月が離れてゆく


新宿の中華料理屋で、Sugarさんと小池みきさんと佐々木ののかちゃんとご飯を食べる。Sugarさんがいるので、必然的に占いの話に。
Sugarさんが途中で「月って地球から少しずつ離れてってるじゃん」と、誰もが知っている常識みたいな口調で言ったので私は金槌で頭を殴られたような衝撃を受けた。
「えー、そうなんですか?!」
「そうだよ、月の軌道っていうのはね、毎年少しずつズレてて、地球から遠ざかってってるんだよ。いつか見えなくなっちゃうんだ」
「私たちが生きている間は見えてますよね?まさか、いなくなっちゃうなんてこと、ないですよね?」
と聞くと、シュガーさんはニヤッと笑って

「どうだろうね。何も分からないねぇ」と言うので、私はショックを受けすぎてその後の話がまるで耳に入らないくらいだった。


月というモチーフには昔から惹かれるところがあり、松岡正剛の「ルナティックス」は穴があくほど何度も読んだし、今やっているフミナーズの連載も、月に関する小説ばかりが浮かんでくる。セーラームーン世代の女子なら、きっと月に対して何らかの思い入れがある人も多いのではないだろうか。


あんなに当たり前に、空にあるものが見えなくなってしまうなんて。


Sugarさんは面白いエピソードをたくさん持っている人だ。例えば彼の家の前には大きめの公園があるのだが、そこに住むホームレスに彼は勝手にソクラテスと名付けて毎日観察しているらしい。そうするうちにすっかり感情移入し、歌会でも彼に向けた短歌を読むなどしていたが、ある時、

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小野美由紀

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小野美由紀

文筆家。著書に銭湯を舞台にした青春小説「メゾン刻の湯」(2017.2)「傷口から人生。メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった」(幻冬舎文庫、2015年2月10日発売)絵本「ひかりのりゅう」(絵本塾出版、2014)など。http://onomiyuki.com/

それでもやはり、意識せざるをえない(小野美由紀のマガジン)

作家小野美由紀によるエッセイマガジンです。タイトル通り "それでもやはり、意識せざるをえない” 物事について、月に5-10本程度配信します。日々のエッセイ、恋愛、性愛、家族、また書くことについて、作家という職業について、ジャンル問わず本気でおすすめしたいもの・こと、お店、本...
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