【時空を描く】

美術館巡りの話です。旅行の最後はパリでした。モネの「睡蓮」の部屋があると話に聞いていたので行ってみました。誰もいない楕円形の部屋が2つ。その壁にそって湾曲した絵が掛かっています。タイトルすら読めません。というよりどっかにそんなものがあるのかどうかも判りませんでした。一体何を描いているのだろうとじっと見つめること数時間。そのころはその部屋もそんなに混んでいませんでしたし、真ん中に椅子もなかったと思います。経ったり座ったりしながら、ついには疲れて床の上にあぐらをかいて。注意もされずじっと見続けることができました。でも、モネが「この部屋の壁に何か描いてください」って言われて何を描くのだろうか。一体ココにあるモノは何なんだろうとじっと見つめ続けて出て来た答えは、一つの部屋は「時間」もう一つの部屋は「空間」でした。ボクはホントに絵のことも歴史も知らずにただ観るだけでしたから、それが観ることから導かれて頭の中に浮かんだ答えでした。モネはぐるっと回る部屋の壁を使って、「時間の流れ」と「1点から見渡した空間」を描こうとしたのではないかというのがボクの中に浮かんだ答えでした。実際のところはわかりませんがボクにはそう見えたのでした。画家の目には何が映っているのだろうと今でも思っています。これが、たくさんの今までにない経験をさせてくれた美術鑑賞旅行の終りでした。

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