[野球] ファイターズの現状について

 ここではご無沙汰でした。前回はオールスター明けのソフトバンク3連戦で3連勝して首位に4ゲーム差に迫ったタイミングでの更新でした。その後チームはロッテオリックス西武と勝ち越し、7月末には首位ソフトバンクに0.5ゲーム差まで肉薄しています。ところがこれがチームの勢いのピークでした。8月に入ってのチーム成績は9連敗を含む5勝18敗1分けと、まさに急失速。オリックス3連戦で久々のカード勝ち越しを決めようやく上昇気流に乗るかと思いきや、釧路帯広と転戦する道東シリーズで西武に3連敗して5位。3位のロッテ楽天からは2ゲーム差と開き、最下位のオリックスには1ゲーム差と迫られています。チーム状態はまさにどん底。好転する兆しはまったく見えません。

 今月に入って2度に渡り「日刊ゲンダイ」がハムのチーム状態の悪さと栗山監督の独善的采配と求心力の低下を記事にしています。

清宮&輝星采配で炎上 栗山監督の求心力低下が止まらない (8/15)

日ハム清宮の4番起用 評論家が警鐘「チーム壊しかねない」(8/20)

 日刊ゲンダイなんてデマばかり飛ばしているいい加減なメディアだと思っている人も多いでしょうが、こと野球記事に関しては意外とちゃんとしたものも多く、特にハムに関してはコネクションが強いのか、中田など中心選手との独占インタビュー記事や詳しい内情を伝える記事も多い。上記も内部の情報提供者からのリークであることがうかがえ、実際に栗山監督の采配に選手が不満を抱いているかどうかは我々にはわかりませんが、指摘された内容自体は妥当なもの。第一北海道のローカル球団に過ぎないハムの話題を短期間で2度にわたって記事にすること自体珍しい。たぶんハム球団内部でも、栗山監督の評価・処遇をめぐりすったもんだがあることをうかがわせます。

 そして驚いたのが、えのきどいちろうが球団フロントや栗山采配へのはっきりとした批判を文章にしたことです。

ハマらない「栗山マジック」。もう一度、気持ちをつくり直そう (8/18)

ファイターズの「ショートスターター」は限界ではないか? (8/24)

 えのきどさんはみなさんご存じの通り古くからの筋金入りのハムファン。それも、チームのいいところを見つけて常にポジティヴな方向で文章をまとめる人です。ハム球団内部にも親しい人は多いはず。滅多なことではチーム批判、采配批判はしない人なのに、チーム編成のミス、ショートスターター戦術の失敗、栗山流ロマン采配の破綻を語っている。記事の内容自体は、ハムファンなら誰でも感じていることだと思いますが、それをほかならぬえのきどさんが語るところに、今のチーム状態の悪さがうかがえます。単に調子が悪いというだけではない。もっと根本的にチームの体制がおかしなことになっているのではないかと思わせるのです。

 これはかなり深刻な事態かもしれない……私はそう感じました。盤石と思われた栗山政権も、そろそろ危ないかもしれない。いつもの年だったら、球団は早めに栗山監督の続報をリークしているはずです。たとえば去年。

日本ハム 栗山監督に続投要請の方針 揺るがぬ信頼 大沢親分に次ぐ8年目長期政権へ (8/21)

 監督の去就問題でメディアが騒がしくなるのを防ぎ、チーム内を落ち着かせ、残りシーズンをじっくり戦って欲しいという球団の意思の表れです。ところが今年はそんな様子がない。まあ今は時期が悪すぎるので、チームが好調期に入ったら、続投報道が出るのかもしれませんが……

 私の意見はといえば、もう栗山政権は限界だと思います。たとえ今季チームがAクラスになろうとも、です。このまま彼が権力を保持し、采配を続ければ、ただでさえ壊れかけているチームが完全に崩壊してしまうと思います。2023年の新球場開場時には優勝を狙うどころか暗黒期を迎えている可能性がきわめて大きい。2023年からの稲葉監督就任はチームにとって既定路線だと思いますが、それまでにチームが壊れているかもしれない。

 年に一度の釧路〜帯広の3連戦。3試合ともサード近藤のエラー(悪送球)がきっかけとなり失点して負けに繋がっています。レアードがいなくなり、淺間がケガをして、横尾は完全に伸び悩み。外野に人がダブっていて、近藤をサードで使わざるをえないチーム事情はあるにせよ、ちょっと酷すぎる。ちょっと前の西武戦は相手が勝手にエラーしてくれたけど、今や立場は逆転してしまった。打線は拙攻を繰り返し、野手陣は投手の足を引っ張り、すでにショートスターター戦術で混乱・疲労困憊の投手陣は持ちこたえられない。ハムらしい粘り強い闘いもなくなり、すっかり淡泊なチームになってしまった。「野球巧者」というのがハムの強みだったはずだけど、栗山政権の8年間ですっかり退化しちゃったみたいです。

 3戦目の最後の打者は清水に代打賢介でしたが、その時点で控えの捕手がいない。万が一追いついたら延長戦どうするつもりだったのか。3試合連続悪送球して3連敗の原因になった近藤に数年ぶりの捕手やらせるつもりだったのか。引退する賢介を帯広のお客さんにお披露目したかったのかもしれないが、だったらその前の王のところで出せばいい。そんな判断もできなくなってるのか。采配の混乱は目に余ります。

