ソウルと印税

6月某日

2泊3日の弾丸ソウル。ソウルに来るのは4回目で、しかも初めて来たのは30代になってからなのに、なぜか毎回「なつかしい」感じがするのはなぜだろう。かくかくの文字、赤や黄色の派手な照明、路上に面した店から溢れるキムチと豚肉の匂い、バケット山盛りの甘辛いフライドチキン、路上に放り出された一着100円の古着。眠そうな顔に丸メガネをかけ、深夜中繁華街をうろつき回る人々。硬質な電子音。

故郷でもなんでもないのに「おかえり!」と言われている気がする。

今回の旅では初めてマングォン市場の近くに宿をとった。東京に例えると上野のアメ横みたいな、古くからある食品市場である。最近では再開発され、若者向けのインスタ映えしそうなおしゃれなカフェや多国籍料理の店も多い。それでも、発泡スチロールの水槽から路上にジャバジャバに水を溢れさせて暴れるウナギや亀やエイ(食用である)、ザルに盛り盛りのイカキムチ、甘い匂いの豚足、鳥の丸焼き、カラフルなキンパ(韓国風海苔巻き)がプラスチックの薄いショーケースに並んでいるのを見ると「ああ、ここが今も昔もソウルの胃袋なのだなあ」という感じがする。

滞在中は翻訳者でコルク・エージェンシーのへリョンさんと一緒に行動していた。へリョンさんは日本の小説家さんを韓国出版の際にアテンドする仕事をしている。

「東野圭吾さんをはじめ、日本人作家の小説がここ最近はバカ売れしているのに、蓋を開けたら去年の韓国全体の小説の売り上げは前年の2割減だったの!こんなショックな話ないよ」と嘆いていた。

2割減はショックだ。どこの国も小説の売り上げはきついと聞くけれど。けど、最近は中国のこのニュース

とかを見ると、新しい形態で小説が読まれはじめているのだな、という感じもする。こういうニュースを聞くと本当に楽しみだなと思える。独立系作家が出版社に依存せずに稼げるってすごいことだ。日本でも早くこうなってほしい。


ソウルで好きなのはホンデとイテウォンとカロスキル、特にホンデの外れにあるNOSTROというお店は大好きで、

毎回ソウルに行くたびにたくさんお洋服を買ってしまう。韓国製の割に、縫製もしっかりしていて、20代後半ー30代の女性に合いそうな、フェミニンかつ流行に左右されなさそうな落ち着いた服をたくさん売っていて(麻とかシルクとかのナチュラル系)とても使い勝手が良い。その分、値段はお高めで、2700円出せばワンピースが一着買えてしまうホンデのショッピングエリアにおいては、10000円ー20000円の価格帯は少々ひるんでしまうが、しかし日本で着ても浮かないし、デザインもよく、日本で買ったら倍くらいはするんじゃないかという印象なので、もしよかったら女性のみなさまはソウルに行かれた際は行ってみてください。なぜかインスタがへたくそでウェブ上に情報がほとんどないお店なので、潰れないか毎回心配なのです……。

6月某日

「群像」編集部で打ち合わせ。

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小野美由紀

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小野美由紀

それでもやはり、意識せざるをえない(小野美由紀のマガジン)

作家小野美由紀によるエッセイマガジンです。タイトル通り "それでもやはり、意識せざるをえない” 物事について、月に5-10本程度配信します。日々のエッセイ、恋愛、性愛、家族、また書くことについて、作家という職業について、ジャンル問わず本気でおすすめしたいもの・こと、お店、本...
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