろ、と。

夢咲:暴れなくてもいいけど。公式の見解として、モッシュ=暴力(=moreru)じゃなくなるのは違う。そこはOK?

コジマ:まぁ確かに。普通にぜいたくな悩みだよね。客が普通に暴れてくれてるの、良いことだもんね。

Dex:暴れるのは良いこと。良いけど……っていう話。

夢咲:それはこっちの勝負だからね。本質に引きずり込めるかどうかっていうのは。

──ようするに、予定調和が嫌なんですね。決まりきったことを、繰り返してやっているようなのが、我慢できない、だから引っ掻き回したいという感じがあるのではないでしょうか。

夢咲:うん、予定調和というか、ベタな表現。すごい嫌い。ずっと避けてるんですけど。予定調和ファックみたいな感じで。で毎回俺が暴れていたら、それ自体が予定調和になる。

──あぁ、そうですね。

夢咲:だからそのなんか、許す予定調和と許さない予定調和というところで、ラインを引いて行くっていうことだと思います。個々でここは違うっていうラインを引いていくということですね。

やっぱりCDって聖なるものなんですよ


──たぶん今回のアルバムを通じて、新しいお客さんも増えていくと思うんです。今後、moreruをどういう方向に動かしていきたいですか。

夢咲:世界を乗っ取る、転覆、何かをひっくり返すみたいなことは、割と本気で思って動いていますね。

Dex:そうだね。

夢咲:ギャグじゃなくて。それってすごく数字を伸ばして、めっちゃ売れてっていうこととはちょっとちがう。自分の中でも具体的なヴィジョンは出ていないけど。なんかその…やっぱり地球とかって絶対滅びるじゃないですか。宇宙とか。60億年後とか。だから結局、めっちゃ虚無じゃないですか。意味とかって、この世にないじゃないですか。宇宙自体がなくなっちゃう、そこから見たら俺たちって今なにもしていない、みたいな感じなんですよ。すごく抽象的な話ですけど。俺はそういうことに直接、moreruで触れたいです。だから、本当にめちゃくちゃ抽象的な話です。終わるとか始まるとか、本当に直接触れたいと思ってます。

Dex:外部に。

夢咲:外部だね。突破ということです。これは凄く抽象的な表現にならざるを得ないんですけど。だからここから先がmoreruの音楽。やっていきます。具体的なことで言ったら、曲とかいっぱい作ります。音楽です。音楽をやります。

──例えば、バンドとしてこういう風な規模でやりたいとか、そういうのはあるんですか?こういう会場でやりたい、とか。

コジマ:東京ドーム。

Dex:ポケモンくらい売れたいです。本気で、この感じのままで、ありえないくらい売れたいですよね、俺は。

夢咲:俺がそこに本当に触れるには、ポケモンくらいの数を動員することは、当然の必須条件です。だから、やり方は考えないとだけど。

──なるほど。最後に何か、これは言っておきたいとか、ありますか。

全員:…ない。

──今回のインタビューは「moreruってこういうバンドですよ」という紹介を兼ねてみたいな感じなので、基本的なことしかお聞きしていないですけど。

夢咲:大丈夫です。

──言いたいことは言えた?(笑)

Dex:CDを買ってください。

コジマ:CDを買ってください。

夢咲:CDめっちゃ買ってほしい。

──フィジカルメディアにこだわりはあるんですか?

夢咲:僕は、っていうか僕らはTSUTAYAとかでCDを借りて、パソコンに入れて聴いていた最後の世代だと絶対確信していて。サブスクが来たのが中2とかで、それまではめっちゃ買ってたし、ディスクユニオンとか毎週行っていたし、TSUTAYAとかも行っていた。それでしか音楽をゲットできなかった、最後の世代なので、マジで。やっぱりCDって聖なるものなんですよね。

──聖なるもの。

夢咲:聖なるもの。CDなかったら音楽とか全然……。だからCDを出さないっていうことはないです。思い出とかノスタルジーかもしれないけど、CDは絶対出し続ける。

Dex:ブックレットとかもめっちゃ考えて作ってるしね。

夢咲:CDを触って中を読んで、というのが音楽なんです。音、情報だけじゃなくて。

──そうですね。

夢咲:でも、だったら自分はどうなんだって言ったら最近はサブスクでしか聞いていないけど。

taga:サブスクは急に終わるかもしれないしね。

夢咲:それもある。明日Spotifyが何かでなくなったりしたら。

taga:人工知能に支配されてとか。でもCDは残るし。人類が滅んでも。

夢咲:死ぬまで残る。なくなるけどね、それも。俺は最終的にピラミッドみたいなものを作りたい。

Dex:そう。めっちゃわかるわ、それ。

夢咲:ピラミッドみたいなものを作りたい。それですら、足りないと思うんだけど。ピラミッド的なものをフィジカルとして作る。それはもう、本当に、ガチで思ってて。そういう感じです。

(2023年12月21日 東京・MUISICMINE事務所にて)

20240216 EVILSPA 7
moreru 3rd Album Release Party

@Club Asia

2024.02.16 (金) |18:00〜05:00
Entrance ¥2,500+2D
U20 ¥1,500+1D (22:00out)
ticket:door only

《 ATTENTION 》
※未成年の方は21:59にご退場となります。
※顔写真付き身分証必ずご持参ください。
※再入場について
20歳以上のお客様で22:00迄のご入場のお客様はリストバンドお渡しいたします。そちらのリストバンドご提示で一度再入場可能とさせて頂きます。紛失、破損は無効になります。

-1F MAINSTAGE-
ANALSKULLFUCK
Chaoz!!!
ENDON
Glans
KK manga
moreru
munki(US)
nghtcrwlr(US)
rirugiliyangugili
5000
小腸分裂


-2F STAGE-
aeoxve
Bonnie Blue
Chikasen
Egomania
DRUGPAPA
DIV☆
FIRE BOYS
HAIZAI AUDIO
Kazuaki OG & Takemi
KYLE MIKASA
Mari Sakurai
music fm
Middle Index
Rosa
RSC
that same street

-1F Lounge-
Beenie Pimp
Bleed boi
Cityofbrokendolls
Efeewma
ippaida storage
Loci + sudden star
rench kee
Piso
whatman
YNZ VALENTINE




よろしければサポートをしていただければ、今後の励みになります。よろしくお願いします。