 中田・西川・近藤・大田といった中堅やベテランが不振だったり頼りなかったりミス連発するのは困りものですが、もっと深刻なのは彼らのあとを襲う若手たちがことごとく伸び悩んでいること。今年若手で成長したと言えるのは渡邊ぐらい。あとは平沼に希望の光が見えるぐらいです。若手伸び悩みの象徴は清宮です。清宮はケガや病気で入団以来練習の絶対量が足りていない。技術上も未完成で欠陥があることは多くの専門家に指摘されています。にもかかわらず無理やり一軍で使う。今年はケガ明けで試合勘が戻っていないところに無理に一軍に上げたものだからすっかり打撃の型が崩れてしまいました。下に落として一からじっくり鍛え直した方がいいでしょうが、栗山監督は絶対にそうしないでしょう。同級生のヤクルトの村上と比較しても仕方ないですが、じっくり下で鍛えて技術とカラダを作り、満を持して一軍に上げたヤクルト球団とのチーム育成力の差を感じます。適切な指導ができる指導者もいないようですし。

 もっと深刻なのは投手陣です。ショースターター戦術のおかげで、先発投手が異様に早降ろしされることが増え、そのぶんブルペン陣に負担がかかり、不規則な起用で混乱し、調整の難しさもあって疲労困憊、既に崩壊寸前です。堀や加藤など、オープナー、ショースターター、中継ぎ、ロングリリーフと定まらぬ起用で酷使が続き、すっかり調子を崩してしまいました。先発がどんなに好投しても最初から決めていたイニングを投げると、たとえパーフェクトに抑えていても代える。そして代えた投手が打たれて負けるという悪循環。オープナーがどんなに崩れても予定のイニングを投げるまで代えず、序盤で5点6点リードされ試合が壊れた状況で、本来は先発でじっくり使うべき金子やロドリゲスが敗戦処理に使われるという理不尽。こういう柔軟性も臨機応変性もカケラもない硬直した采配のおかげで、長いイニングを投げられる先発は全く育たず、リリーフ陣は酷使で崩壊寸前、という状況になっています。一言居士の吉井コーチを煙たがってクビにしたツケが回ってきてるのかもしれません。

 もちろんケガ人の多さには同情すべき点が多い。マルチネスが開幕前に故障離脱して、いまだに復帰の目処が立っていない。上沢は交流戦で大けがをして今季絶望。先発の大きな柱としてイニングイーターを期待していた2人が離脱して、まともに7回8回まで投げられる先発が有原しかいないという状況は、首脳陣にとっては大誤算のはず。最初は先発不足を補う補助だったはずのショートスターター戦術がメインになってしまったのは、いわば苦肉の策でしょう。ですが、将来の担うべき堀のような若手までそんな起用を続けていたら、いつまでたっても先発が育たない。そんなことはわかりきっているのに、監督はつい目先の勝利にしがみついてしまう(それでいて勝てないという最悪の流れ)。いつかこの欄で、栗山監督の育成力は認めざるをえない、と書きましたが、それは私の買いかぶりだったようです。

 どこで見たデータか忘れましたが、栗山政権になってから8年、2位以下で8月を迎えたシーズンで、8月中に首位との差を縮めたのは、大谷が超人的活躍をした2016年ただ一度だけで、それ以外はすべて8月に失速し、首位とのゲーム差を逆に広げられているそうです。つまりシーズン序盤からブルペン酷使を始め選手にムチを入れすぎて、肝心の勝負どころの8月以降になると一気に失速してしまうという構図が見えてきます。序盤〜中盤は無理をせず、首位と大きく離されなければいい、勝負は8月9月以降と見定めてじっくり構えることができない。目先の試合をすべて勝ちにいこうとして無理を重ね、チームを疲弊させて、勝負どころで失速する。去年も西武を何度も何度も土俵際まで追い詰めながら一度も首位に立てぬまま失速しました。そんなことを栗山監督は8年間繰り返してきた。全部勝ちにいこうとするのは彼の性格かもしれませんが、昔は秋に失速することが常だったソフトバンクが、近年はむしろ夏〜秋以降に無類の強さを発揮して下位との差を広げる盤石の闘いをしているのとは対照的です。今年のオールスター明けのソフトバンク3連戦で3連勝したときは私も興奮しましたが、今思えば、まだ無理をするところじゃないとじっくり構えていたソフトバンクの戦い方が正解だったということでしょう。

 3位とのゲーム差は2。もちろんまだまだAクラスの可能性はあります。ですがチーム全体の淀んだ空気感、無気力感はもういかんともしがたい。たとえ運良くCSに出られても、今のままではソフトバンク西武に瞬殺されて敗退するのは目に見えています。ここはもう、来季のための若手育成に焦点を絞った闘いに徹するべきではないかと個人的には思います。吉田、北浦、田中瑛斗など若手先発候補もどんどん使って、多少打たれても我慢して使い続けて、来季のローテ陣を育成してほしい。野村や万波など若手野手もどんどん試してほしい。もちろん数字上はまだ優勝の可能性すら残っている現状で、すべてを諦めるようなことは許されないでしょうが、もはやハムは、監督の去就を含め、来季以降に備えた闘いをすべきと思います。

 



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