女の物書きの「切り売り」問題について


8月某日

もの書きの友人が同業者の女からのつまんない嫉妬と悪口と足の引っ張り合いに巻き込まれてダメージを負ったというので代々木上原のFireKingCafeでお茶をする。
私は同業者の友達もほとんどいないし、愛想も付き合いも性格も良くしようと一ミリも思っていないので、そういうもの書き同士の嫉妬とか、善意を模したクソみたいなアドバイスに振り回されることが一切ないので楽だ。はっきり言って、さして好きな作品の作り手でもない人間とべとべとする暇があったら自分の作品を作ったほうがいい。

けど、SNSを使って活動していると、時々、そういうものに巻き込まれるのは分かる。私も避け方が分からなかった頃はめんどくさい女にたくさん絡まれた。一個も付き合い残ってないけど。

彼女が傷ついていたのは、「女性の物書きが自分の経験ないし内面を赤裸々に書く」ことについて「それは下品だ」とか「それは表現じゃない」とか「そういうことは将来のためにやめたほうがいい」とか、ああだこうだ言う人が一定数いて、そう言う時、一番に矢面に立たされて批判されやすいからなのだそうだ。

自らの経験を書くことを「切り売りする」と呼ぶらしい。

女がそれをやると、とりわけ批判されることがあるらしい。

あのね、私から言わせればそんなこと言うやつは、切り売りできるほどの大した経験もしてないつまんねー人生送ってるやつか、あるいはプライドが高すぎるゆえに、自らが自らを切り売りしていることに気づいていない鈍感な奴なんだよ。それがただ、堂々と切り売りできてる奴に嫉妬してるだけ。

創作をやったらわかるけど、どんな小説家だって、偉大な物書きだって自らを切り売りしている(それを切り売りっぽく表現するかは別)。バッハだってピカソだってシェイクスピアだって、自分の経験を切り売りせずに作ってるものなんていっこもないよ。

村上春樹だって自分の人生経験を別の形に変換して物語にしているにすぎないし、最近売れてた燃え殼さんの小説だって、平野啓一郎だって、みんな自分の経験を元に何かを書いている。できたものと、元の経験との間の距離が長いかどうか、変換率が高いか低いかの違いでしかなくって、それは例えばその作品の主人公の性別や年齢や境遇が作者のプロフィールと近ければ「ご自身の経験を元に書いたのでしょう?」と言われるだろうし、そうでなければ「ゼロから創作したのでしょう?」って言われる。私はこれまで書いたもので自分を切り売りせずに書いたものって一個もないと思うけど(あ、絵本は別かな…)そうやって自分の経験を切り売りしてものを書くのと、アキラ100%がちんこの前でお盆ひっくり返してるのと何が違うの?

切り売りが問題だ、みたいなこと言うやつって、売春も否定してそうでつまんねーな、って思う。

書くことなんて、悪いけど売春と一緒だ。そんなお綺麗でたいそうなことじゃないよ。詩人の文月悠光さんが早稲田大学で講演したときに文学部の教授に壇上でいきなり「詩人をやってなかったら娼婦になりましたか?」と聞かれて悔しい思いをしたと言う話をcakesで書いていたけど、そんなこと聞く男がまあ最低っていうのは当たり前として、私だったらこう答える。

「今も娼婦ですしそもそもどんな職業も、例えば大学教授だって娼婦とミリ違だと思いますけど、ただしお前みたいにろくな売りもんも持たないくそ粗チンの男には100年かかっても手が出ない娼婦だよ」って。

そう思いますね。
書き手は自分の血と肉が売り物なんだからさ。

娼婦でE.E.JUMP!

もちろんその「切り売り」の仕方もいろいろあって、高級ストリップにするのか路肩でひとヤマ3000円にするのか、ジャンクフードにするのか滋味深いものにするのかは流儀によるんですけれどもね。

でも、売春が単に金銭を得るためだけではなく、時に自傷行為や行き場のないエネルギーの放出として、若い女の子の自己表現たり得る事と同じで、自分を切り売りして文章を書く事は、ある種の書き手にとっては行き場のないエネルギーの浄化の意味合いがある。それをせざるを得ない人生の状況にある人間、切り売りしていると見られるような描き方でしか思いを表現できない人間だっている。

それを外野がごちゃごちゃ言うなよ。人の書き方を笑うな。面白くないよって文句だったらいくらでもぶつけていいと思うけどね。

自分を捨てる覚悟もないくせに書いてる人間ってまあつまんないよ。せいぜい、ガラス張りの無菌室から見てたら?あんたらよりよほど面白いことやってるからさこっちは。悪い意味で処女っぽいよね。そーゆー発想って。

私は死ぬまで切り売りできる美味しい体でありたいね。



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小野美由紀

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